髄膜炎を引き起こし死亡した母親(画像は『Mirror 2017年10月12日付「Breastfeeding mum dies after refusing to take antibiotics for severe ear-ache as she feared they would harm baby」(Image: Cavendish Press (Manchester) Ltd)』のスクリーンショット) 授乳中の息子に悪影響を及ぼしてはいけないという思いがあった母親。尋常ではない耳の痛みがあったにもかかわらず抗生剤の処方を拒否したことで、不運にも髄膜炎を引き起こし死亡するという悲劇が起こった。『Mirror』『The Sun』などが伝えている。
英チェシャー州ウィルムスローに暮らす大学講師のリアン・スタトム=バーネットさん(30歳)は2015年12月、パートナーのロス・ノーマンさんとの間にジョージ君をもうけた。母乳で育てていたリアンさんに異変が起こったのは翌年3月のことだった。
リアンさんの母で看護師のビバリーさん(55歳)は3月27日に娘から「具合が良くない」という連絡を受け、30日に会いに行った。「耳と頭がすごく痛い。出産を上回る痛み」と訴えた娘の耳をビバリーさんが見ると、出血し耳だれが出ていたためGP(一般診療)に診察の予約を入れた。
3月31日、リアンさんはGPで「ウイルスによる耳の感染症」と診断された。しかし薬を処方された様子もなく、ビバリーさんはリアンさんを連れて自分の家に帰った。
ところが4月2日の午前5時頃、ジョージ君の泣き声を聞いたビバリーさんが寝室に様子を見に行くと、リアンさんは嘔吐して意識不明になっていた。呼びかけても応答がなくすぐに救急車を呼び、マンチェスターのウィゼンショー病院へ搬送されたが、中耳の感染症が原因で起こる乳様突起炎から髄膜炎を発症していることがわかった。リアンさんの脳の機能が停止していると言われた家族は突然の事態にショックを受けたが、事実を受け入れる間もなくリアンさんは息を引き取った。
マンチェスターで行われたリアンさんの死因審問では、診察したマシュー・ジョーンズ医師が「検査をすると鼓膜が破れていた。しかし患者に熱はなくこの時点では乳様突起炎の症状は見られなかった」と述べ、抗生剤を何回か処方しようとしたが、リアンさんは「3か月の息子に授乳しているので影響があると困るから」と言い拒否していたことが明らかになった。この時、医師は「症状が悪化したらすぐに診察に来るか、病院のER(緊急治療室)へ行くように」と指示していたという。
また、パートナーのロスさんは「リアンはよく風邪のような症状で頭痛がすると訴えており、そのたびに痛み止めを飲んでいました。今回も同じような症状かと思いましたが、亡くなる3日前に彼女の耳を見たらネバネバしたものがあったので、『深刻な病気では』とも思っていました」と振り返っている。
マシュー医師は死因審問で、乳様突起炎が発症するのは1万人に4人ほどの確率だと述べ、リアンさんを検死したリーナ・ジョセフ病理学者は「出産後の女性は感染症にかかりやすい。今回は細菌感染にウイルス感染が重なってしまうという非常に珍しく複雑なケースで、進行が早く対応は困難だったとされる」と語った。さらにジョン・ポラード検死官助手は「医師らもベストを尽くしたと思うが、進行が早かったため救いようがなかった。突然の死による悲劇は遺された家族にどれほどの衝撃を与えただろうか。しかしこうした悲しいケースは起こり得るものだ」と話している。
なお、イギリスのNHS(国営医療サービス)のサイトには「母親が授乳中であっても、ほとんどの抗生剤は投与可能であるが、常にGP医師や助産師、薬剤師などのアドバイスを得ること」と記されている。
画像は『Mirror 2017年10月12日付「Breastfeeding mum dies after refusing to take antibiotics for severe ear-ache as she feared they would harm baby」(Image: Cavendish Press (Manchester) Ltd)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)