【レポート】「WWDC15」で何を期待すべきか - 松村太郎のApple先読み・深読み

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2015年04月16日 12:43  マイナビニュース

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写真提供:マイナビニュース

●WWDCはどんなイベントなのか
Appleは2015年6月8日からの日程で、恒例となっている世界開発者会議(WWDC)をサンフランシスコで開催するとアナウンスした。今回は、このイベントで何に注目すべきかについて述べてみたい。


○WWDCとは?


WWDC15の参加費は1人1599ドル。もともと高額なチケットな上、昨今の円安もあって、日本円にして約20万円のチケットとなっているが、最新の情報を得ることができ、Appleの技術者のワークショップやハンズオンを受けられるため、アプリ開発者にとっては問題解決の近道であり、新たなアイディアをいち早く作り上げる場として重要視されている。


WWDCは開発者向けのイベントだが、初日に行われる基調講演では最新のソフトウェアや技術的な解説に加えて、最新のハードウェアやサービスが披露される場としても活用される。そのため、開発者のみならず、一般のユーザーも、基調講演に注目している。


2015年はソフトウェアとして、OS X Yosemite、iOS 8が、これらがデバイス間、あるいはクラウドを介して「連係」する機能、また新しいアプリ開発環境であるSwiftが披露された。WWDC15も、基本的には、OS Xの新バージョン、iOSの新バージョン、そしてSwiftのバージョンアップ、iCloudもしくはiTunesサービスの機能追加や刷新が軸になるとみている。WWDC15でも、将来リリースされるデバイスを見据えたOSの新機能の披露に期待することができるのではないだろうか。


ただし、WWDCで披露されたソフトウェアをすぐに利用できるようになるわけではない。iOS 8は新型iPhoneがリリースされる9月中旬のタイミングからアップデート可能になった。またOS X Yosemiteの新しい写真管理アプリ「写真」(Photos)は、4月9日に公開されたOS X Yosemiteの最新バージョンとなる10.10.3でやっと利用できるようになっている。


ちなみに、Mac向けのOSが「OS X」と名乗り始めてから、愛称には、ネコ科の動物に代わって、カリフォルニアの地名がつけられている。はじめはサーフィンの名所であるMavericks、現行のバージョンは美しく鋭い自然が豊かなYosemiteだ。いずれも写真がOS Xの標準の壁紙として利用されている。


次の絵になる場所はどこになるだろうか。Appleは既に、いくつかの国立公園、名所の地名を登録している。Sonoma、Sequoia、Mojave、Venturaがそれに当たる。その他だとNapa、Alcatraz、Golden Gate、Hollywood、Cupertino、Tahoeといった地名も考えられる。SonomaやNapaが選ばれた場合、懐かしのWindowsの壁紙のような丘陵に広がる緑のワイン畑の風景が描かれることになるのだろうか。


●「Kit」でiOSとその他デバイスをつなぐ開発環境が整う
○「Kit」に注目


前述の通り、WWDC15では、Mac向け、iPhone/iPad向けのOSと開発環境が軸となって、そのソフトウェア・プラットホーム的進化の方向性と具現化が見られるはずだ。そしてAppleのソフトウェア的進化の新たな側面として注目すべきは「Kit」類だ。


Appleのソフトウェア開発環境には、多数の「Kit」と呼ばれるフレームワークが用意されている。iOSアプリ開発の中で利用するものも多数あるが、昨今は特定の目的のためのアプリ開発に活用したり、外部のデバイスとの連係を取るために用意されるものも増えてきた。


例えばApple Watch向けには、WatchKitが用意されており、これを使ってiPhoneアプリにApple Watch向けのアプリやApple Watch向けの機能を内包することができる仕組みだ。


その他にも、スマートホーム関連の連係を行うHomeKit、健康やエクササイズに関する情報を安全に蓄積するためのHealthKit、医療研究のためのアプリを開発することができるResearchKitなどによって、iPhoneやiPadと外部機器を連係させたり、Appleのデバイスをより高いセキュリティの情報を扱うために活用することが可能になる。


WWDC15では、新しいKitが追加されるかもしれない。すでにAppleが取り組んでいる分野に対して開発者向けの環境を用意し、自律的に活用の幅を拡げていくことも考えられる。


Appleは自動車の車載機でiPhoneを利用するためのCarPlayを有しているが、「CarKit」のようなものをより多くの開発者向けに用意し、ハンズフリーを前提としたインターフェイスに縛って、iPhoneアプリに車載機向けの機能を追加できるようにするかもしれない。


同じように、Apple TV向けの開発環境「TVKit」のようなものが用意されれば、Apple TV向けのアプリも追加できるようになる。


App Storeを新たに用意する必要はなく、Apple Watchのように、iPhoneやiPadのアプリにこれらのデバイス用の機能を含む、という方法を採れば良いのだ。


●アプリによって変わる未来の生活
○アプリによって生活が変わる


アプリとこれらを開発するデベロッパーは、iPhoneやiPadの価値を高める大きな要素としてすでに評価されている。開発者たちにとって、iPhone・iPadの周辺にあるデバイスや環境でも自社のアプリが利用できるのは、ユーザー拡大とマネタイズの機会を拡げるメリットがある。


Appleにとっては、身の回りのデバイスがiPhoneやiPadとの連携を強め、開発者の創造性が生かせる環境を作ることで、ユーザーのAppleデバイスへの依存性を高めることにつながり、Appleは「機種変更の際によりiPhoneを選んでもらいやすくなる」という効果がある。iPhoneで成功したモデルをより強固にし、新たな価値を作り出す、デバイス、OS、アプリとその開発者という三位一体のプラットホームへと、足場を固めることになるだろう。


もう少しユーザーの目線で考えると、依存性を気にしなければ、身の回りのものに新たな機能が増えていく、そんな環境が広がっていくことになる。アプリによって生活が変わる、ということをより強く実感する未来が待っている。


○個人的に期待すること


最後に、個人的に、WWDC15で期待しているのは、iTunesの音楽アプリケーション、インターネットラジオサービスの刷新、Apple TVの進化だ。


Appleは常々、音楽を大切にしていると表明しているが、ここ最近大きな動きは映像ストリーミングに移っている。音楽好きな筆者としては、新たな音楽との出会いを演出し、より生活の中で自然に楽しめる新しいアプリやサービスの登場に期待している。


あるいは、iPhotoが「Photos」になったように、iTunesが「Music」や「DJ」に変わるような、大きな変化があっても面白い。そのときにどんな姿になっているのか、また別の機会に考えてみよう。


松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら/ Twitter@taromatsumura


(松村太郎)



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