トヨタの新ブランド「GR」。このハイパフォーマンスブランドの語源が「画像」だったなんて…

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2017年09月27日 23:00  citrus

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トヨタは新しいブランド「GR」を立ち上げた。これまでは「G Sport(通称G’s=ジーズ)」という名称のスポーツシリーズを展開していたが、今後は「GR」シリーズに統一していく。


そもそも「GR」とは一体何だろう。「GAZOO Racing」の略なのだが、では、「GAZOO」って何だろうという疑問が湧く。GAZOOは「ガズー」と読む。読み方がわかったところで問題の解決にはならない。実は、GAZOOは中古車画像システムの「画像」に由来する。ますますワケがわからなくなっただろう。


GAZOO誕生の起源は20年前にさかのぼる。豊田章男社長が営業の地区担当員だった時代、顧客満足度を向上させようと有志のメンバーと一緒に販売店の物流改善に取り組んだ。その活動のなかで生まれたのが、中古車画像システムだった。販売店の下取り車を展示する前に画像で紹介するシステムで、下取り車の再販までのリードタイムを短縮する画期的な取り組みだった。


アイデアは画期的だったが、当時はインターネットが満足に普及していなかったこともあり、社内で猛反発にあった。トヨタブランドを名乗ってシステムを展開することは許されなかったため、画像システムの「画像」をとって「GAZOO(ガズー)」と名付けることにした。


それがGAZOOの起源だ。以来、GAZOOは「壁をぶち破る変革に向けたチャレンジ精神」の象徴になった。次ぎにGAZOOが表に出てくるのはレースの舞台だった。2007年、当時のトヨタのモータースポーツ活動はF1に代表される「トヨタ・レーシング」で行われていたが、「モータースポーツで人材を鍛え、クルマを鍛え、いいクルマづくりの基盤とすべき」と考えた豊田社長は、その考えを具現化しようと、有志の社員を募り、ニュルブルクリンク24時間レースに参戦した(自らはモリゾーを名乗ってステアリングを握った)。

 

 

■目指すはAMG、Mのようなハイパフォーマンス&プレミアムブランド


トヨタ自動車としての正規の活動ではなく、ゲリラ的な挑戦だったので「GAZOO」を名乗ることにしたのだという。トヨタ、レクサス、GAZOOと分断していたトヨタのモータースポーツ活動は2016年にGAZOO Racingに統合された。活動の頂点に位置するのはWEC(世界耐久選手権)とWRC(世界ラリー選手権)だ。その下に国内トップカテゴリーがあり、参加型のモータースポーツがある。

 


GRMNを頂点に細かくセグメントされている。出典:トヨタ公式HP

 

トヨタが新たに立ち上げたGRブランドは、モータースポーツ直系のスポーツカーシリーズだ。アウディに対するアウディスポーツ、メルセデス・ベンツに対するAMG、BMWに対するMの位置づけと考えればいい。AMGを取り上げて、「どういう意味?」と疑問から入る人はあまりいないだろう。AMGといえば、ハイパフォーマンスなプレミアムブランドとして定着している。GRも同じベクトルを向いている。


アウディにはハイパフォーマンスモデルの頂点に位置する「RS」と、快適性を損なわない範囲でスポーツ性を重視した「S」、少しスポーティに仕立てた「Sラインパッケージ」がある。GRも同様のピラミッド構成で、頂点に位置するのは「GRMN」だ。「MNって何だ?」と新たな疑問が湧いてきたことと思うが、答えは「Meister of Nurburgring(ニュルブルクリンクのマイスター)」だ。

 



GRの頂点に位置する「GRMN」。MNは「Meister of Nurburgring(ニュルブルクリンクのマイスター)」の意。2018年春頃にGRMNのヴィッツが登場予定


第1弾のGRMNヴィッツの発売は2018年春頃を予定しているが、1.8Lエンジンにスーパーチャージャーを組み合わせ、210ps以上の最高出力と250Nm以上の最大トルクを発生するというから、相当な高性能である。GRMNはモータースポーツ直系ともいえるフルチューン、コンプリートの限定生産モデルだ。

 


セカンドポジションの「GR」。キャッチコピーは「“操る”楽しさ」。写真の86GRは2017年冬登場予定


その下に位置する「GR」は、足回りだけでなく駆動系まで手を入れたモデル。GRの乗り味を、より市販車に近い形で楽しめるように仕立てたのが「GR SPORT」だ。GRブランドを手がけるGAZOO Racing Company(ガズー・レーシング・カンパニー)は、GRMNを「“競う”楽しさ」、GRを「“操る”楽しさ」、GR SPORTを「“装う”楽しさ」と表現している。

 


GR SPORTのプリウスα。2017年冬に登場予定


トヨタはGRブランド立ち上げを機に、同ブランドを象徴する新店舗「GR Garage(ジー・アール・ガレージ)」を全国に展開する。2017年度中に39店舗をオープンさせる予定で、GR商品の情報発信拠点であると同時に、「街のクルマ好きが憩う場になること」を期待している。限定生産モデルのGRMNヴィッツはGRガレージの専売となるが、それ以外のGRシリーズは取り扱いチャンネルの全ての店舗で販売する。


以上でGRの説明は終わり──ではない。GRMNヴィッツは標準車をベースにしたコンプリートカーだが、7月19日に行われたGRブランド記者発表会では、「スポーツカー専用のプラットフォームを手に入れ、世界に通用するピュアスポーツカーを世に出したい」との説明があった。


そのとき、会場のスクリーンにはWECに参戦するTS050ハイブリッドが映し出されており、その姿が徐々にロードゴーイングカーにトランスフォームしていった。メルセデスAMGがF1のパワーユニットを搭載したハイパーカーのProject ONE(プロジェクト・ワン)を発表したばかりだが、そのWEC版を期待させるイメージ映像だった。だとすると、1000馬力オーバーのハイブリッドパワートレーンを積んでいることになる……。


GRの「壁をぶち破る変革に向けたチャレンジ精神」に期待が高まる。
 

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