【コラム】 言いかけた言葉のその先に 映画「今、僕は」

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2009年11月25日 14:32  よりミク

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よりミク

■まだ、20歳、だけど、未来は見えない  20歳の悟(竹馬靖具)は、地方都市に住むニート。時折コンビニへ「遠征」する他は自室に引きこもり、同居する母に寄生して暮らす。ゲーム、マンガ、ジャンクフード。眠って起きて……日々はその繰り返しでしかない。人とのコミュニケーションを絶ち、無気力な毎日を送っていた悟の元に、ある朝、母の知人で藤澤(藤澤よしはる)と名乗る男が現れた。藤澤は悟を外へと連れだし、自身の職場で働かせようとするが――――
悟を演じる竹馬靖具 (c)chiyuw
悟を演じる竹馬靖具 (c)chiyuw
■拒絶、逃避、苛立ち、緊張……弱冠23歳の作り上げた衝撃の「リアル」  映画「今、僕は」(2007)は、竹馬靖具(ちくま・やすとも)監督の処女作。引きこもる若者を題材に、人間の心の内部へと深く切り込んだフィクションです。  着っぱなしのスウェットから漂う臭い。床に散らばるスナック菓子の袋とゲーム機の配線。ラップにくるまれた料理と、母からのメモ。「いるんでしょ?」固く扉を閉ざし、息を殺して激しいノックが去るのを待つ。沈黙、拒絶、逃避、苛立ち、緊張……閉塞感が充満する部屋で、次第に追い詰められていく主人公・悟の心の歪みを、映画は緻密に描きます。その演技は、息苦しさを覚えるほどリアル。説明的な描写は一切排され、音楽が掛かることすらありません。
孤独が鬱積する (c)chiyuw
孤独が鬱積する (c)chiyuw
 元々「日本にしかない社会問題を映画にしたい」と考えていた竹馬監督は、幼なじみの引きこもりをきっかけに、本作に着手。無料で借りたハンディカメラを携え、地元・栃木県足利市で撮影を始めます。スタッフやキャストはノーギャラ、掛かった制作費はたったの50万円。周囲の協力を仰ぎながら、自身で監督、主演、脚本、編集、プロデュースの全てをこなし、まったくの独力で映画を作り上げました。この時、弱冠23歳。  「たまたま今回は引きこもりの青年が主人公ですが、決してその状況を説明し更正させる映画ではありません。あるひとりの人間の明と暗、そして変化の可能性を描きました。それは誰しもが感じている普遍的な問題です。変化する力は人間が持っている、人間にしかない美しい部分だと信じているからです。」 竹馬監督はそう語ります(※webDICE「骰子の眼」より)。 「今、今ですか?」 「今、行くんですか?」  藤澤に社会との接触を迫られる度、抵抗する悟。しかし、いつしか現実が部屋の中を侵食し、心の外壁はその圧力に歪んでいきます。それまでシェルターの役割を果たしていた部屋が姿を変え、「今」を突きつけてきた時、悟のとった行動とは―――  「今、僕は」。言いかけた言葉のその先は、スクリーンで確かめてみてください。生きていく、その重みに耐えられなくなった時、あなたを支えてくれる人はいますか?(キキ/mixiニューススタッフ)
ドイツ、オランダ、イギリス、カナダの映画祭で上映され絶賛を浴びた (c)chiyuw
ドイツ、オランダ、イギリス、カナダの映画祭で上映され絶賛を浴びた (c)chiyuw

映画「今、僕は」は、第19回映画祭TAMA CINEMA FORUMにて上映されます。 11月29日(日)14:00〜(同時上映「SR サイタマノラッパー」) 司会:宮台真司 トークゲスト:竹馬靖具、入江悠 ベルブホール(永山公民館)京王永山駅、小田急永山駅から徒歩2分 ■第19回映画祭TAMA CINEMA FORUM ■「今、僕は」 主題歌:新居昭乃 2007 87分 監督/脚本/編集/プロデューサー:竹馬靖具 撮影/編集:宗田英立大 アシスタントプロデューサー:橋本大典 助監督:留畑龍也 録音:安田雄大 スチール:小林純一 出演:竹馬靖具、藤沢よしはる、弁、志賀正人 ■製作・配給:chiyuw
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