産後初年度イベントは火種だらけ? 〜がんばり過ぎるくらいなら手抜きが吉〜

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2013年12月30日 09:30  MAMApicks

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年末年始といえば、親族系イベントが目白押しの時期。
夫婦という異文化ペアにそれぞれの親族が紐付き、異文化交流だか異文化バトルだか、微妙な状況がクローズアップされる時期でもある。

子どもが生まれて1年目というのは、そんな年末年始のような状態が、1年中うっすら続く。お宮参りやお食い初め、初節句、初のクリスマス、初のお正月……何にだって「初」がついて、スペシャルイベント化しがちだ。

異文化コミュニケーション的諸問題には、お互いの許容範囲を広げるのが必須だ。しかし、産後1年目の母にとって、そのハードルは果てしなく高い……。


■人生最“狭”の心の許容範囲
産後しばらくの間、なぜかものすごく極端に、自分の感覚と考え方以外は、すべて「あり得ない!!!」と思うようになる人は多い。

赤ちゃんに対する周りの人の言動にいちいち反応し、それってどうなの?おかしくない?信じられない! と、ピリピリイライラ。そんな風に思う自分が神経質過ぎる?これが世に言うホルモンバランスの変化というもの?……と、人知れず悩んだりもする。

たぶん、特別に神経質なわけでもなく、ホルモンバランスがすべてみたいなことでも無い。
きっと、そうなる「普通の理由」がある。そうなって当然の構造がある。

■10倍の攻撃を10分の1のパワーで受ける 〜負の相乗効果〜
出産は、当事者の「母になった人」以外、周りの人々にとってはちょっとしたお祭りだ。「母子ともに健康!」の知らせを受けた途端に、100%おめでたいムードに満たされる。
そして幸せな高揚感は、人の気持ちの加速ボタンを押す。

困ったことに、周りの誰かの「元々ちょっと苦手だった側面」に限って、加速して通常の10倍の強さと濃さで表出されるのだ。もちろん悪意はなく、本当はうれしすぎて舞い上がっているだけ。

しかし、これを受けて立つ母親になりたての女性は、出産でこれまで経験したことのないほどの肉体的ダメージを受け、体のあちこちが正にボロボロ、加えてひどい睡眠不足で普段の10分の1くらいのパワーになっている。

通常よりパワーアップした「苦手な要素」を、通常より弱体化した体と余裕のない頭は受け止めきれない。むしろ攻撃にすら思える。
勘弁して……それを拒絶する気持ちはいつもの100倍くらいになる。

「負の相乗効果」である。

■元々嫌だった面が10倍になる 〜継承のイメージ〜
周りはそれまで通りなのに、一方的に「イヤ!」をつのらせるケースもある。

例えば、夫の嫌だなぁと思う部分……ごくささやかなことから重めのことまで、まぁ、たいてい何かしらあるだろう。それが、産後急に10倍くらい強烈に、「ものすごく嫌!許しがたく嫌!」になるという現象がある。

以前からずっと知っていたはずの特徴を、なんで今さらそこまで本気で嫌になるのか……。それはたぶん、子どもにその性質が「継承される」イメージが浮かんでしまうからなのだと思うのだ。

夫だけならまだ我慢ができた。でも、この子もその態度の影響を受けるのか……。子どもも同じことをするようになったら嫌だなぁ。そういう思いがむくむくと沸き上がり、転じて、それまでの10倍、夫のそこが嫌になる。

本当は、自分自身の嫌なところだって子どもに影響する。両方の親の嫌なところも良いところも、きっちり子どもの発達の環境因子になるのは当然だ。

なのに、なぜか自分の負の要素はスルーして、夫や他の誰かの負の要素にのみ嫌悪感をつのらせる……。

この極端さは、きっと出産で、赤ちゃんが「自分の身体の中から出てきた」という事実を目の当たりにしてしまったからなんじゃないかと思うのだ。

もともと自分の身体の中にいたから、自分の性質や要素だけは不思議と異物と思わないという、誠に勝手ながら妙に自然な感覚なのである。

■多分仕方ないんだよなぁ……でも、いつかは脱け出したい
こんな風に、「1年目の母」は心の許容範囲を著しく狭める。

だから、自分だけが特別に神経質で狭量なのかと悩まなくていい。それ自体は「仕方ないこと」なんだな、と思うと少し楽になるかもしれない。

それに、産後何か新たな問題が噴出したのではなく、実際にはもともと「苦手」だったことが強調されているだけだから、深刻になることもない。

とはいえ、許容範囲が狭くなりすぎるのはあまり健全な状態ではない。
当然なんだ!と開き直って不満全開でいるのは何か違うし、いつかは脱け出せた方がいいに決まっている。

もともと、子どもを自分の全コントロール下に置こうなんて気はないはずだ。

だから、「ちょっと今、一時的に過剰な自分」を俯瞰しておけば大丈夫。きっとそのうち、だんだん慣れる。「許しがたい!」はずだったことも、薄まる。

ここで無自覚にがんばり過ぎたら、慣れる前につぶれるか、薄まらない溝を作ってしまうかもしれない。

■しかしイベントは待ってくれない!
しかし、初年度イベントは次々にやってくる。近い身内から遠い身内まで集まれば、この構造はぎゅっと凝縮して、そこかしこが火種になるだろう。

内心、「すべてがあり得ない!」と不満や怒りに満ちていたとしても、たいていはその場で飲み込み、「対夫限定」で吐露するケースが多い。その「あまりにナイーブ」な反応を独りで受け止める夫も、きっとものすごく大変だ。

ならばいっそ、火種から遠ざかるのもひとつの手だ。

だいたい最も疲弊している1年目に、無理して大変な行事をいくつもこなさなくたっていいはずだ。いくつかの行事を省略したり、簡略化したところで大丈夫、それで子どもが不幸になるわけじゃない!

誰も呼ばず夫婦だけで小さく済ませる、初年度スキップして余裕のある2年目にゆっくりやる……そんな形をとってもいいだろう。呼べなくても写真で報告するとか、礼を失しない工夫はできる。長時間の宴席が負担なら、お披露目にごく短時間参加して失礼するとか、場の空気を大切にしながら自分たちの負担を減らす方法がきっとある。

初のイベントはこうあるべき、こうしたい!という自分の妄想めいた思い込みが、実は一番の敵だったりもする。妄想は判断力を上回る。自分の理想像で自らを縛って無理をすることはない。

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楽しくてうきうきしておいしいものをいっぱい食べて……、家族そろってそういうシンプルに楽しいお正月を迎えるコツは、もしかしたら、夫婦で工夫してお互い思い切り手を抜くことかもしれない。

とくに育児初年度の皆さん、どうぞがんばり過ぎずに良いお年を!!

狩野さやか
ウェブデザイナー、イラストレーター。企業や個人のサイト制作を幅広く手がける。子育てがきっかけで、子どもの発達や技能の獲得について強い興味を持ち、活動の場を広げつつある。2006年生まれの息子と夫の3人家族で東京に暮らす。リトミック研究センター認定指導者。

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