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●秘密主義からの転換に迫られたApple
以前までのAppleであれば情報流出に非常に神経質で、リークさせた関係者には厳しいペナルティが待っているともっぱらの評判だった。鴻海精密工業(Hon Hai Precision Industry)での自殺騒動や物々しい警備体制などが大きな話題にもなった。この状況は現在でもそう変わりないと思われるが、少なくともiPhone 4S以降くらいの時期から、少しずつ環境が変化しつつあるように思える。まずiPhone 5では筐体デザインやスペックが比較的早い時期からネット上に流れ、その内容の正確さに驚いた記憶がある。
筆者の推測だが、これはiPhone 4SぐらいのタイミングからiPhoneの年間販売台数1億突破が見え、サプライチェーンを拡大する必要性に迫られ、それが理由で流出する可能性が増大したという嬉しくも悲しい相関関係が存在すると考えている。
実際、iPhone 5関連で事前の正確な情報リークが急増したが、Appleが同時期に新規で増やしたサプライチェーン筋から集中的に漏れたという話を聞いている。Appleは部品の安定供給のためにマルチソース化(同じ部品を複数ベンダーから同時調達すること)のほか、膨大な初期投資が必要で製造難易度の高い部品については大規模投資を行って必要数量確保に向かうなど、以前に比べて動きが外部から把握されやすくなっている。
●将来計画も丸見えに
典型的な例でいえば、シャープへの液晶製造投資や、今回大きな話題になっているGT Advancedへの7億ドル投資など、「これだけ巨額投資を行って何も活用しないということはない」という将来計画に関する動きが丸見えに近い状態だ。
Apple製品でよくいわれる「驚き」や「魔法」といった体験が秘密主義から来ているものだったとすれば、少なくともそうした経験は今後のiPhoneから強く感じることはないだろう。これはiPhoneの魅力がなくなったというよりも、製品の安定供給の必要性からサプライチェーンを巨大化せざるを得ず、結果として秘密主義を貫きにくくなったことからくるものだと考えられる。
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iPhoneがメジャーな製品となり、コモディティ化と引き替えに、それまでの「(大企業ながら)小規模で秘密主義」そして「フットワークのよさ」というベンチャー企業的な特徴を失ったのだといえる。
(Junya Suzuki)
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