親のマイナスな感情を子どもに伝えるということ

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2014年11月07日 10:31  MAMApicks

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児童精神科医の講演で、興味深い話を聞いた。

「幼児は自分の感情の伝え方がわからない。マイナスな感情を癇癪やモノを投げたりして表現する。怒りや辛いなどの感情も普通に抱く感情。それを行動ではなく、言葉で伝えられるようになることが必要です。それには、親が普段からマイナスな感情も言葉で表現して見本をみせることが大事です。」

最後の一節が引っかかった。


言葉が未熟な幼児は、親が感情を代わりに表現してあげると、「この気持ちは、こういう言葉で表すのか」と学習する。言葉をオウム返しで習得中の2歳の息子をみていると、マイナスな感情を言葉で代弁して共感してあげるのが大事というのはわかる。

でも、ここでは、親自身のマイナスな感情を冷静に言葉にして伝えるとよい、との話だった。

なぜ、引っかかったのか?
それは、母親像に自らの辛さや怒りなどを表現しないイメージがあるからだ。

我慢して自分のなかで処理をするイメージがある。きっと自分の母がそういうタイプだったからかもしれない。よいか悪いは別として、私自身もマイナスな感情を面と向かって人に伝えることは苦手だ。

もうひとつ興味深かったのは以下の内容。

「6歳くらいまでの幼児は、幼児期の心理特性である『自己中心性』という、起きている事象を自分に結びつけて理解する傾向にある。たとえば両親のケンカや離別、あるいは地震までも、自分の行いのせいで、こうなったと感じる。東日本大震災でも、地震のことを自分のせいだと考えた子どもたちがいた。だから、幼児には、あなたのせいではないと伝えた上で、起きた出来事を教えてあげる必要がある。」

たしかにモノゴトの原因と結果の道理がわかってくるのは、学校で勉強をしたり、さまざまな事象が自分と関係がないところで起きている実感が湧いた後であった。

大きな出来事があったときはとくに、我が子には「あなたの責任で起きていることではないこと」を伝なくてはと感じた。


さて、前述の「マイナスな感情を伝える」に関係して、先輩ママから聞いたエピソードを思い出した。

その先輩ママは、幼いころから「笑顔でいれば周りに迷惑をかけない」と考えていた気遣いのタイプ。大人になっても、辛いときや悲しいときなどは、誰かに伝えることをせず、自分のなかに溜め込みがちだった。

彼女の小学一年生の息子は、家計を気遣ってか、会費が高いサッカー教室に入りたいと伝えることができなかった。隠し持っていたサッカー教室のチラシに気がついた彼女は、ショックを受けた。

「自分が正直な感情を伝えていないから、子どもも素直に話せないのかもしれない」

そう感じた彼女は、辛いときは辛い、悲しいときは悲しいなどの感情を言葉で伝えるようにしていった。そうしたら、子どもは段々と自分の気持ちを伝えてくれるようになったのだという。

この件を通して、彼女は自分自身が「成長した」と捉えていた。というのは、当時、気持ちを溜め込むことで、心身にほころびが出ていたそうだ。それが自分の気持ちを伝えられるようになり、生きやすくなったと感じたらしい。

マイナスな感情を人に伝えない弊害は、振り返れば私自身にも心当たりがある。
怒りを我慢しすぎて、いい具合に発酵(?)して恨みに変わっていたり、悲しみの感情の行き先がなくなり、鬱々と不機嫌になってしまったりするのだ。

あとから話して、「何で早く話してくれなかったの〜」と残念がられることもある。そのときにわかりあえていたらもっとよかったのに、と。

親がマイナスな感情を伝えないと、「それは伝えてはダメなもの」ということを無意識に子どもが受け取る気がする。

ときに、マイナスな感情が頭を支配したときに、当たり前の感情なのに、そう感じること自体にダメ出しをしている自分もいた。最近意識して、マイナスな感情を認めてみたり、人に話してみたりしたら、ずいぶん楽になってきた。

もしかしたら、親が自らのマイナスな感情を言葉で伝えられることは、子どもだけでなく親自身にとってもよいことなのかもしれない。そして、マイナスな感情を本音で語る親を見ていれば、子ども自身も気持ちを語りやすくなり、本当のSOSに遭ったときでも伝えやすくなるのではないか。

親になったからといって、よい感情ばかり持つわけでない。
親である前に、ひとりの人間。プラスの感情もあれば、マイナスの感情もある。マイナスな感情を冷静に言葉で伝えたい。我が子のためにも、自分のためにも。

福井 万里
大学卒業後、大手システムインテグレータでSEとして10年間勤務も、東日本大震災を機に、本当にやりたいこと(書くこと)を生きがいにと決意し退職。2012年に結婚&長男を出産するも2013年に離婚、シングルマザーに。ライターとして活動を開始。

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