GRANRODEOサポートドラマー長井"VAL"一郎 超人気ロックユニットを支えるその素顔に迫ってみた

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2014年12月10日 21:11  おたぽる

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おたぽる

GRANRODEOサポートドラマー長井"VAL"一郎氏

 『黒子のバスケ』といえば女子から特に人気のある青春バスケ漫画だ。テレビアニメは現在第二期が2014年3月まで放送され、2015年1月からは第三期の放送も決まっている。最近では同作品の作者に対する脅迫事件が発生したことも記憶に新しいが、ある意味作品の知名度の裏返しともいえる事件だった。



 そんな『黒子のバスケ』を音楽で支えているのがGRANRODEOだ。アニソン界では言わずと知れた大人気ロックユニットで、ボーカルのKISHOW、ギターのe-ZUKAから構成されている。KISHOWは大人気声優の谷山紀章氏であり、e-ZUKAは栗林みな実などアニソンやゲームソングへの楽曲提供をおこなっている飯塚昌明氏だ。音楽不況が叫ばれる中、HR/HMのハードさにジャズやポップス、プログレといったありとあらゆるジャンルのエッセンスが混ざり合った、まさにGRANRODEOでしか表現・演奏できない楽曲群でアニメファン以外からの支持も非常に高く、注目を浴びている。



 そして、そんなGRANRODEOをさらに支えているのがライブサポートメンバーのベーシスト瀧田イサム氏とドラマーの長井"VAL"一郎氏だ。通常GRANRODEOといったら、KISHOWとe-ZUKAが注目されるのだが、GRANRODEOはライブで必ず瀧田イサム氏と長井"VAL"一郎氏の紹介をする。そこから感じられるのは、表立つのはKISHOWとe-ZUKAで、あくまでユニットなのだが、実際は4人のバンド感をとても大事にしているということだ。



 そこで今回、最近「ばるばる」という自身のネット番組を始めて、ひそかな話題を集めている長井"VAL"一郎氏に注目してみることにした。長井氏といえば、これまでのキャリアがCONCERTO MOON(編注:読みはコンチェルトムーン。2000年までドラマーとして参加)やARK STORM(編注:現在もドラマーとして活躍中。ベーシストは瀧田イサム氏)といった日本を代表する様式美メタルバンドのドラマーとして、創世記から支えてきた立役者の一人だ。GRANRODEOといったアニメやゲームの音楽というイメージが強くなってしまうユニットとは全く異なるもののように思える。



 なぜそんな長井"VAL"一郎氏がGRANRODEOのサポートをやることになったのか、ドラマーの専門的な視点も交え、様々な質問をぶつけてきた。



――長井さんは最近「ばるばる」というネット番組をYoutubeで始め、先日もドラム専門誌に登場されましたが、普段はあまりメディアに出られませんね。



長井"VAL"一郎(以下VAL):これまでのキャリアがCONCERTO MOONやARK STORMといったイングヴェイ・マルムスティーンに近いギターヒーローがいるバンドのドラマーだから、当然ギタリストに注目が集まるんですよ。それにGRANRODEOでは、俺はあくまでサポートメンバーだしね。



――自分があまり注目されなかったことに、もどかしさを覚えるようなことはなかったのですか?



VAL:俺はドラムキッズが熱狂するような技術を持つスーパードラマーじゃないし、かといってドラムヒーロータイプでもないです。だからあまりメディアに出なかったのはそれはそれでいいんじゃないのかなと思います。ドラマーって誰と一緒にバンドやるかって結構重要なわけで、すばらしい人たちと巡り会ってきたからこそ今の俺があるんだから。



――これまでのキャリアの中心が、様式美系のメタルバンドでのプレイなわけですが、そこからどうしてGRANRODEOのサポートを始めることになったのですか? 楽曲は遠からず近からずっていう側面もありますが、ずいぶんと畑が異なりますよね。



VAL: ARK STORMでもベースを弾いている瀧田さんは前から飯塚さんと音楽をやっていて、その流れで俺が瀧田さんと同じバンドのドラマーだってことである時、「ケンゼンな本能」「紫炎」っていう曲のレコ―ディングに呼んでもらえたのが直接のきっかけです。



 意外と思われるかもなんですが、ARK STORMとGRANRODEOはそんなに遠い関係じゃないんです。実は飯塚さんとARK STORMのギタリストの太田カツさんは、ギタリスト仲間として何十年っていう間柄なんです。瀧田さんは昔から飯塚さんと一緒に音楽やってきていたわけですから(編注:瀧田氏と飯塚氏は六三四というバンドもやっている)、俺以外のつながりっていうのは実は近かったんです。この中に俺が入れたのは、さっき言った巡り会わせですよね。



――GRANRODEO のライブはほぼ長井さんが担当されていますが、CDでは様々なドラマーが叩いています。この理由はあるのでしょうか。



VAL:GRANRODEOの曲はとにかくふり幅が広いんですよ。色々なジャンルのエッセンスが盛り込まれているから、俺が叩いちゃうとどうしてもメタルっぽくなりかねないんです。



 俺はあんまり細かいことができるタイプのドラマーじゃないから、繊細な雰囲気のある曲は他のドラマーが叩いた方がいいものができるわけじゃないですか。だから適材適所で表現者を使い分けているってことだと思います。



――ライブでは他のドラマーが叩いたものを完全再現するのですか?



VAL:ドラマーに限らずミュージシャンには絶対にそれぞれの癖ってのがあるから、完全に同じにするのは難しいですね。もちろん近づける努力はするんだけど、部分的には俺のやりやすいようにアレンジは加えさせてもらってますよ。



レコーディングだと、飯塚さんから渡されたデモを叩くわけですが、そのドラムがかなり作り込まれているんです。バスドラの位置とかきちんと決まっているんで、そこは崩さず、できるだけデモに近いプレイをすることを心がけています。



――主要なキャリアであるメタルバンドとGRANRODEOだとファン層が全く異なると思うのですが、実際ステージに立ってそのちがいを感じることはありますか?



VAL:ありますね。メタルファンっていうのは楽曲だけじゃなくてミュージシャンの技術的な面にもものすごく注目するじゃないですか。ものすごく熱烈なファンが多いがゆえに一歩引いたところから見る傾向があると思うんです。CDレビューやライブレポートが評論家っぽくなったりね。



 だけど声優やアニソンのファンっていうのはそういう側面がないから、メタルファンと別の温かみをステージから感じます。最初はライブなんてやったら俺だけアウェー感満載なんじゃないかなってビクビクしていたんですよ。俺はまるで接点のなかったジャンルのステージに立つわけで、ファンからすれば「あんた誰?」なわけですよね。だけど全くそんなことはなくて、ファンのみなさんが受け入れてくれて、あれは本当に嬉しかったです。



――そもそもアニメとか漫画などの二次元の世界はお好きだったのですか?



VAL:実は結構好きなんですよ。『ちょびっツ』『吸血姫美夕』とかは、かなりはまりました。最近では『夏目友人帳』とか、ちょっと前の『屍鬼』ですね。だからアニソン系のライブに自分が溶け込むのは全く違和感ありませんでした。



――普段見られるアニメの曲からGRANRODEOのドラムにインスパイアされることってあるんですか?



VAL:それはないです。さっきも少し話しましたが飯塚さんが用意する楽曲の完成度が高いんで、それに近づけることを大切にしています。



――GRANRODEOのような大きなプロジェクトに参加してみて、これまでと違うなって感じたことはありますか?



VAL:俺がサポートする最初のライブが横浜BLITZでの2dayzだったんですよ。メタルをやっている身からすれば、最初から集客力にゼロが一個多いんだなと驚きました。



 あと楽曲面ですけど、「Infinite Love」って曲を演奏したとき、速い8ビートってこんなにも難しいんだって思ったんですよ。メタルをやり続けていると、どうしてもドーンパーンって大きくノリを取ってしまいがちだから、基本を見直す良いきっかけでした。



――様式美メタルはツーバスがドコドコ鳴り響いて手数も足数も多く、アスリート的な要素がドラマーには求められると思います。でも、GRANRODEOも負けないくらい、場合によってはそれ以上ハードな曲が多いですよね。普段からフィジカル的な面で気にかけているこはありますか?



VAL:ライブやレッスン(編注:長井氏はドラム講師としてレッスンも展開している)の合間をぬって個人練習に入って体は動かすようにしています。あと腕立てや腹筋をちょこちょこやったりですかね。GRANRODEOのライブは三時間やることだってあるから、基礎体力がないと、いざというときに体も精神も負けちゃいます。ライブ中はドラムセットのところに酸素缶を置いているんですよ。これをライブの合間に吸うと疲労感がちがうんです。



 とはいえ、いくらケアしていても調子が崩れることや疲労が抜けなくて「やべぇ」なんてことがあります。だからツアー中は調子が崩れないかドキドキです。それでも絶対に本番で手を抜くようなことはしないですけどね。



――GRANRODEOのライブでは同期音源を用いて演奏されますが、クリック(編注:メトロノームの音)に合わせて演奏することを苦手とするドラマーは意外と多いと聞きます。何かコツはあるんでしょうか。



VAL:コツというコツはないかもしれないですね。慣れてしまうのが一番です。クリックに合わせるのって、人によってやりやすさが異なるから自分にあったやり方を見つけるのが良いんだと思います。



 例えば、俺の場合、曲によって4分音符で出してもらったり、8分音符で出してもらったり、それぞれ変えています。それを曲中で出し分けたりもしています。



――ライブ中、モニターからの返しにこだわりがあったりしますか?



VAL:ライブでのモニターの返しはけっこう口うるさく調整してもらいますね。自分の音がきっちり返ってこないと余計な力が入って叩いちゃうんですよ。そうなるとすぐに体力が削られちゃうんです。それに、「silence」って曲がテンポ150くらいのツーバスドコドコなんだけど、このくらいのテンポのツーバス曲って、自分の音が整っていないと演奏しづらくなっちゃうんですよね。



――長井さんに憧れる若手のドラマーはそのダイナミックなフットワークに興味津々だと思いますが、イスの高さはどのくらいにしていますか?



VAL:高くも低くもないかと。膝が上がるか上がらないかの位置です。



――左足からのスタートはやりますか?



VAL:練習やトレーニングとしてやったりはしますよ。でも実戦ではごくごく一部のフレーズでのみ左スタートで、基本的には右スタートです。右足がつったら左足で踏みますけどね。



――演奏中につるなんてことがあるんですか?



VAL:ありますよ。しょっちゅうです(笑)



――ずばり高速連打を習得するコツを教えてください。



VAL:俺はツーバスがめちゃくちゃ速いタイプじゃないんでなんとも言えないんですが、基本的なドコドコのオルタネートを着実にやっていくことじゃないですかね。



――ご自身で最高速はどのくらいと考えているんですか?



VAL:いやー、160くらいが限界ですって。



――もっといけるんじゃないですか? 「偏愛の輪舞曲」なんて高速な上に難易度の高いツーバスフレーズが盛り込まれていますよね。



VAL:あれは一瞬芸だから可能なんですよ(笑)。それに、少しやりやすいようにアレンジもさせてもらっています。



 テンポ180とか200なんてそうそう踏めるもんじゃないけど、そのクラスになってくるとペダルのバネの力とかビーターの返り方とかも大切になってくるんだと思いますよ。



――参考までに、現在メインで使用されているフットペダルを教えてください。



VAL: DWの5000AD4で、ビーターはYAMAHAのフェルトを使っています。ちなみに踏み方はオーソドックスなヒールアップです。ビーターは常にクローズさせます。



――最近はアニソンが大人気なこともあって、プロを目指す若手のバンドやアーティストンの中で、アニソン系でデビューしたいという声が多くなっているそうです。プロを目指す若手のミュージシャンにかけるアドバイスはありますか?



VAL:アニソンだとかロックだとかジャンルは関係ないけど、やり続けるってことが大事です。やり続けていると何かしらチャンスが来るかもしれません。万が一チャンスが訪れた場合、そこに上手く乗っかれるかどうかが分かれ道だと思います。だから何が起きてもいいように、常に練習して地力をつけておくのが大切です。



 プロになれるかなれないか、運に大きく左右されちゃうことは否定できないし、やり続けてもチャンスは一生回ってこないかもしれないです。でもやり続けないとチャンスそのものは回ってきません。だから最初にも話した、人との巡りあわせを大事にすることを忘れないでください。



 ぼく自身、CONCERTO MOONでのメジャーデビューをプロのスタートとしたら、30歳を裕に超えていました。かなり遅咲きなんですよ。デビュー当初、その当時所属していた事務所の社長から年齢のサバをよめって言われたくらいですから(苦笑)。



――遅咲きであっても、いまこうして大活躍されているのですからとても夢があるし、年齢のハンデなんて気にせずプロを目指すミュージシャンからすれば目標にしがいありますね。最後に長井さんの今後の目標を教えてください。



VAL:俺自身、年齢的にはもうベテランの域に入っちゃっているんだけど、これからも体力が続く限りガンガン演奏をしていくことですかね。ツーバスも踏み続きますよ。



――長井さんのプレイの特徴でもある派手なスティック回しもやり続けますか?



VAL:もちろん! 曲の隙間をみて回していくし、長いブレイクがあったらスティック投げまでやりますよ。よく落とすんですけどね(笑)。
(文=Leoneko)



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