ムーミンのおしりは手描きで、「劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス」ピカルド監督インタビュー

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2015年02月08日 12:52  アニメ!アニメ!

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グザヴィエ・ピカルド監督
ムーミンの生みの親トーベ・ヤンソンの生誕100周年を記念して、2014年に製作された『劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス』。ムーミンの母国フィンランドで初めて製作され大ヒットを記録した本作が、いよいよ2015年2月13日に日本で全国公開される。
今回は本作を手がけたフランス人監督のグザヴィエ・ピカルドさんにお話を伺った。1945年の誕生以来、長年愛され続けてきたムーミンの魅力や劇場版の製作秘話、さらにはムーミンのおしりへのこだわりまで、多彩なエピソードを聞くことができた。
[取材・構成=高橋克則]

『劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス』
2月13日(金)より、全国ロードショー
http://www.moomins-movie.com/

■ ムーミンとの出逢いは日本

――まずは『劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス』の製作経緯について教えてください。

グザヴィエ・ピカルド監督(以下、X.P)
ムーミンの権利を持っているムーミンキャラクターズ社が、2010年にアニメ化の権利をオープンにしたのがきっかけです。フィンランド人プロデューサーのハンナ・ヘミラさんから連絡を受け、まずは二分半のショートアニメーションを作ることになりました。その作品をトーベ・ヤンソンの姪であるソフィア・ヤンソンさんに見せたところ非常に気に入って頂いて、劇場版の製作に繋がりました。

――ムーミンという作品についてはどのような印象を抱いていましたか。

X.P
実は私がムーミンと出逢ったのはフランスではなく日本なんです。1990年に初めて来日したとき、東京の本屋さんでムーミンのイラスト本を見つけ、そのデザインの美しさに惹かれました。
ムーミンは児童小説や絵本など、幅広い読者に向けて多くの作品が刊行されてきました。劇場版の原作である「南の島へくりだそう」はイギリスの新聞に連載されたコミックスのエピソードで、大人の読者を想定した内容になっています。これまでのアニメとはまた異なる魅力を持つ世界観を楽しんでもらいたいです。


(C) 2014 Handle Productions Oy & Pictak Cie (C) Moomin Characters TM

――「南の島へくりだそう」を原作にした理由はどこにありますか。

X.P
このエピソードはムーミン谷ではなく、地中海沿岸のリゾート地・リヴィエラが舞台です。私が日本でムーミンと出逢ったようにフランス人の中にはムーミンを知らない人も多く、これまで作品に触れたことがなかった人にもキャラクターの魅力を伝えたかったんです。
そのためにはムーミンを普段とは異なる環境に置くことが一番だと考えました。ムーミンたちが住むムーミン谷からリヴィエラへ旅することで、水から出た魚のように、彼らの長所や短所がよりクローズアップされたと思います。
また本作には、ボヘミアンな生活に憧れるモモンガ侯爵や映画スターのオードリー・グラマーをはじめ、面白いキャラクターたちが揃っています。それも「南の島へくりだそう」を選んだ理由の一つです。

――劇場版にはスナフキンやミイなど、原作エピソードには出ていないキャラクターたちも登場しています。

X.P
スナフキンはムーミンに欠かせない重要なキャラクターです。でも彼のクールなイメージはリヴィエラの雰囲気とは合いませんよね。それに彼自身バカンスへ行っても退屈するだけでしょうから、今回はムーミン谷で留守番をしてもらうことにしました。
逆にミイはぜひとも連れていきたかったんです。彼女はユーモアもあるし皮肉も効いていて素晴らしい。ストーリーを盛り上げるのに打って付けです。

■ ムーミンのおしりは手描きでないと表現できない

――近年のアニメーションには珍しく、3Dではなく手描きを採用されたのはなぜでしょうか。

X.P
私にとってムーミンの世界は2Dなんです。トーベ・ヤンソンはほとんど遠近法を使わず、フラットな絵柄でキャラクターを描いていて、その輪郭が実に面白い。もちろん3Dで素晴らしい作品を創る人もいますが、原作のイラストに3Dでボリューム感を付けても上手く表現できないなと思いました。
それにトーベのコミックスはどの物語もムーミンのおしりのコマからはじまるんです。ムーミンのおしりのキュートな感じを出すにはやはり手描きの2Dでないと(笑)

――確かにポスターでもムーミンはお尻を向けていて可愛らしいですね。また空と海が同じ色に塗られていて、その色使いも実に印象的です。

X.P
はじめはコミックスと同じようにモノクロの作品にしようかとも考えました。しかし太陽の光が当たる様子や、スクリーントーンで表現された陰を、白と黒だけで表現するのは非常に難しい。それならばフラットな感じの色が出せるように単色のモノトーンにしようとひらめきました。
一つのシークエンスでメインとなるカラーを決めて、その中でグラデーションを使って表現していったんです。空と海が同じ色で塗られているのはそれが理由です。試行錯誤を重ねましたが、最終的にはコミックスの雰囲気を出せたと思います。

――90年代に放送された『楽しいムーミン一家』のキャストが再集結した日本語吹替版はいかがでしたか。

X.P
吹替版の声を聞いたとき、どのキャラクターも英語版やフランス語版の声とよく似ていて驚いたんです。同じような声の人をオーディションしたのかと思っていたのですが、20年以上前からムーミンたちを演じていた役者さんだと知って納得しました。すでにムーミンの感覚を掴んでいた人たちだったんですね。

――最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。

X.P
『劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス』は私たちがトーベ・ヤンソンの原作を解釈してアニメーションに翻訳した作品です。彼女はムーミンという作品に、シンプルな生活や自然との調和など、さまざまなメッセージを込めました。
彼女の価値観はムーミンパパの「平和に生きて、庭を耕し、夢を見る」という言葉に集約されています。このメッセージは現代に生きる人にとっても大切なものです。本作を通じ、彼女が生み出したアーティスティックな世界観を感じてもらえれば嬉しいです。



『劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス』
2月13日(金)全国ロードショー
http://www.moomins-movie.com/

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  • さらりと出てくるスナフキンの名言に感心させられる
    • イイネ!7
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