東日本大震災が発生して19時間44分後の2011年3月12日10時30分。ホンダは同社のカーナビゲーションシステム『インターナビ』装着車両から収集したビッグデータの一部を、Google Earthに対応したkmzファイル形式で提供した。
その名前は『通行可能道路実績マップ』。“24時間以内にインターナビ装着車両が通行した履歴がある“、“寸断されていない・通行止めとなっていない”ルートを教えてくれる、避難者にとっても支援者にとっても命綱となったデータだった。
カーデータを集約した自動車通行実績情報マップ
震災の3日後となる3月14日、ホンダとGoogleはインターナビのデータ、さらにパイオニアカーナビ『carrozzeria』装着車両から得たフローティングカーデータを一元的に集約し、Googleマップ上で被災地の通行可能な道を可視化する『Google Crisis Response 自動車通行実績情報マップ』を公開した。
続いてトヨタ、ユビークリンクが走行軌跡データを公開。3月23日には『Google Crisis Response 自動車通行実績情報マップ』がアップデートし、ホンダ、パイオニア、トヨタ、日産の4社のデータを集約したデータが使われるようになった。
『インターナビ』には装着車両をセンサーとして用いて走行情報を収集し、VICSでは把握できない地点の渋滞情報を会員間でシェアする機能が搭載されていた。また、豪雨地点、地震情報、路面凍結予測、ホワイトアウト予測といった災害情報提供機能も備えていた。
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カドカワ・ミニッツブックから発刊された『HONDA、もうひとつのテクノロジー 〜インターナビ×ビッグデータ×IoT×震災〜』(Kindle版)によると、ホンダは2007年の4月の新潟県中越地震の時にも、防災推進機構と協力してインターナビ・プレミアム会員向けに“通れた道路マップ”を公開していたとのこと。また、2008年の岩手・宮城内陸地震発生時にも単独で通行実績情報を公開している。
同書には、この経験から東日本大震災後、もっとも早く通行実績マップの提供に踏み出せたと記されている。
「わかる」ってことは大事だと改めて思った
(HONDA、もうひとつのテクノロジー 〜インターナビ×ビッグデータ×IoT×震災〜より)
通信SIMが搭載され、車両そのものがIoTとなってきた現在。ホンダだけでなく、トヨタのカーナビと通信が繋がることでドライブをサポートする『T-Connect』など、カーナビやテレマティクスの存在とライフラインが直結する過渡期がまさに、今。未来のクルマ社会を占うためにも、我々はその道のりを、いま改めて知っておく必要があるのかもしれない。