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【米国発】子どもが主役!シアトルの親子向け公演事情

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2015年04月01日 15:02  MAMApicks

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「おおきな みどりのおへやのなかに……」で始まる絵本『おやすみなさい おつきさま(原題:Goodnight Moon)』。幼稚園の先生をしている先輩お母さんがプレゼントしてくださるまで、筆者はこの作品を知らなかったのだが、「これを読むと、子どもたちがすぐうとうとするのよ」と言われたので、すぐに我が家のレパートリーに加えることにした。



それから数年たった今はテープで修理し続けてボロボロだが、4歳ともなると、話の流れもキャラもわかるし、細かいところまで気づくようになるのが面白い。質問も出てくれば、想像で話を発展させていくし、自分で読めるようになると、本を開いてじっと見入っていることがあるのが不思議な感じだ。

そんなある日、シアトル・チルドレンズ・シアターの定期公演で、その舞台版が上演されることを知った。息子は「行く!」と二つ返事だったので、さっそくチケットを買った。大人は一人40ドル、子どもは一人33ドル。
(結構な値段なのだが、シアトル発のクーポン・アプリで、大人は無料に!)
Seattle Children's Theatre
http://www.sct.org/Shows/2014-2015-Season/Goodnight-Moon

■子どもとの舞台鑑賞チェックポイント
ありがたいことに、当日は朝から晴れ。劇場から数ブロック離れた路上に駐車した瞬間、「マミー、おしっこ」。想定外というか、想定内というか。着替えはあるが、ここで漏らされたくない。「じゃあ、マミーと劇場まで走って、トイレに行こう!」と、靴を履かせて車から降ろし、手をつないで走ろうとしたら、「足が痛いよう」「歩けない」「抱っこして」。

20キロ近い体重の息子を抱っこして走るのはかなり大変なので、やっぱり手をつないで走ってもらい、「がんばれー」「ほら、劇場が見えてきたよ」「ほら、もう着いた」「このドアから入ったらトイレに行けるよ」と励ましながら、無事、トイレに走りこんだ。息子はオシッコをしながら「ふー……」と息を吐いた。

「ぼく、もう車の中であまりお水飲まないことにする」。

そんな息子を、「がんばったねー」と褒めそやしながらトイレからロビーに出てきた時、息子がちょっとガッカリした声で言った。

「ここは工作はないの?」

ホントだ、工作がない。息子とはシアトルのバレエ団付属学校の家族向け公演『ピノキオ』と『白雪姫』、そして一般向けのホリデー恒例公演『くるみ割り人形』の3本を観ているが、バレエ団は子どもが公演前に工作ができるエリアを作っている。

工作と言っても、ピノキオなら三角の帽子、白雪姫なら魔法の杖(シンデレラみたいだが)、くるみ割り人形なら冠、といった簡単なものなのだが、私たち親子の頭の中には「劇場=工作」という図式ができあがっていたようだ。家族向けの公演ではどこもそういうものがあるのだと思っていたが、そうでもないのか。

私たちもそうだが、ロビーにいる家族連れの服装は、実にカジュアル。家族向けのバレエと同じく、ありとあらゆる年齢の子どもが思い思いの格好をしている。ハロウィーンの時に着たのかなと思えるディズニーキャラクターのドレスを着た女の子や、スーパーヒーローのコスチュームを着た男の子もいれば、よそ行きの服を着てかしこまった子どもたちもいるといった具合で、実に賑やかだ。

■子ども仕様の劇場の良さ
シアトルの子ども劇場は、館内に2つの小劇場があるのだが、今回の会場は275人収容の小さな劇場。座席と舞台がすごく近く、息子は「わー! 絵本とおんなじ!」と絵本の世界を舞台に再現した光景に歓声をあげ、一気にテンションが上がった。「風船もベッドも牛さんもいるよ!」

約2,900人収容の大きな劇場でのバレエでは、いかに舞台が遠かったか。小さな息子にとっても、はるか向こうで何かやってるな、ぐらいだったのかもしれない。

さらにありがたいことに、座席はすべてクッション入りで背もたれのあるベンチ式。ひじかけがついた個別の座席だと、親の膝にすわって観たがる子どもを持ち上げるのが大変だったりするので、これは嬉しい!

■90分があっという間の舞台
開演時間になると、劇場のディレクターがマイクなしでご挨拶。その後、すぐに舞台が始まった。今回は耳の不自由な人のために、手話の通訳2人が同時通訳もしている。

基本的な物語は同じだが、絵本にはないスプーンやお皿、犬などのキャラクターや小話が次から次へと出てきたり、俳優3人で6役ぐらいこなして歌も踊りも満載だったりで、子どもたちは声をあげて大興奮。

3歳以上が対象の舞台なので、声が出るなんて自然なこと。「シーッ!」とか言われることがないのはとても気楽だ。短い休憩を挟んで約90分の舞台にすっかりのめりこんで、場内はみんなが一緒に大笑い。息子はバレエの時は拍手をしたことがなく、サラッと「さあ帰ろう」とか言っていたのに、今回は俳優さんたちがお辞儀するのを見ながら、自然と拍手していた。

■芸術コミュニティと企業のチームワーク
チルドレンズ・シアターのシーズン・スポンサーは「マイクロソフト」。その他のスポンサーには、航空機の「ボーイング」や小売業の「ターゲット」、さらに「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」などが名を連ねている。

その他にも小劇場で子ども向けの公演は少なくないし、グラミー賞などよく知られた賞を受賞しているシアトル・シンフォニーでも、乳児から楽しめる音楽と踊りのシリーズを開催し、開演前にはロビーで子どもが本物の楽器に触れられるようにしてある。

こういった親子向け公演で感じるのは、「育てる」という目的だ。入場料もリーズナブルで、服装にそこまで気遣う必要がないから、気軽に行けて親子で楽しめるので、「また行きたいな」と思わせてくれる。そうしているうちに、将来は芸術に馴染んだ大人になるかもしれない。

今だけにフォーカスせず、長期的なことを考えた行動を、今、する。

そんなふうにしていきたいなと考えていたら、ずっと劇の話をしていた息子が一言。

「劇のほうが、バレエよりも好き。楽しいもん。マミーが一緒に行ってほしいなら、行ってあげるけど」

……こういう展開もあるか。

大野 拓未
アメリカの大学・大学院を卒業し、自転車業界でOEM営業を経験した後、シアトルの良さをもっと日本人に伝えたくて起業。シアトル初の日本語情報サイト『Junglecity.com』を運営し、取材コーディネート、リサーチ、ウェブサイト構築などを行う。家族は夫と2010年生まれの息子。

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