我々は、実に色彩に溢れた世界に暮らしているのだが、この色彩のとらえ方は人により異なる。学生時代、筆者は仲間とバンドを組んでいたのだが、その中でギターを担当していた友人が常に派手な色の服を好んで着ていた。その彼と、ライブのステージ衣装を選ぶために店に入ったとき、彼が2種類の色の服を見比べて首を傾げた。「これとこれ、色が違っているか?」
そのとき、筆者は初めて、彼がある種の色を区別できていないことに気付き、ショックを受けたのだった。世界には約3億人もの人が色覚異常を持っており、多くの人達と異なった色の世界を見ているそうだ。
しかし、自分が色覚異常であることに気付いていない人も多い。何しろ本来の色を知らないからだ。あるとき、周りの人が気付いているのに自分だけ気付いていない色があるらしい、と気付いたとき、どのような気持ちだろうか。
塗料やコーティング材料のメーカーであるValsparが、色覚異常を補正する製品を手がけるEnChromaと共同開発した色覚補正用レンズ『EnChroma Cx』を採用したメガネが登場した。Valsparは『#colorforall(color for all:全ての人に色を)』というコンセプトの企画で、この色覚補正メガネを色覚異常を持つ人にかけてもらい、彼らの反応を映像に記録した。彼らの驚きから、私たちは色が正しく見えることのすばらしさを知らされることになる。
色が見えることのすばらしさを教えてくれる
その動画のタイトルは『Valspar Color For The Colorblind』となっている。
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色覚異常の人達に、色覚を補正するメガネを提供し、本来の色彩豊かな世界を見てもらおうという企画だ。
ある男性は、周りの人達が気付いている違いに自分だけ気付いていないのは、自分が賢くないからだ、と思っていたからだという。
だから両親にもそのことを話さなかったし、絵を描くこともやめていたという。
何もかもが灰色に見てしまう男性は、自分の子供が何度もクレヨンを変えて絵を描いていることの理由が分からなかった。
ある女性は、女の子らしい色がわからなくて、からかわれたという。
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ある男性は、自分が見逃している色があるのではないか、と不安を感じてきたという。
ある男性は街に沈む夕日を見て、言う。
「あれは、君たちが毎日見ているものなの?」
色覚異常にも様々なタイプがある
彼らが本来の色彩を目にして語る言葉は、色彩に溢れる世界を見ることができることの貴重さを気付かせてくれる。もし、自分は本当に色を区別できているかどうか不安であれば、『EnChroma』のサイトで簡単にテストすることができる。
『EnChrom』中のStart Testボタンをクリックすれば、テストが始まる。筆者は、正常範囲内ではあったが、若干区別が付きにくい色があることが分かった。色覚異常と言っても、様々なタイプがある。そのため、『EnChroma』も全ての色覚異常者に効果があるわけではないらしい。
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なお、『EnChroma』は、一部の美術館などにも常備される予定があるようだ。多くの色覚異常者が、多くの色を手に入れられることを願いたい。