これまで『FUTURUS』ではセンサー技術を応用したスマートウォッチやウェアラブルテクノロジーについて紹介してきた。しかしその製品群には、造形としての美しさやシルエットまで配慮されているものが多くはなかったのではないだろうか。
今日は巷を賑わしているスマートウォッチではなく、伝統的な時計に焦点を当てつつ、工芸品としての美しさに触れていこう。
時計でスーパーカーを表現するとこうなる
MB&F社が誕生10周年を記念して作った新作『HMX』は、スーパーカーにインスピレーションを得た機械式の高級腕時計である。機械式腕時計なので、クオーツ式やスマートウォッチと違い、時刻表示は全て歯車とゼンマイ、レバーの組み合わせによって表される。
カラーは4種類用意されており、カラー名称もそれぞれロータスブラック、イギリス・レーシンググリーン、フェラーリレッド、ブルーブガッティと名車にちなんだカラー展開となっている。
時計のフロント部分に関しては、車のボンネットをイメージした流線型のフォルムが目を引く。アクセルとブレーキを模したパーツがあしらわれ、美しいメカ部がチラリと顔をのぞかせている。
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肝心の時計の表示はというと、ケースの下部から見ることができる。ケースと水平に取りつけられたジャンピングアワー機構を、ミラーを用いて90度反射させることによって立体的に時刻表示を見ることができる。
ケース自体はチタンとステンレススチールによって作られスーパーカーらしい強靱さを表現しているように思われる。ムーブメントは自社で開発し、自動巻で42時間の駆動が可能だ。毎日使えば止まることがないことが機械式腕時計のよいところだろう。
値段などはまだ公表されてはいないが、同社の過去のラインナップを見ると400〜600万円であると考えられる。
ちなみになぜこのような時計を作ったのか。設計者の答えはいたってシンプルだ。「子どもの心を持ったクリエイティブな大人達が作るとこうなった」という。データ解析による顧客層の分析などはもちろん販売においては大切なことであるが、そういったデータを凌駕するプロダクトを作れば売れる自信はあるのだろう。
工作技術の極み
ちなみに、同社の過去のプロダクトも興味深いものが多い。独創的なケース形状やムーブメントを取り入れた『MEGAWIND』や、SF映画の宇宙船を模した『THUNDERBOLT』なども、造形やメカニズムの美しさが大人の子どもゴコロを刺激する一品だ。
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このような製品を見る限り時計産業の工作技術の発展は目を見張るものがある。すでにタグ・ホイヤーなどのいくつかの有名時計ブランドもスマートウォッチ業界に参入してきている。コンピューターメーカーでは作ることができない美しいスマートウォッチが、世の中に広がってくる時代もそう遠くはないはずだ。