【コラム】 謎の言語 ヴォラピュクを巡るミステリー

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2007年12月04日 11:48  よりミク

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よりミク

 「Volapuk(ヴォラピュク)」という名を聞いたことがありますか? ヴォラピュクとは、今から約130年前につくられた人工言語のこと。夢で「国際語をつくるように」とのお告げを受けた、ドイツ出身のある神父が考案したと言われています。人工言語といえばエスペラントが有名ですが、発生した時期はだいたい同じ。現在エスペラントの使用者は世界に100万人程度、一方のヴォラピュクは25人程度しかいないそうです。発展を続けたエスペラントとは対照的に、死に絶えた言語と言っていいでしょう。
ヴォラピュクのアルファベット
ヴォラピュクのアルファベット
 しかし3か月前、「忘れられた」ヴォラピュクに、突然のスポットライトが。ウィキペディアにおいて、ヴォラピュクで書かれた記事が10万を突破する、という珍事が起きたのです。  ウィキペディアは200を超える言語で運用されていますが、10万以上の記事があるのは、英語や日本語を含むたったの14。話者25人のヴォラピュクがそれらと肩を並べるとは……快挙を通り越してミステリーです。  さらに気になるのは、10万記事のうち90%超が、3か月足らずの間に作成されているということ。しかもそのほとんど全部が、ある1人の人物の手によるものでした。その名は「Smeira」。一体どんな魔法を使って、このような快挙を成し遂げたのか? 探っていくうち、その影に潜む、ある存在が明らかになりました。  それは「ボット」。人間に代わって、大量の記事を自動生成することができるプログラムのことです。機械的な仕事ぶりがロボットに似ていることから、ボットと呼ばれているのですが、この度のウィキペディア編集にも、「SmeiraBot」と呼ばれるボットが暗躍していたのでした。  仕掛けたのは、熱心なヴォラピュク研究者の「Smeira」ことSergio Meiraさん。参加者の少ないヴォラピュク版ウィキペディアに注目を集めるため、ボットの力を借りているらしいのですが……作成された記事の大半は地名に関するもので、説明もごく短いものばかり。百科事典の名には程遠い内容です。
アメリカの説明はたったの1行……
アメリカの説明はたったの1行……
 このような「自動生成された百科事典」に対してネットは賛否両論。「ボットと言えど、偉業を達成したことに代わりはない」といった肯定的な意見もあれば、「地道に努力して記事を増やしてきた他の参加者への冒とくだ」といった否定的な声も見受けられます。特に、同じ人工言語であるエスペラント版は、やっと10万記事目前というところまで来たところ(12月4日現在)。怒る人がいてもムリはないかもしれませんね。  ウィキペディアのメインページには「他言語版ウィキペディア」という項目があり、10万以上の記事を有する版だけが記されています。快挙達成当初はヴォラピュクの名も載っていたのですが、現在は削除されてしまいました。理由は、「ボットで作成できるジャンルに集中しており、百科事典と言い難い」などなど。数字は達成したものの、ヴォラピュクが本当の意味で「10万記事を超えたウィキペディア」として認められるのは、まだ先になりそうです。(編集・執筆/mixiニューススタッフ)
今はもう無い「Volapuk(ヴォラピュク)」の文字。やはり記事内容の少なかった「Lumbaart(ロンバルト語)」とともに、削除された。
今はもう無い「Volapuk(ヴォラピュク)」の文字。やはり記事内容の少なかった「Lumbaart(ロンバルト語)」とともに、削除された。
関連サイト ・ヴォラピュク版ウィキペディア:http://vo.wikipedia.org/wiki/Cifapad
その他のよりミク記事: ・「鬼太郎」を救った人々の愛 ・止まらない一口、10円まんじゅうの今 ・竜戦士を支えるマスコット「ドアラ」 【よりミクとは?】ちょっと気になるあの話題、巷でウワサのあの商品をニューススタッフが調査し、コラムにしてお届けします。「より道」感覚で、ニュースとはひと味違うコンテンツをお楽しみください。

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