世の逆風をものともせず世界初のドローンレース国際大会が盛大に開催！

　先日は東京・市ヶ谷の防衛省上空で行方不明になったりして、なにかとお騒がせなドローン(無人航空機)だが、そんな周囲の逆風(!?)をものともせず、世界で最初の国際的なドローンレース大会が開催された――。

■HMDを装着してドローンの視点で操縦する

　米・カリフォルニア州サクラメントの複合型テーマパーク「カリフォルニア・ステート・フェア(California State Fair)」で7月16・17日に開催されたのが世界初の国際的なドローンによるレース競技会「National Drone Racing Championships」だ。

　日本ではなかなかその実態に触れる機会はないが、すでにフランス、イギリス、アメリカ、オーストラリアではドローンをスポーツとして楽しむアマチュアリーグがあり、今回、各国から120名もの腕自慢のドローンパイロットたちがアメリカに集結したのだ。

　2日間にわたって行なわれた競技会（選手たちは7月13日から現地入りして予行演習が可能）では、「レース」、「フリー」、「団体戦」の3種目の競技が行なわれた。大会ではレースとフリー(トリック)を共に制し、団体戦でもトップに立ち文句なしで初代チャンピオンに輝いたのはオーストラリア・メルボルンのチャド・ノワック氏（パイロット名：FinalGlideAUS）だ。獲得した優勝賞金は2万5000ドル(約310万円)とのこと。

　ラジコンヘリや、ラジコンカーのレースとこのドローンレースの一番違う点は、パイロットがHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を装着してドローンの視点で機体を操る点だ。つまりドローンに搭乗している感覚をバーチャルに味わいながら操縦するのだ。現状の機体では最高速度は150km/hに達するといわれ、凄まじいスケールスピードだ。NASAをはじめアメリカ連邦航空局(FAA)、連邦通信委員会(FCC)など60を越える団体からの後援を受けて開催された最初の国際ドローン競技会はまずまずの成功を収めたようである。

■ドローンレースを新たなスポーツ種目へ

「CBS」の記事によれば、今大会のレースを統括するスコット・レフスランド氏はドローンレースを「3DのF1だ、まさに空のF1だよ」とその面白さを力説し、今回の大会が新たなスポーツを生み出す萌芽になったと考えている。すでに氏のもとには、ドローンレースに興味を持った幾人かの人物が接触を図っているという。

　20年前にスケートボードをプロスポーツに昇華させ「X Games」興行を立ち上げたロン・セミアオ氏も、ドローンレースに熱い眼差しを送っている者の一人だ。スケードボードも最初は子供の遊びだったものだが、その点でドローンも良く似ているという。セミアオ氏は、ドローンレースはプロスポーツになるべきだと考えており、チャド・ノワック氏のようなスターパイロットをより多く発掘するためには、大企業などの大口スポンサーがつく必要があると話している。

　また記事ではこの大会に参加した身体障がい者の女性パイロット、ゾエ・スタンバーグさんを取材しており、ドローンレースは障がい者が活躍できるスポーツになり得る可能性も指摘している。かつて健常者の頃はバイクをこよなく愛していたスタンバーグさんだが、HMDの映象でドローンを操縦しているときは「本当にバイクに乗っているみたいです」と、ドローンレースに熱中することになった最大のポイントを語っている。

　昨今、社会的には何かとネガティブな印象を与えているドローンだが、この種のレースが今後e-sportsなどのように多くの観客を楽しませるプロスポーツになっていくのかどうか気になるところだ。
（文／仲田しんじ）

【参考】

・Gizmag
http://www.gizmag.com/pilot-drone-racing-competition/38530/

・US Drone Nationals
http://dronenationals.com/results/

・CBS News
http://www.cbsnews.com/news/drone-racing-championships-take-place-first-time-california-state-fair/