医療用ウィッグの日本工業規格(JIS規格)が4月に制定
大阪大学大学院医学系研究科皮膚・毛髪再生医学寄附講座 教授 板見智先生国立がん研究センターの「抗がん剤治療による副作用の苦痛度ランキング」によると、女性のがん患者さんが最も苦痛と感じた副作用は「頭髪の脱毛」でした。「吐き気」や「全身の痛み」などよりも、治療に伴う外見の変化が、大きな精神的負担となっていることが見受けられます。そんな患者さんにとって、日常生活で前向きに病気へ立ち向かうため、医療用ウィッグは欠かせないアイテムのひとつです。
しかし、医療用ウィッグは保険適用対象外のため、山形県など一部の自治体で補助金が出る以外は、すべて患者さんの負担となっているのが現状です。さらに、近年インターネット販売など販売経路の多様化が進む一方、医療用ウィッグの品質について基準がない状況が課題とされていました。
患者さんや医療関係者たちへの信頼性や安心感を高めるための、明確な品質基準としてこの4月、医療用ウィッグの日本工業規格(JIS規格)が制定されました。これを受け、全商品がJIS規格に適合した医療用ウィッグを販売する株式会社アデランスが先日、プレスセミナーを開催。大阪大学大学院医学系研究科皮膚・毛髪再生医学寄附講座 教授の板見智先生が講演を行いました。
医療用ウィッグの保険適用、医療費控除へとつながる第一歩となるか
一般用ウィッグがおしゃれやイメージチェンジなどを主目的としているのに対し、医療用ウィッグは、抗がん剤治療などで頭皮が敏感になっていても使える安心感や、着け心地のよさが求められます。「古くから頭髪は個人の尊厳、人格を表すという考えが強く、脱毛してしまった患者さんの喪失感、生活の質(QOL)の低下は著しい」と板見先生は語ります。
アデランスは、けがや病気による脱毛で悩む子どもにオーダーメイドウィッグをプレゼントする活動や、車いすに乗ったままカットやシャンプー等ができる病院内ヘアサロンの全国展開など、患者さんのQOL維持・向上のための取り組みを続けています。同社CSR推進室部長の箕輪睦夫氏は「2005年に、抗がん剤治療の副作用による脱毛をカバーする医療用ウィッグを開発できたことが、非常に大きなエポックメイキングになりました」と語りました。
医療用ウィッグのJIS規格化は、今後医療用ウィッグの保険適用、医療費控除へとつながる第一歩となることが期待されています。(QLife編集部)
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