第3のビールや発泡酒が犠牲になる!? ビール類の「酒税統一案」をどう見るか?

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2015年09月20日 12:41  弁護士ドットコム

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ビールや発泡酒など「ビール類」の酒税が見直されようとしている。報道によると、政府は2016年度の税制改正に、ビール類にかかる税額の一本化を盛り込む方針だという。


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ビール類の税額は現在、成分の麦芽の比率などで異なっている。たとえば350ミリ缶の場合、ビールが77円、発泡酒は47円、第3のビールは28円だ。財務省は、発泡酒や第3のビールの普及によって税収が減りかねないとして、ビール類全体の税収を維持できるように約55円で統一しようとしている。



一本化によって、ビールの小売価格は下がるが、発泡酒と第3のビールは値上がりする可能性がある。だが、ビール会社によって、ビールと第3のビールの販売比率が違うため、それぞれの会社の開発・販売戦略に大きな影響を及ぼす可能性がある。



財務省は一本化までに5〜7年の移行期間を設けることを検討しているとのことだが、庶民の暮らしにとって、どのような影響があるのだろうか。ビール類の「税額統一」をどう見るのか、久乗哲税理士に聞いた。



●「酒税収入を増やしたいという政府の本音を感じる」


「企業が商品やサービスの価格を決定する場合、当然、税金も考慮されます。



そういう意味でいえば、酒税におけるビールの定義の盲点を突いて開発されたのが、発泡酒や第3のビールでした。



これらは、少しでも低い酒税によって価格を下げることができるように開発された商品です。ビール類の酒税が統一されると、発泡酒や第3のビールの酒税は引き上げられ、ビールの酒税は引き下げられることになります」



価格の高いビールを飲まず、発泡酒などで我慢していた人には、朗報になるかもしれない。



「そもそもビールの酒税については、業界が酒税引き下げを要望していました。



その理由は、世界的に見て、日本はビールの酒税が高いから。今回の方針は、業界の希望を聞いたかたちにもなるんですよね。



ただ、ビールの酒税を下げると、全体の酒税収入が下がります。そのため反対に、発泡酒と第3のビールの酒税を引き上げようということです。



結局、『ビール類』全体での酒税収入は変わりません。すなわち、ビールの酒税を下げるために発泡酒と第3のビールが犠牲になったというかたちになります」



発泡酒や第3のビールを好んで飲んでいる人にとっては、手痛い打撃になりそうだ。



「発泡酒や第3のビールは値上がりすることになりそうですから、こちらが好きな人にとっては影響が大きいでしょう。



また、今回の見直しをきっかけに、酎ハイなどの酒税もビール類の酒税と統一すべきだという議論があります。酒税を高くすることによって、お酒を飲む人を減らす効果を期待したものです。



世界の潮流とはいえ、アルコール依存症を防ぐという名目は言いわけに過ぎず、本当のところは、酒税収入を増やしたいという政府の本音を感じます」



久乗税理士はこのように話していた。



【取材協力税理士】


久乗 哲 (くのり・さとし)税理士


税理士法人りたっくす代表社員。税理士。立命館大学院政策科学研究科非常勤講師、立命館大学院経済学研究科客員教授、神戸大学経営学部非常勤講師、立命館大学法学部非常勤講師、大阪経済大学経済学部非常勤講師を経て、立命館大学映像学部非常勤講師。第25回日税研究賞入選。主な著書に『新版検証納税者勝訴の判決』(共著)等がある。


事務所名 :税理士法人りたっくす


事務所URL:http://rita-x.tkcnf.com/pc/


(弁護士ドットコムニュース)


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  • 個人的には企業努力を潰す取れるところから取ってしまえ理論の増税といったところか。
    • イイネ!21
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