全身の骨が正常に発達しない難病「低ホスファターゼ症」とは

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2015年10月02日 18:10  QLife(キューライフ)

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100万人あたりの患者数が20人に満たない超希少疾患

東北大学医学系研究科 環境遺伝医学総合研究センター 小児環境医学分野教授 藤原幾磨先生

 全身の骨が正常に発達しない低ホスファターゼ症(hypophosphatasia=HPP)という病気があります。重症例ではほとんど骨が無いような状態で赤ちゃんが生まれてくることがあるこの病気は、全人口100万人あたりの患者数が20人に満たない疾患として定義される超希少疾患であり、日本国内の患者さんはわずか100〜200人ほどと推定されています。

 HPPには、これまで有効な治療法がありませんでした。しかし、先日、アレクシオンファーマ合同会社が同疾患の治療薬「ストレンジック(R)」(一般名:アスホターゼ アルファ)を世界に先駆け日本で発売。9月17日、メディアセミナーを開催し、東北大学医学系研究科 環境遺伝医学総合研究センター 小児環境医学分野教授の藤原幾磨先生が講演しました。

 全身の骨・軟骨に異常がみられる骨系統疾患のひとつとして分類されるHPPは、組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNSALP)という酵素の欠損により引き起こされます。その症状は、生成された骨基質(たんぱく質の線維)にカルシウム・リンなどミネラルが沈着できず、その結果、石灰化していない骨(類骨)が増加した状態になるというもの。HPPでは、蓄積したピロリン酸が石灰化を障害することが低石灰化の原因とされています。

 HPPは周産期型、乳児型、小児型などさまざまな病型に分類され、その病型により発症する症状も多岐にわたります。「乳幼児では乳歯の早期脱落、ビタミンB6依存性けいれんなどの症状があらわれることもあります」と藤原先生。特に重い症状として、骨格障害による呼吸不全があります。「周産期重症型では、生存期間の中央値は生後4か月。主な死亡原因は呼吸不全でした」(藤原先生)

“難病法による助成”と“初の治療薬の登場”で治療環境が整ったHPP

 難病HPPの治療薬として世界で初めて、日本で承認されたのが「ストレンジック(R)」です。同剤は、HPPの根本的な原因であるTNSALPの欠損を解消するようデザインされた酵素補充療法です。欠乏したTNSALPの補充により、酵素基質濃度上昇と骨の石灰化障害を改善し、重篤な骨格や全身性の重篤な病態と早期死亡を予防することが目的とされています。

 同剤について藤原先生は「正常な人とほぼ同様の状態をこの薬によってつくりだすことができます。胸郭(胸の骨)の石灰化が促進され、肺機能が改善したことで生存率が改善しました」と語りました。日本人の患者さんも参加した臨床試験のデータでは、1年間の生存期間が90%以上に、2年間の生存期間も84%まで改善されたといいます。また、他の症状についても改善が見られ、「成長が促進し、運動能力が改善、そしてADL(日常生活動作)の改善によってQOL(生活の質)が向上するといった効果があります」と藤原先生は語りました。

 HPP患者さんとそのご家族待望のお薬として登場したストレンジック。薬価が高いことがひとつの懸念材料でしたが2015年7月、難病法によりHPPは治療費の助成が受けられるようになりました。これによりようやく安心して治療に臨める環境が整ったといえます。今後、1人でも多くの患者さんの命、そして生活が救われることが期待されます。(QLife編集部)

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