記憶力の良し悪しは、「いつ」「どうやって」決まるのか

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2015年10月30日 12:00  QLife(キューライフ)

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QLife(キューライフ)

脳の発達にタンパク質「α2キメリン」が関与

画像はリリースより

 記憶力や学習能力などの「脳機能」は、どうやって決まるのでしょう。記憶や学習は、神経細胞が無数に繋がった回路内で情報がやり取りされた結果です。神経細胞には、「スパイン」と呼ばれる棘状の構造があり、その大きさと数が記憶力や学習能力に影響するとされています。

 マウスを用いた研究では、記憶が形成される際にスパインが大きくなり、数も増えることがわかっています。反対に、使わない回路のスパインでは、逆の現象が起きることも明らかに。また、自閉症や統合失調症の患者の脳では、スパインの異常も見つかっています。

 この大切なスパインの働きやそのメカニズムについてはわからないことが多かったのですが、今回、国立遺伝学研究所の岩田亮平研究員と岩里琢治教授らのマウスを使った研究によって、スパインの形成に「α2キメリン」というタンパク質が関与していることがわかったのです。

大人の記憶力は子ども時代に決まる?

 実験では、遺伝子操作でα2キメリンを欠損させたマウスを作り、記憶や認知機能をつかさどる海馬を解析しました。するとスパインが大きくなり、数も増えていたのです。これにより、α2キメリンがスパインの形成に影響し、それを抑制していることがわかりました。

 また、αキメリンを欠損させる時期を、胎児期、生後10日目の子ども期、大人期に分けて確認したところ、大人期に欠損させたマウスのみスパインの異常が見られませんでした。つまり、α2キメリンは子どもの海馬に作用することで大人になってからのスパイン形成を制御しているというのです。

 今回の研究では、α2キメリンがスパインの大きさや数を抑制すること、α2キメリンは大人ではなく子どもの海馬ではたらくことによって「おとなになってからの海馬のスパイン形態と、海馬を用いる記憶能力」を適度に保つ働きを担うことがわかりました。さらにこの研究成果は、脳発達の理解や自閉症などの病態解明にも役立つと期待されると、研究グループは述べています。(林 渉和子)

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