半数近い人が肺炎を「死につながる重い病気」と認識も
慶應義塾大学医学部 感染症学教室教授 岩田敏先生11月12日は「世界肺炎デー」です。肺炎は2011年に脳血管疾患を抜き、日本人の死亡原因の第3位になりました(ちなみに1位はがん、2位は心疾患です)。また、日本において、肺炎によって亡くなる方の95%は65歳以上の高齢者です。超高齢社会を迎えた日本は、肺炎対策は急務となっています。
肺炎の原因となる細菌やウイルスは特別なものではなく、普段から人の口や鼻などに存在します。ところが、免疫機能が弱っていたり、発達していなかったりする時に、身体に侵入しやすくなり、肺炎を引き起こします。その原因菌として最も多いのが「肺炎球菌」です。65歳以上の、病院外で日常生活をしていた人が発症する肺炎である市中肺炎による入院患者の30.3%がこの肺炎球菌によるものです。
こうした肺炎やその予防接種に対する意識を調査する「全国47都道府県“大人の予防接種”意識調査」をファイザー株式会社が実施。その結果、45.8%の人が肺炎は「死につながる重い病気」と認識しており、64.8%の人が「自分が肺炎にかかる可能性があると思う」と回答。にもかかわらず、50.9%の人が肺炎球菌やインフルエンザを含むすべてのワクチンを、成人後に一度も接種したことが無いと回答したのです。
肺炎は「発症しないように予防することが重要」
「肺炎球菌やインフルエンザウイルスは、ワクチンによって防ぐことができる『Vaccine Preventable Diseases:VPD』と呼ばれ、WHOの資料では20種類以上の感染症がVPDとされています」。そう語るのは、慶應義塾大学医学部 感染症学教室教授の岩田敏先生です。岩田先生は「米国をはじめ諸外国と比べ、日本ではワクチンの承認が遅れる『ワクチンギャップ』がありましたが、徐々に解消されつつあります」と、近年は日本においてもワクチンの承認と、それに合わせてワクチンに対する理解が進みつつある現状を紹介しました。
その一方、肺炎球菌や肺炎に対する理解が乏しいのも事実。今回の調査では、43.5%の人が肺炎は予防できるということを「知らない」と回答しています。
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「日常生活が著しく制限されたり、脆弱性が増して悪循環に陥ったり、肺炎にかかること自体がリスクになります」と岩田先生。ところが、先の肺炎に対するイメージの質問では、35.0%の人が「入院して治療すれば治る病気」と回答しました。この「入院すれば大丈夫」という考えにも、岩田先生は警鐘を鳴らします。「入院してADL(日常生活動作)が低下すると、寝たきりや肺炎を繰り返すケースが見られます。発症してから治すのではなく、発症しないように予防することが重要です」と、肺炎予防が高齢者の健康、そして健康寿命の延伸を目指すうえで欠かせないと語りました。
毎年11月12日は「世界肺炎デー」です。この機会に肺炎球菌を含む感染症に対する理解を深めましょう。もし、周りにまだ肺炎球菌のワクチンを打っていない高齢者がいるという方は、一度かかりつけのお医者さんに相談してみてはいかがでしょうか。(QLife編集部)
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