パリ同時テロ事件に思う、子連れの外国旅行で考えておきたいこと

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2015年11月18日 14:01  MAMApicks

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2015年11月13日に起きたフランス・パリでの同時テロ事件は、「ああ、とうとう」という感じだった。

この8月、シアトル在住の筆者が親子3人でフランスに3週間滞在した時も、パリではシアトルとは異なる警備体制を見ることが多く、「治安が不安定」ということを何度も認識させられたことがよみがえった。

■事前にできる対策準備とは
今年フランスで起きた事件で世界で大々的に報じられたものでは、シャルリー・エブド新聞社襲撃事件(1月)や、リヨン郊外のガス工場での事件(6月)、高速鉄道での発砲事件(8月)などがあった。新聞社襲撃は標的が決まっていた事件だったが、ガス工場や鉄道の場合は無差別だ。

フランスでの旅は、「速い電車に乗りたい」「火山が見たい」という息子の希望をかなえるため、パリから高速鉄道でリヨンやクレルモン=フェランに行くため列車パスを購入していたので、改めて不安になった。

しかし、あれこれ考えたらきりがないし、どこにも行けない。

旅行をキャンセルしないなら、最優先は幼い息子と安全に楽しみ、無事に帰国することだ。

では、安心を事前に作るには何をしたらいいのか?

在フランス日本大使館と在フランス米国大使館の場所や連絡先、警察・救急・消防・航空会社の連絡先、交通機関の情報、大きな病院や薬局、英語でサービスが受けられるところ、クレジットカード情報などは紙に書き留めておくこと、パスポートのコピーをとっておくこと、といった基本的なこと以外に事前にできることは何だろう。

自分たちが行くところなどについて、できるだけ周囲の情報を知っておくこと。現地に住む知り合いに状況を聞くこと。そのぐらいしか思いつかない。

■緊張感のあったパリ
シアトルからカナダを経て、シャルル・ド・ゴール空港に到着し、荷物受取所に行った時、迷彩服を着て大きな銃を持った兵士たちが見回りをしているのが目に飛び込んできてドキッとした。

アメリカは銃社会と言っても、私の普段の生活で銃を目にすることはないし、家族の誰も銃を持っていない。シアトルの国際空港では今、そういう兵士の監視はない。

4歳の息子が立ち止まり、「ママ、あの人、大きな銃を持ってるよ。どうして?」ときいてきた。メディアが出す写真やビデオ、記事である程度の情報は得ていても、自分の目で見るのとは違う。「悪い人がいないか、見てるんだよ」とものすごく簡単に説明すると、「あれでその悪い人を撃つの?」と息子はさらにきいてくる。「そうだね、撃つかもしれない」。

スーパーヒーローなど戦闘ものは怖いから、と見たがらない息子は、緊張したのか無言だったが、空港から車で移動し始めると、車窓を流れる風景に夢中になっていた。

パリの要所要所で見かけた、大きなライフルを持った兵士や警察官。一番よく覚えているのは、パリ最大のモスクの横にある広大な植物園だ。息子が気に入ったので11日間のパリ滞在中に何度か行ったが、モスクに面した西側の入口には大きな銃を持った警察官がいた。

11日間を過ごしたパリから高速鉄道で移動し、リヨンやクレルモン=フェランで10日間を過ごした。大都会から離れるとやはりのんびりした空気が漂う。「ここにまた来たいよう」と息子が何度も言っていた。

■理解できる言葉での情報源を確保すること
しかし、ホッとしたのは、やはりシアトルに戻ってきてからだ。「旅行も良かったけれど、やっぱり自分の家がいい」と思うのは自然なことだが、やはり自分が不自由なく情報を得て意思疎通できる英語圏、ということが大いにある。

前回のフランス旅行では思いもしなかったそんなことを思ったのは、やはり自分の中に不安があったからだろう。

夫のフランス語は食事や買い物に困らない程度で、私にいたっては挨拶と簡単な自己紹介のみ。子連れの私たちに気軽に話しかけてくれ、フランス語ができないとわかると英語に切り替えてくれるフランス人たちもたくさんいてとてもありがたかったが、事件が起きた時にはやはり、自分たちが理解できる言語での報道が必要になる。

パリでは毎日洗濯機が必要(子連れだとそうなる)と、アパートを借りた。普段の生活と同じように携帯とラップトップでネットにアクセスしてニュースを見ていたが、滞在12日目にリヨンのホテルでふとつけたテレビでCNNとBBCが流れた瞬間、「アパートでもしネットがダウンしていたら、英語で情報を得る術がなかった」ということにようやく気づいた。

今回の事件でも英語ではCNNやBBCがものすごいスピード感で特別報道体制に入ったが、私たちが事件発生時にフランスにいたとしたら、そうした英語の情報にアクセスする方法をつねに確保しておく必要がある。ホテルならホテル側からの英語アナウンスもあれば、英語を話すスタッフや宿泊客から情報をもらうこともできただろうが、アパートでは心もとない。

これは日本に夫と一緒にいても同じことで、日本語ができない彼には英語の情報源が必要だ。情報を得ることで、子どもを守れる可能性が高まるし、次の行動も考えられる。

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10月末日。ハロウィンのトリック・オア・トリートで近所をまわっていた時、息子がお菓子をいただいて“Thank you”と言った後、「“Merci”って言えばよかった」と一言。

フランスにいた時、息子は“Bonjour”“Merci”“Bonne journée”を機会があるごとに言って喜ばれていたので、そういう発想になったのかもしれない。フランスから帰ってきて2ヵ月がたっても、息子の中にはあの時の体験が生きている。

未来のある子供にはできるだけいろいろな世界を見せてあげたいと思うし、何かあってもできるだけ自分らしい生活を送ろうとする努力もしたい。これからどこかへ旅行する場合は何かあった時のことを考えつつも、親子で旅した思い出をたくさん作っていきたいと思う。

大野 拓未
アメリカの大学・大学院を卒業し、自転車業界でOEM営業を経験した後、シアトルの良さをもっと日本人に伝えたくて起業。シアトル初の日本語情報サイト『Junglecity.com』を運営し、取材コーディネート、リサーチ、ウェブサイト構築などを行う。家族は夫と2010年生まれの息子。

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