膵がんの早期発見につながる血液バイオマーカーを発見
画像はリリースより早期ステージにおける膵がんは自覚症状がほとんどなく、既存の検査手法では発見が困難であるがために、ほかのがんに比べて治療予後が悪いことが知られています。しかし先日、国立がん研究センターと米国 国立がん研究所(National Cancer Institute:NCI)の共同研究によって、膵がんの早期発見に有効な検査キットの開発に成功したという発表がありました。
同研究グループが注目したのは、「ApoA2アイソフォーム」と呼ばれる善玉コレステロール(HDL)を形成するタンパク質で、健常な人の血液中に一定量含まれているものです。米国で、早期の膵がん患者を含む252例の血液を用いてApoA2アイソフォームの濃度を測定・分析したところ、早期膵がん患者では健常者と比べてApoA2アイソフォームの血漿内濃度が低下していることを確認しました。
しかし、ApoA2アイソフォーム濃度の計測には高価な機器を必要とし、一般の臨床検査としての導入が難しい状況でした。そこで検査法の開発にも取り組み、検査キット(Human APOA2 C-terminal ELISA kit、研究用試薬)の製作に成功。この検査キットを用いて血液検体904例を調べたところ、既存の膵がんバイオマーカーであるCA19-9と比較して、より高精度に早期膵がんを検出できることを確認しました。
実用化に向け模擬検診を実施
この検査キットは、早期膵がんばかりではなく、膵がんのリスクを高める膵管内乳頭粘液性腫瘍や慢性膵炎などの疾患も高い精度で検出することができます。また、ApoA2アイソフォームとCA19-9をあわせて検査することで、早期膵がんの検出率は向上することがわかっています。
今後は、国立がん研究センター研究所と神戸大学などが協力し、「apoA2 アイソフォームを用いた膵がん模擬検診」を開始する予定となっています。また、現時点では本検査キットは研究用試薬であり、実用化には体外診断薬としての承認も必要になります。
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早期発見が可能になれば、膵がん患者さんの生存率は飛躍的に向上することが期待できます。実用化にはまだ道半ばではありますが、難治性と言われている膵がんを克服できる日も、そう遠くないかもしれません。(宮坂方子)
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