「仕事だから○○」で子どもをモヤモヤさせないために ――イメージの具現化と絵本

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2015年12月09日 10:31  MAMApicks

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仕事。子どもにとって親の仕事ってなんだろう。

娘が成長し、少しずつ複雑な気持ちも抱くようになってきていると感じる今日この頃。保育園が遊ぶための場所ではなく、親が仕事をしている間、預かってくれるところだということも理解しつつある。

そうはいってもすでに3年目となる今の保育園は、本人にとってすっかり第二の我が家のようになり、遊びに行っている感覚だろう。

楽しいのはいいことだ。
だけど、娘には本当のことも知ってほしい。考え方はそれぞれだろうけど、個人的には親の仕事が乳幼児にとってマイナスばかりだとは思っていない。

むしろ、働くということ、社会の一員となることを肌で感じてもらうためには、自分が楽しく働いているのが一番だろう、と思うことすらある。

さて、言葉では自分が仕事をしていることを伝えていはいるが、娘にとってそれは、どのように映っているのだろうか。子どもの仕事は遊ぶこと、なんて言うくらいだから、もしかしたら、親だって遊んでいると思っているかもしれない。

「仕事」という言葉だけが一人歩きをし、時として彼女を悩みの底に突き落としているように感じたことがある。

「ママお仕事だから、今日は保育園だよ。」
そんな風に言った時、ママが仕事→自分は保育園、という流れは理解しているものの、その理由がわからずに悶々としているような気がした。「仕事」の時はなぜ一緒にいてはいけないのか。なぜ、「仕事」の日は保育園に行くのか。そもそも、「仕事」ってなんだ???


そんなことを考えていた矢先に、娘が郵便屋さんに興味を持った。きっかけは、ホネホネさんだ。

『ゆうびんやさんのホネホネさん』という絵本の主人公、ホネホネさんと呼ばれるガイコツは、郵便屋さんとしてたくさんの手紙や小包を村の動物たちに配って回る。

それまで、イノシシさんからブタさんに届く手紙は、イノシシさんが直接ブタさんに渡していたと思っていた娘。そうではなくて、間にはホネホネさんをはじめ、多くの人(生き物?)が関係していることを説明した。

絵本のストーリーはいたってシンプルだ。舞台は夏休み直前。ホネホネさんが動物たちに配る手紙は、遠方の友だちから届いた遊びの誘いが多い。そしていよいよ夏休み。多くの動物たちが遊びに出かけ、行った先からホネホネさんに手紙を書いた。

たくさんの手紙をもらったホネホネさんが、楽しい気分になったところで、このお話は幕を閉じる。


……ここで娘に疑問がわいた。

「ホネホネさんはどうして遊びに行かなかったの?」

これは願ってもないチャンス。

「お仕事があるからだよ。ホネホネさんが遊びに行っちゃったらお手紙を届ける人がいなくなっちゃうよ。」

しばらく黙って考え込んでいた娘が、何を感じたのかはわからない。

もちろんこの会話から、「仕事」が何なのか、「仕事」の日はなぜ一緒に遊べないのか、娘がその答えを見つけられるとは思っていない。だけど、子どもの頭の中で「仕事」というものが少しでも具現化されれば、仕事に行く親と保育園に預けられる子どもとの間にある意識の温度差が、だんだん小さくなる可能性は十分にある。


働く理由は様々だ。経済的な理由かも知れないし、自分が自分らしくいるために働くのかもしれない。どんな理由であれ、仕事をしているということは、世の中に何かしら貢献をしているはずだ。子どもに多くを理解してもらおうとは思わない。

ただ、働く親の姿がイメージできるようになれば、「仕事だから」という言葉で片付けられているアレコレが、子どもの心の中で行き場を失ってしまうことを防げる気がした。

……そんな思いを心に抱きつつも、現実はそう甘くない。相変わらず朝夕のバタバタを必死に乗り越えている日々である。

西方 夏子
電機メーカーにて組み込みソフトウェアの開発に携わったのち、夫の海外赴任に帯同して5年半ほどドイツで暮らす。2012年に同地で長女を出産後、日本に帰国。現在はフリーでiOSアプリの開発や書籍の執筆を行う。

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