これはヘリウムのプラズマ。温度は100万度に達しているという。12月10日、ドイツの『ウェンデルシュタイン7-X核融合炉』で撮影されたものだ。施設が組み上がったのが2014年4月。
その後1年を超える技術的な準備とテストを終えて、ステラレータータイプとしては世界最大の核融合炉で実験が始まったのだ。
核融合は未来のエネルギー源?
とはいえ、実はまだ核融合反応にまでは達していないようだ。核融合が起こるには1億度もの高温を実現することが必要だという。
ご存じの方も多いと思うが、核融合は未来のエネルギー源として研究されている技術だ。核融合というのは核反応の一種だが、現在原子力発電で用いられている核分裂とは違い、軽い原子がくっつくことでエネルギーを出す。
核融合は、発生する放射性物質が少なく、また原理的に暴走することがなく、燃料は無尽蔵に入手可能だといわれていて、“未来のエネルギー源”として期待されている。
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ただし、実現が非常にむずかしいのだ。地上で核融合反応を起こすためには1億度もの高温が必要になる。そんな温度に耐えられる容器は存在しない。
しかし、その状態では物質はプラズマ状態(電荷を帯びたガス)になる。強力な磁場を形成することができれば、その超高温のプラズマを、核融合炉の中心に封じ込めておくことができる。
そうやって核融合を起こすのだ。
「ステラレーター式」で世界最大の核融合炉
核融合炉の方式としては、2つのタイプがポピュラーだそうだ。ひとつは『トカマク式』と呼ばれるもの。もうひとつは『ステラレーター式』と呼ばれるもの。
この『ウェンデルシュタイン7-X核融合炉』は、その『ステラレーター式』のなかで現在世界最大のものだ。もちろん、まだ実験用にすぎず、これをエネルギー供給に使おうというものではない。
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現在、国際的な協力のもとに建設中のITERと呼ばれる『トカマク式』反応炉が注目されているが、この『ウェンデルシュタイン7-X核融合炉』は、『ステラレーター式』の可能性を探るための実験炉だ。
現時点では『ステラレーター式』は連続運転の能力で優位性があると考えられている。『トカマク式』は補助装備がないと、一瞬しか作動させられないのに対し、『ステラレーター式』は30分間の連続運転が可能だと見込まれている。
この『ウェンデルスタイン7-X核融合炉』の組み立てが始まったのは2005年の4月だという。3.5mにもなる50個の超電導コイルがこの装置のキーとなる部分だ。
そのコイルで協力な磁場を作り出し、高温のプラズマを容器の中心近辺に閉じ込めておくのである。いっぽうでその超電導コイルは、液体ヘリウムを使って低温に冷やし続けないといけない。
この核融合炉で作られたプラズマは約0.1秒間持続し、約100万度の高温を実現した。
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次の目標は、プラズマ放電の時間をさらにのばし、マイクロ波を使ってヘリウムプラズマを生み出す効果的な方法を探し出すことだ。
そして来年は水素からプラズマを生み出す研究の準備にとりかかるという。
原子力(核分裂)でさえとてつもない技術だが、核融合はさらに難度の高い技術だ。
まさに太陽で起きている現象と、同じことをこの地上で作り出そうというのである。
核分裂よりずっと安全だとはいわれているが、装置のおどろおどろしさもあいまって、どことなく怖さも感じる。
核融合は人間の未来のエネルギー源となりえるのだろうか?
【参考・画像】
※Max Planck Institute for Plasma Physics – IPP
【動画】
※Wendelstein 7-X: The first helium plasma – YouTube