今年ももう残すところわずか。
12月はイベントごとが続いたが、友人たちとのイベントとして、クリスマス会に母娘で参加してきた。共通の趣味を持つ仲間たちと不定期で開いている集まりがあり、昨年からはクリスマス会を開催している。
昨年、第1回を開催するにあたって、子どもを連れてくるのにレストランだと気を使ってくつろげないだろうからと、幹事役の友人が、貸切できるキッチン付きスペースを予約してくれたのが好評で、今年もまた同じようなキッチンスタジオを会場に、食べ物を持ち寄ったり、そこで料理やケーキを作ったり、懐かしのプレゼント交換を楽しんだ。
会に集まったのは総勢15名ほどで、子連れで参加したのは私を含め2名のみ。
スタートもエンドもゆるく設定された集まりなので、参加者も入れ替わり立ち替わりだったのだが、皆一様に子どもと気さくに触れ合ってくれ、娘は私が構わなくても終始ご機嫌で過ごしていた。
和やかで楽しい会を後にして毎回感じるのは、皆優しいな、嬉しいな、という気持ち以上に、子どもがこわくないんだな、自然に接することができるんだな、ということだ。
子どもの扱いに慣れているというのとはまた違って、子どもが泣いてしまったときにカラダを張って笑わせようとしてくれたり、大人同士で集まっているときのテンションそのままで子どもとも向き合ってくれて、さらに子連れでの参加を歓迎してくれることに、親としては少しの驚きとその何倍もの安堵を感じるのだった。
自分が親になるまで子どもが苦手だった、という人は男女問わず結構多い。
筆者もそのひとりで、子どもは苦手で、そもそも触れ合ったこともほとんどなかったので、どう接していいものなのかよく分からなかった。
周囲は晩婚の傾向が強かったし、年の近い親戚もいない。早く結婚して子どもができた友人は遠方に住んでいるので、会う機会も滅多にない。もっと言うと、友人に子どもが生まれても積極的に会いに行こうという気持ちがあまりなかった。
子どもができるとあっという間に皆「母親」「父親」の顔になり、話すことも子どものことばかりで共通の話題がなくなり、会ってもあまり楽しくないんだろうなと思い込んでいたフシがある。
ありもしない壁を自分と友人の間に作って、自分はこっち側の人間、向こうはあっち側の人間、みたいに捉えていたのだろうか、随分頑なな態度を取っていたものだと思うのだが、とにかくそのときの自分は無知だった。
そんなだから子どもに対する免疫のなさが産後にまんまと発揮されてしまい、泣かれるたびに慌てふためいて、「お願い……泣かないで……」「嫌だ……自分の子どもなのにこわい……」と耳をふさぎそうになっていた。
初めての子育てだから無理もないが、あまりの生活の変化に心がついていけず、自分が自分でなくなっていくような錯覚も覚えた。
そんなパニック状態を、「赤ちゃん見に行ってもいい〜?」と声をかけてくれた友人たちが救ってくれた。
友人たちは純粋に赤ちゃんを見たいのであって、私の様子がどう、ということはあまり意識していなかったように思うが、必要以上に気を使われないということがかえってこちらにはありがたかった。
夫婦と赤ちゃん、そして手伝いに来ている家族だけ、という構図はどうしても行き詰まってしまうものだ。当事者しかいない場面ではピリピリしてしまうのも仕方なく、私も家族に当たったり泣いたりで忙しかったが、第三者が介入することで空気が一気に和むというか、緩衝剤になってくれるというか、何となく場が持つようになった。
内容はもうすっかり忘れたが、そのとき何気なく一緒に見たテレビ番組や、「一緒に食べようと思って」と持ってきてくれたお菓子が、後々心に残る思い出のワンシーンになった。
くだらないことで笑ってもいいんだな、と当たり前のことを取り戻せたのも、友人たちの訪問があったからだ。
また別の友人である先輩ママが、手作りのおかずをタッパーに入れて大量に持ってきてくれたこともあった。
産後1ヵ月ほどのまだ慌しい時期に、夫が数日家を空ける予定が入り、買い出しにも行けない。まだろくに台所にも立てそうにもない窮地を察して友人が訪ねてきてくれたのだ。
「子育てを始めたときに自分がしてほしかったことを今やっているの。だからもちろんあなたのためにやっていることだけど、自分のためでもあるんだよ」と語っていた友人の言葉の意味が、今となってはよく分かる。
だから私も自分がしてほしかったことや、自分がしてもらって嬉しかったことを、同じように返していきたいなという心境だ。
そして、産前にしてこなかったことで悔いている、「友人の赤ちゃんに会う」ということをこれからはやっていこうと思っている。
クリスマス会で集まったメンバーは、私より10ほども年下の子もいるので、彼女たちにとってどれほど妊娠出産が身近な話題なのかは分からない。
娘は「人見知りしないんですね〜」なんて言われたりもしたが、それはあなたたちが温かく、そしてあくまでも普通に接してくれるおかげだよ、というのが本心だ。
自分が20代半ばのときは、子どもがいる人なんてまったく違うコミュニティなのだと思っていた。それがこんなふうに、一緒に集まってクリスマス会なんてしていたら、もう少しは意識が違っていただろうか。
いくら振り返ったところで私の過去は変わらないので、いつか彼女たちがママになるときが来たら、世話焼きおばさんとしてお邪魔しにいこうかなと目論んでいる。
先輩ママなんて大げさな存在じゃなくていいから、ちょこっと食べ物を持っていったり、お手伝いができたら本望だ。
いや、ママになるときじゃなくてもいい。
親の介護という可能性もあるし、本人が体調を崩したり、病に倒れるようなときがあるかもしれない。今までとは違う生活を余儀なくされることは誰にだってあるだろうし、直面している身としては、ひどく疲れたり、孤独を感じたり、不安になるものだ。
そんなときに、「家族じゃないから」と遠慮するのではなく、一歩踏み込んでみたい。でも、踏み出せるだろうか……。
ただ、子育ての核になるものは家族かもしれないけど、家族じゃなくてもできること、手伝えることはいくらでもある。それも十分な「つながり」なんじゃないかなと、来年以降は世話焼きおばさんを目指していこうと考えている。
真貝 友香(しんがい ゆか)ソフトウェア開発職、携帯向け音楽配信事業にて社内SEを経験した後、マーケティング業務に従事。高校生からOLまで女性をターゲットにしたリサーチをメインに調査・分析業務を行う。現在は夫・2012年12月生まれの娘と都内在住。