およそ3万人を対象とした大規模調査より
画像はリリースより慢性的な高血糖が特徴の糖尿病患者では、がんになるリスクが約1.2倍高いことが研究でわかっています。血中の「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」の値が6.5%以上というのが、糖尿病診断基準のひとつであることを考えると、HbA1cはがんリスクと関連すると推測されます。
ところがこれまで、HbA1cの血中値とがんリスクの関連を明らかにする研究は行われていませんでした。そこで、国立がん研究センターの研究グループは、糖尿病検査に協力した全国2万9,629人を対象に、HbA1cとがんリスクについて追跡調査を行いました。
調査では、対象者の年齢や性別、肥満度指数(BMI)、喫煙歴、飲酒歴、身体活動、野菜窃取、総エネルギー摂取、コーヒー摂取、および心血管疾患の既往などを統計学に基づいて調整したうえで、がんリスクを計算。HbA1c値とがんリスクの関連を見ました。
HbA1cが低すぎてもがんリスクが上昇という結果に
すると、HbA1c値が5.0〜5.4%の人のがんリスクを「1」とした場合、糖尿病診断の目安となる6.5%以上では1.43と、リスクが高くなることがわかりました。5.5〜5.9%では1.28、6.0〜6.4%では1.43、既知の糖尿病(糖尿病の治療歴がある人)では1.23と、糖尿病であるかどうかにかかわらず、HbA1c値が高い人は、がんリスクが高まることが明らかになったのです。その理由としては、高血糖が酸化ストレスを亢進させることでDNAを損傷し、発がんにつながる可能性があることが挙げられています。
さらに意外な結果が。通常よりも血糖値が低い5.0%以下でも1.27とがんリスクの上昇が見られたのです。肝硬変などでは、実際の血糖値に比べてHbA1cが低値を示すことが多く、肝硬変は肝がんになりやすい状態のため、結果として血糖値が低い人で、肝がんリスクが上昇していた可能性が考えられるといいます。
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がん細胞の増殖には大量の糖を必要とするため、慢性的な高血糖状態はがん細胞の増殖を助長する可能性も想定されています。いずれにしても、糖尿病予防は、がん予防にもつながる可能性があることが示されました。お医者さんに「糖尿病の一歩手前」といわれた経験のある方は、改めて現在の血糖値を調べてみてはいかがでしょうか。(林 渉和子)
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