確実な治療法がなかった急性腎不全にタンパク質「AIM」が有効か

1

2016年01月22日 12:00  QLife(キューライフ)

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

QLife(キューライフ)

自然に治る可能性がある一方、致死率も高い急性腎不全

画像はリリースより

 血液中の老廃物をろ過し、尿として排泄する腎臓。この腎機能が低下すると血液中に老廃物が溜まり、他の臓器に支障をきたします。腎機能の低下が急速に起きるのが急性腎不全。自然に改善する場合もありますが、致死率も高く確実な治療法も確立されていません。

 今回、東京大学大学院の宮崎徹教授らの研究グループは、マウスを使った実験で「AIM」と呼ばれる血液中のタンパク質が腎臓に作用して、急性腎不全を治癒させるメカニズムを明らかにしました。AIMはヒトにも同じ作用をするので、ヒトにも有効と考えられるといいます。

 急性腎不全は、腎臓内の尿の通り道に細胞の死骸であるゴミが詰まって発生します。この状態の改善のために働くのが血液中のAIMです。血液中のAIMが尿の中に移動してゴミに付着。その付着したAIMが目印となり、周囲の細胞が一斉にゴミを掃除し、詰まりを解消するのです。

60〜100%だった致死率が0%に低下

 研究グループでは、このAIMを持たないマウスが急性腎不全になると、腎機能が悪化を続け多くが死んでしまうことを明らかにしました。また、AIMを正常に持つマウスであっても急性腎不全になると、腎臓内の詰まりが十分解消されず、多くが死んでしまいます。

 そこで、AIMを静脈注射するとゴミが掃除され、腎機能が改善し、60〜100%だった致死率が0%に低下しました。血中のAIMの尿への移動とゴミへの付着は、ヒトでも同様に観察されるため、ヒトの急性腎不全患者に対してもAIM投与による治療は有効である、と研究グループは推測しています。

 この研究結果により、確実な治療法のなかった急性腎不全がAIM投与で治療可能になると期待されます。また、定期的に投与して腎臓内のゴミを掃除することで、急性腎不全の再発や慢性化のリスクを防ぐことも可能と考えられます。この成果を活用した治療法のいち早い確立が待たれます。(林 渉和子)

関連リンク

⇒元の記事を読む

    ランキングライフスタイル

    前日のランキングへ

    ニュース設定