シリーズ「正しく知る“がん治療”」(6)患者さんとのQ&A

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2016年01月29日 18:00  QLife(キューライフ)

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「正しく知る“がん治療”」(6)患者さんとのQ&A

 日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科医の勝俣範之先生に“がん治療の正しい姿”について聞く全6回シリーズ。最終回は患者さんから寄せられた質問に答えます。(第1回 非常に極論な「がん放置療法」はこちらから

(この記事は、2015年12月12日に開催された認定NPO法人「オレンジティ」での勝俣先生の講演内容をもとに、QLife編集部が一部再構成しています)

Q.「抗がん剤は効かない」という内容の本を読んだのですが

A. 抗がん剤がすべての人に効果がない、というわけではありません。抗がん剤の効果は、がんの種類、ステージ、全身状態、個々の患者さんの生活の状況によっても、メリットやデメリットは大きく異なってきます。よく主治医とご相談されることを勧めます。

Q.抗がん剤の副作用があまりないので、効果があるかどうか不安です。

A. 抗がん剤の副作用と効果は、関係がありません。副作用というのは、正常細胞に対する作用なので、あまり関係がないのです。副作用がないならばない方がいいし、あっても対処できる治療法があります。

Q.がんが悪化しないように、玄米を食べ、肉を食べるのを止めています。

A. 玄米や、菜食主義が、がんに対して治療効果があることは科学的に全く根拠がありません。
食事については、がんの予防には多少効果があると言われていますが、がん患者さんに対しての治療的効果は実はありません。がん細胞は相当強力で、ちょっとやそっとじゃ死にません。強力な抗がん剤をやって、初めてちょっと死ぬぐらいだから、玄米を食べたくらいでは、がんはびくともしないんですね。だから、生活の質を考えるためには、美味しいものを食べた方がずっと元気になります。

Q.抗がん剤のあいだは、生もの(野菜・くだもの・刺身など)を避けるように言われました。

A. 血液がん以外での抗がん剤治療中は、生ものを食べても影響はありません。

Q.副作用がきついのですが、治療を続けたいのでがまんしてみようと思います。

A. 生活の質を保つことも大切なことです。何らかの対処方法が必ずありますので、主治医に遠慮せずに聞いてみましょう。

Q.免疫細胞療法で、抗がん剤の副作用が減り、効果も高まり、1回200万円だと言われましたが、受けようと思います。

A. 免疫細胞療法でそのような効果が証明された治療は存在しません。効果のある治療でしたら、保険適応になるのが当然です。弱みにつけこんだ詐欺的な治療の可能性があるので気をつけましょう。

Q.もう治療法がないと言われました。

A. 抗がん剤は、使う場面によっては、かえって命を縮めてしまうようなこともあります。「治療がなくなる」ということはありません。緩和療法・緩和ケアは、生活の質を高める治療法の1つと考えてよいと思います。

Q.余命6か月と言われました。

A. 医者が言う余命は、不確かなデータです。その数字にとらわれないようにしましょう。最善を期待し、最悪に備える、ということが大切だと思います。

最後に、アメリカの乳がんの患者さんが作ったと言われている詩をご紹介します。がんになりますと、いろんな制限を受けますが、がんが出来ないことも多いのではないか、という詩です。

「がんが出来ないこと」(作者不詳)

 がんは、出来ないことが多い
 がんは、愛を奪うことはできない
 がんは、希望を失くすことはできない
 がんは、信頼を弱くすることはできない
 がんは、平和を浸食することはできない
 がんは、自信を壊すことはできない
 がんは、友情を壊すことはできない
 がんは、記憶を失わせることはできない
 がんは、勇気を弱くすることはできない
 がんは、永遠の命を短くすることはできない
 がんは、魂を消すことはできない

(終わり)

勝俣範之先生 日本医科大学 武蔵小杉病院 腫瘍内科教授
1963年、山梨県富士吉田市生まれ。1988年、富山医科薬科大学医学部卒業。1992年より国立がんセンター中央病院内科レジデント。1997年、国立がんセンター中央病院内科スタッフ。2004年、ハーバード大学生物統計学教室に短期留学。2010年、国立がん研究センター医長。2011年より、日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授として赴任。腫瘍内科を立ち上げ、今日に至る。専門は、内科腫瘍学全般、抗がん剤の支持療法、臨床試験、EBM、がんサバイバー支援など。 著書:医療否定本の嘘(扶桑社)、「抗がん剤は効かない」の罪(毎日新聞社)、ほか。
ブログでも情報発信中(http://nkatsuma.blog.fc2.com/)。

取材協力:認定NPO法人オレンジティ 認定NPO法人オレンジティは、女性特有のがん(子宮・卵巣・乳がん)体験者とその家族、支援者とともに活動を通じてよりよい人生を送るためのお手伝いをする、セルフヘルプグループ。2002年から静岡県を中心に活動をつづけており、患者力アップのための定例会、体験者同士が互いの体験・情報を分かち合うおしゃべりルームなどを通じて、体験者のサポートを行っています。お問い合わせは、オレンジティホームページ(http://o-tea.org/)から。

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