東日本大震災から学ぶ感染症危機管理の重要性〜地域社会を感染症から守るために

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2016年03月10日 19:00  QLife(キューライフ)

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災害時における感染症予防のポイントとは

東北大学大学院 医学系研究科内科病態学講座 総合感染症学分野教授 賀来満夫先生

 東日本大震災では、避難所を中心に感染症を防ぐ様々な取り組みが行われました。震災から5年、こうした活動から得たものを日常の感染症対策にどう活かすかが求められています。ムンディファーマ株式会社は、「感染症危機管理の重要性〜3.11の事例に学ぶ」と題し、都内でメディアセミナーを開催。

 総合感染症対策研究の第一人者である東北大学大学院 医学系研究科内科病態学講座 総合感染症学分野教授の賀来満夫先生は、東日本大震災で宮城県の気仙沼から南三陸、女川など30か所以上の避難所を巡回した当時の状況から、「震災発生後1週間までは外傷、1週目以降は感染症リスクが増大しました」と語りました。その第1フェーズでは、破傷風やレジオネラ肺炎のほか、インフルエンザやノロウイルス、はしかなどの感染リスクが増大。なかでも破傷風発症者はすべて50代以上だったとデータを示し、50歳以上の人は破傷風予防のトキソイドワクチンの接種が勧められると賀来先生。

 第2フェーズでは、自身の口腔内の菌などによる誤嚥性肺炎や2次性の細菌性肺炎などが起こりやすく、避難所では栄養状態の悪化や寒さなどによる体力の低下、口腔ケアが十分にできないことなどから、これらの感染を起こしやすい状態になってしまうといいます。

 今後、東南海や関東で地震があった時も、必ず同じようなことが再現されると警鐘を鳴らし、「災害時の感染症対策としてどんなことに注意し、何をしなければならないのかを知ってほしい」と賀来先生。

 続いて、同大学院 助教の吉田眞紀子先生が、疫学情報をリスクアセスメントし、どのように活用して感染症対策につなげているか事例を紹介。感染症対策として、環境衛生管理とともに、「手洗いやマスク、飛沫を飛ばさない咳エチケットなど、基本的なことを総合的に実践し、感染のリスクをできるだけ下げていくことが重要です」と語りました。

グローバル化、ボーダレス化している感染症にどう立ち向かうか

 WHOは「もはやどの国も安全ではない」と、地球規模での感染症の危機について警告を発していますが、2009年のインフルエンザ・パンデミックや一昨年はエボラ出血熱が大流行し、感染症対策をリードしてきたアメリカで2次感染が起こったニュースは世界に衝撃を与えました。ほかにも韓国でのMERSの拡がり、薬剤耐性菌のアウトブレイクなど、人の交流、交通のグローバル化により、感染症は世界中に拡大しています。

 賀来先生は、感染症は個人にとどまらず、地域を越え伝播拡大していく“すべての壁を超える病気”であり、社会全体の危機になりえるといいます。だからこそ、「医療従事者や行政だけでなく、専門学会とともに、広く市民やメディアとを結ぶ“感染症危機管理ソシアル(社会)ネットワーク”の構築が強く望まれます」と、一体となって対応していく必要性を訴え、締めくくりました。(QLife編集部)

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