治療法があるのはまだ5%以下、希少・難治性疾患の治療法開発に必要なものは?

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2016年03月18日 14:00  QLife(キューライフ)

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QLife(キューライフ)

毎年2月末日の「世界希少・難治性疾患の日」にちなみ

登壇した瀬尾亨氏(左)と中村治雅先生

 約7,000あると言われる希少・難治性疾患。全体の三分の二以上が遺伝性の疾患であり、50%はがんです。診断が難しく、診断確定までの期間は平均8年、平均で10人の医師にかかるという報告も。患者数は、全世界で3〜4億人、日本国内では700万人と言われていますが、そのうち治療法があるのはまだ5%以下と、患者に大きな負担がかかっているのが現状です。そんな希少・難治性疾患患者のQOL向上を目指すため、2008年からスウェーデンで始められた社会啓発活動が、毎年2月末日に制定された「世界希少・難治性疾患の日(Rare Disease Day : RDD)」です。

 ファイザー株式会社では、世界希少・難治性疾患の日にちなみ、都内でセミナーを開催。Pfizer Inc. ワールドワイドR&D External R&D Innovation ジャパン統括部長の瀬尾亨氏と、国立精神・神経医療研究センター 臨床研究支援室長の中村治雅先生が登壇し、希少・難治性疾患治療薬の開発に向けた取り組みについて講演しました。

 「希少・難治性疾患は患者数が少なく、発症する臓器やメカニズムも多岐・多様なため、製薬会社一社だけでの創薬の研究開発が難しい」と、話す瀬尾氏は、ファイザー社の希少・難治性疾患への取り組みを紹介。実際のケーススタディをまじえ、同社が多くの患者(支援)団体や企業、研究機関と協力して研究開発にあたっていること、希少・難治性疾患治療薬開発には、患者や患者支援団体の協力が特に重要であり、彼らがキーパーソンであることを強調しました。

 「希少・難治性疾患の治療は、多くのステークホルダー(利害関係者)が連携してはじめて可能となるものであり、製薬企業、大学、患者(支援)団体、自治体などのコミュニティで行う必要があります。希少・難治性疾患の薬剤は、(症状改善の治療であり、根治治療には至っていないなど)まだ改善が必要であり、ファイザーもこれから多くの患者に薬を提供できるようコミットしていきたい」(瀬尾氏)

「患者レジストリー」の構築が治療法開発を後押しする

 続いて登壇した中村先生は、国内での希少・難治性疾患治療薬開発に対する取組みについて講演しました。現在、遺伝性神経・筋疾患の領域で病態の解明や新しい治療法についての研究開発が著しく進んでいます。しかし、治療法や治療薬を臨床で応用するためには、患者を対象とした臨床試験や治験が必要であり、患者数が少ない希少疾患では対象となる患者を集めることが困難です。

 そうした課題克服のため、国際的に進められているのが、患者の遺伝情報や臨床情報などを登録する患者レジストリーです。医学情報登録や、疾患登録とも呼ばれています。日本でも患者レジストリー構築は進められており、中村先生は、自らが携わった筋ジストロフィーの患者レジストリー『神経・筋疾患患者登録センター(Remudy : レムディ)』を紹介しました。

 Remudyはジストロフィノパチー(ジストロフィン異常による筋ジストロフィー)患者のための患者レジストリーです。現在の患者登録数は約1,400人。登録された患者情報は匿名化され、臨床試験・治験を実施したい研究者や製薬関連企業に提供されます。情報登録した患者は、Remudyを通じて臨床試験・治験に関する情報や、疾患に関する最新情報をオンタイムで受け取ることができます。さらにRemudyは、海外の疾患研究者ネットワークにも情報開示を行い、国内だけではなく海外の治験への参加窓口としても機能しています。

 Remudyの活用により、「疾患情報の把握や、臨床試験が実施可能かどうかの検討、患者のリクルート、自然歴調査、臨床実験の対照群、薬の発売後の調査などが可能になりました」と、中村先生。「また、我々の強みは、筋ジストロフィー臨床試験ネットワークを持っていること。患者レジストリーと医療施設を繋ぐネットワークを融合することで、治験を早く進める枠組みができることです」(中村先生)

 現在、国は希少・難治性疾患の発症メカニズムや診断、治療法についての研究調査を推進し、治療法開発に向けた研究やデータベース構築を進めています。今後、こうした患者レジストリーの活用で、疾患研究や治療法開発、創薬がより推進することが期待されます。(QLife編集部)

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