がん予防の特集の中でよく引き合いに出されるのはアンジェリーナ・ジョリーが乳がん予防のために乳房を摘出したというニュースです。
そもそも、なぜアンジーはこんな思い切った行動に至ったのでしょうか?(本稿はゲノム・パーソナル医療関連検査を提供するG-TAC株式会社「トピックス」からの転載記事です)
⇒アンジェリーナ・ジョリーが受けたBRCA遺伝子検査は日本で受けられるか?【後編】<G-TAC>はこちらから
アンジェリーナ・ジョリー、予防的乳房切除術の衝撃
2013年、アメリカの女優アンジェリーナ・ジョリーが予防的に両乳房を切除したニュースは、日本でも報道され人々に衝撃を与えた。
彼女の母親は卵巣がんで56歳の時に亡くなっているが、その母親は医師に「娘の卵巣摘出手術をするよう約束して」と告げていたという噂がある。アンジェリーナの祖母や叔母も40歳代にがんで亡くなっており、娘も同じ病気になることを心配してこのような発言をしたとされる。母親の死後、母の言葉を医師から聞いたアンジェリーナは予防的に手術を受けることを決意した。
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しかし、もう1つアンジェリーナが予防的切除を決断した大事な理由がある。それはアンジェリーナが受けた「遺伝子検査」。アンジェリーナの結果は乳がんのリスクが87%、卵巣がんのリスクが50%とがんの発症リスクが高いことを示す結果だった。「遺伝子検査」といったらアンジェリーナ・ジョリー、と連想する人も少なくはないだろう。
乳房切除に続いて、卵巣・卵管切除術も発表
その後アンジェリーナは2015年に卵巣・卵管の切除手術を受けたことを公表。そして同じようなリスクを抱えた女性に向けて情報を共有したいと考えたアンジェリーナは、手術後に更年期の症状が現れていることや、今後肉体的な変化が起きるだろうと発表している。
乳房切除術を受けたアンジェリーナが乳がんにかかるリスクは87%から5%以下まで減少したと言われている。
夫であるブラッド・ピットはアンジェリーナの決断について、「彼女は子供たちのため、家族のために手術を受けたんだ。一緒に生きていけるようにね。」と語り、彼女の考えを支持していると公表している。
アンジェリーナが受けたBRCA遺伝子検査とは
がんは細胞がコントロールを受けずに分裂・増殖を行うことで発症する。正常な細胞は核の中にある遺伝子のプログラムに従ってコントロールされ、傷ついたり不要になった細胞は自己修復、もしくは細胞死を迎えることで体への影響を最小限にとどめている。
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しかし、そのプログラムを持つ遺伝子そのものに異常があると、異常な細胞のまま分裂増殖し、がんとなってしまうのである。
アンジェリーナが受けた遺伝子検査はBRCAという遺伝子の異常を調べる検査だ。BRCA遺伝子はDNAについた傷を修復して、がんの発症を抑制する遺伝子である。現在、乳がんと関連しているとわかっているのはBRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子とされている。
この遺伝子に異常があっても、すべての人ががんを発症するわけではないが、異常があった場合の乳がんの発症リスクは異常がない人と比較して10倍前後といわれている。
また、異常なBRCA遺伝子は50%の確率で親から子に遺伝する。アンジェリーナに見つかった異常はBRCA1遺伝子であった。BRCA1遺伝子の場合、若い年齢で乳がんを発症する可能性が高く、しかも治療が難しい。さらに10年以内のがん再発も多いことがわかっている。
男性でもこの遺伝子の異常を持つ確率は同じである。男性の場合は膵臓がんや前立腺がんのリスクが上がることがわかっている。(⇒アンジェリーナ・ジョリーが受けたBRCA遺伝子検査は日本で受けられるか?【後編】<G-TAC>はこちらから)
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関連リンク
参考リンク
- アンジー&ブラピ夫妻、がん予防の手術についてTVインタビューで語る
http://www.cinemacafe.net/article/2015/11/04/35387.html - アンジェリーナ・ジョリー、卵巣と卵管の切除手術を受けたことを公表
http://www.cinemacafe.net/article/2015/03/24/30187.html - アンジェリーナ・ジョリーが受けた「予防的乳房切除」とは何か?
http://wired.jp/2013/05/29/breastcancer/ - なぜアンジェリーナ・ジョリーは乳房・卵巣の摘出手術を決断したのか?
http://healthcare.itmedia.co.jp/hc/articles/1506/26/news029.html - 遺伝性乳がんの「予防的」摘出手術は日本でも可能か?
http://healthcare.itmedia.co.jp/hc/articles/1507/09/news025.html - 海外の遺伝性乳がんの治療事情
http://healthcare.itmedia.co.jp/hc/articles/1507/31/news018.html