放っておくと怖い遺伝性血管性浮腫「HAE」。急な「腫れ」がサイン

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2016年05月09日 18:10  QLife(キューライフ)

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喉の腫れで呼吸困難に、時には死に至ることも

HAE情報センター顧問 大井洋之先生

 HAE(遺伝性血管性浮腫)は皮膚や喉、お腹(腸)など、身体のさまざまな場所に腫れが起こる病気で、国が定める指定難病「原発性免疫不全症候群」に含まれています。5万人に1人が発症するという極めて稀な病気で、一般の人たちの間ではもちろん、医療従事者の間でもその認知度が低いという課題があります。

 この現状を改善するため、HAEの認知度向上を目指すプレスセミナーをCSLベーリング株式会社が開催。HAEの患者さんや家族に向けた情報サイト「HAE情報センター」の顧問を務める大井洋之先生と、HAE患者会であるNPO法人HAEジャパンの山本ベバリーアン理事長が講演しました。

 HAEは、遺伝子の変異によって補体成分C1インヒビター(C1-INH)が欠損し、皮膚や喉、腸など、身体中のあらゆる箇所に繰り返し腫れが起こります。特に喉が腫れてしまった場合は、気道がふさがれて呼吸困難に陥ることがあり、命に関わる可能性もある病です。「むくみが起こる頻度が多いのは、まぶたや唇など体表面なのですが、咽頭部(喉)に出現すると大変危険です。そのまま放置すると30%の方は亡くなってしまうという報告がなされています」(大井先生)

救命救急の現場、HAEを知っているのは5割以下

 遺伝子の変異が原因であるHAEは、常染色体の優性遺伝と考えられており、75%常染色体優性遺伝によるもの、25%が遺伝子の新たな変異による弧発例と言われています。遺伝性の病気というとなんだか怖い気がしますが、正しく治療が行われれば、最悪の事態を免れることもできる病気です。

 しかし、残念なことにその認知率は、医療従事者の間でも低いようです。2002年に全国の救命救急センター142施設を対象に行われたアンケート調査では、回答した81施設のうち、HAEを知っていたのは36施設(44%)。2008年には、さらに大規模な調査が行われ、4,490人が回答しましたが、HAEを知っている人は2,013人(44.8%)とやはり半数に届かない割合でした。「2002年に救命救急を対象としたアンケートを行ったので、救命救急の先生方はご存じだろうと思っていましたが、41.3%にとどまりました。かなり強く啓発活動しなければ、なかなか認知していただけないなぁと感じました」(大井先生)

 こうした経験から大井先生は多くの学会で講演を行ったり、プレスセミナーを開催したり、本の出版を行ったとのこと。大井先生は、「啓発活動を行う前はわずか四十数名だったのが、現在では413人の患者さんがHAEと診断されています」と、疾患の認知が高まるにつれ、これまで見逃されていた患者さんが正しく診断されつつあることを紹介しました。

山本ベバリーアンHAEJ理事長「いつもそばに大きな病院があったのに」

HAEジャパン理事長 山本ベバリーアンさん

 HAEの認知度向上のため、患者さんたちも活動の輪を広めています。2014年には患者会であるNPO法人「HAEJ」(エイチエーイージェイ)が誕生。疾患啓発活動と的確な診断・治療が受けられる環境づくりを目指した活動を行っています。

 同会理事長でご自身もHAEの患者である山本ベバリーアンさんは「12歳ごろからお腹が痛くなったりするHAEの症状が出ていました。私はロンドン出身で、日本に来てからも神戸や大阪に住んでいます。いつもそばに大きな病院があったのに診断は遅れ、ようやく4年前(52歳の時)に診断がつきました」とHAEとわかるまで、非常に長い歳月を要したことを明かしました。

 診断がつくまでの間、浮腫がまったく起こらない週がほとんどないほどで、日常生活に多大な影響を与えていたうえ、時には入院が必要なこともあったそうです。2012年、ようやく診断がつくと「HAEと診断がついた後は、仕事ができない日や入院することがほとんどなくなり、安心することができました」と山本さん。正しい診断・治療が行われることの重要性を語りました。

 現在、およそ400人の患者さんが確認されているHAE。しかし、5万人に1人という発症率から考えると、日本にはまだ2,000人前後の患者さんがいると推定されます。1人でも多い患者さんが1日も早く適切な治療を受けるため、今回のプレスセミナーや医療従事者への啓発活動、患者会の取り組みによるHAEの認知度向上が期待されます。(QLife編集部)

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