脳波検査のデジタル記録が可能となり、研究が進む「てんかん」
画像はリリースより脳の神経が異常に興奮してしまうことで、けいれんやひきつりなどの症状が起こる「てんかん」は、1回だけではなく、繰り返すという特徴がある脳の疾患です。患者数は、人口1,000人に対して4〜9人といわれており、決して珍しい病気ではありません。近年では、主要検査の1つ、脳波検査のデジタル記録が可能となり、病態解明に向けたさまざまな研究が行われています。
大阪大学の研究グループは、てんかん発作時の脳波に「カップリング」という現象が現れることを世界で初めて検出。英国の科学誌「Scientific Reports」に論文が掲載されました。
カップリング現象とは、異なった周波数の脳波が相互に関連性を持って活動することです。同研究グループでは、この現象が脳内情報処理の重要な機能を担っているといち早く注目し、研究を進めてきました。
発作予知など新たな治療への発展に期待
今回の研究は、治療目的で記録された難治性側頭葉てんかんの患者の脳波をもとに行われました。発作時と安静時の脳波にどの程度のカップリングが見られるかを計算し、比較。患者の脳表に直接電極を置き、得られた高精度脳波のカップリングを測定することで、極めて正確に発作が起きている状態を検出することが可能であるとわかりました。
その結果、発作時は安静時よりも明らかに強くなったカップリングを確認。特に、β波(13〜25Hz)の位相と、highγ波(80〜15Hz)の振幅での組み合わせで、この傾向が強く見られました。低い周波数の位相と高い周波数の振幅の関係に注目することで、従来よりも正確に発作を捉えられるということが示されたといいます。
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今回の研究では、カップリングを用いることで、高い精度でてんかん発作を検出することに世界で初めて成功しました。将来的には、入院中、長時間の脳波測定中に正確に発作時を検出し、医療スタッフへ知らせるといったことや、埋め込み型の機器などにより、日常生活の中で発作が起こるのを早期に患者本人に知らせる「発作予知」など、患者やその家族にとっても有益な治療につながることが期待されています。(菊地 香織)
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