「妊娠高血圧腎症」を再現する動物モデルの作成に成功

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2016年05月31日 12:00  QLife(キューライフ)

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QLife(キューライフ)

有効な治療法が確立されていない妊娠高血圧腎症

画像はリリースより

 「妊娠中毒症」という言葉を聞いたことがある人も多いかもしれません。かつては妊娠にともなって高血圧や蛋白尿などの症状が見られる場合、このように呼ばれていました。現在では、症状が高血圧のみの場合は「妊娠高血圧症」、高血圧と蛋白尿が認められる場合は「妊娠高血圧腎症」と分類されています。

 妊娠高血圧腎症は、国内では毎年約2万人が発症します。脳出血などによる母体の死亡、胎児死亡、未熟児の発生といった影響をもたらしますが、主な原因については胎盤の血流不足による血管内皮障害にあると考えられているものの、詳細については不明とされています。また、病態が不明なため、現状では有効な治療法が確立されていないのが実情です。

 降圧薬を用いた薬物治療は行われていますが、降圧薬には胎児に奇形の危険が及ぶなどの理由から、妊婦への使用が禁忌なものが多く、投与可能な降圧薬であっても、血管内皮障害を改善しないため、降圧により胎児の血流がさらに減少し、胎児の生命に危険が及ぶことがあり、妊娠の中断が必要になるケースもあります。

妊娠高血圧腎症の予防や治療手段の開発に期待

 このように、妊娠高血圧腎症の病態が不明で有効な薬物療法が確立していない理由として、ヒトの妊娠高血圧腎症を再現できる動物モデルがなかったため、研究の進展が遅いことが考えられていました。そこで、東北大学の高橋信行准教授らのグループは、ヒトの妊娠高血圧腎症を忠実に再現できるモデルマウスを確立しました。

 この研究は、東北大学医学系研究科、および東北大学流体科学研究所との共同で行われました。妊娠中期から後期に、子宮に至る動静脈をナイロン糸とともに縫合糸でしばり、その後にナイロン糸を取り除いて血流を適度に減少。これにより、ヒトの妊娠高血圧腎症に特徴的な高血圧、蛋白尿、流産、早産、胎児低体重、血管内皮障害といった病態を忠実に再現できるマウスモデルを作成に成功したとしています。

 今回開発された方法で作成したモデル動物を利用することで、今後は妊娠高血圧腎症の原因を明らかにし、予防や治療手段の研究が進むと期待されます。また今回の研究では、子宮動静脈の血流を改善することで、妊娠高血圧腎症の病態を改善する手段が開発可能であることも確認できました。さらにマウスでは、すでに遺伝子改変マウスが多数作成されており、遺伝子の役割を明らかにするのに有用であることからも、今後の治療開発の進展に期待が寄せられます。(林 渉和子)

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