休職・自殺する教師が急増――背景に“消費者”感覚の保護者

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2016年06月02日 12:30  週刊女性PRIME

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精神疾患で休む先生が急増中。そんな衝撃的なデータがある。文部科学省の発表によると、教師の在職者に占める、精神疾患による病気休職者の割合は、この10年で約3倍に(グラフ参照)。 教師のストレス原因として、モンスター・ペアレントの増加が注目されており、教師が保護者を訴える裁判や、保護者のクレーム対応などが原因とみられる教師の自殺も起きている。例えばこんなケースだ。 東京都の市立小学校の新任女性教師が2006年に自殺。保護者対応や残業が原因とみられ、2016年、遺族が起こした裁判により、公務災害申請が認められた。同じ2006年、新宿区でも新任女性教師が「全て私の無能さが原因です」という遺書を残し自殺。2010年に公務災害認定された。 2010年には、埼玉県の市立小学校に勤務していた女性教師が保護者に対し、いわれのない中傷を受け、不眠症になるなどの被害を受けたとして慰謝料500万円を求め裁判に。2011年にも、神奈川県内の市立小学校に勤務していた女性教師が保護者に対し、名誉毀損及び損害賠償を求め裁判に。 こういった傾向が生まれた背景について、クレーム対策アドバイザーの関根眞一さんは「核家族化による親の孤立」「少子化が拍車をかける、わが子至上主義」などを挙げる。 また、教師の転職コンサルタントをしている藤井秀一さんは、「消費者感覚で学校にクレームを入れる保護者の増加に加え、部活や膨大な事務処理など、教師の負担は重い。過酷な状況です」と話す。 ■保護者の対応だけじゃない! 教師を追い詰めるストレス要因 今回、現役教師に緊急アンケートを実施。教師が抱える、一般企業の会社員とは違った“知られざる”ストレス源を紹介する。 【超過労働】 教師の仕事は残業が多く、長時間労働になりがち。 「朝の会議に始まり、授業の合間に生徒の対応、放課後は部活の顧問として活動を見守り、その後は事務作業。授業の準備にあてられる時間はなく、家に持ち帰って行う教師は多いです」(藤井さん) アンケートでも、「授業準備は20時から」「帰宅は早くても23時」などの回答が。 【授業以外の雑務】 授業以外に、膨大な事務作業を抱える教師。その内容は? 「会議資料や、行政からのアンケート回答、物がなくなった、誰が転んだといった生徒のトラブルにまつわる報告書など。他校の先生が授業を見学に来る授業研究の準備もあります」(藤井さん) 【成績評価や授業の複雑化】 教師の多忙の原因のひとつとなっているのが、子どもたちにつける成績評価の変化。 「学業の成績以外にも、『授業態度』の欄が教科ごとにあります。これを全生徒分つけると膨大な量になり、時間もかかります」(藤井さん) またアンケートでは「習熟度別授業の導入で、1クラスを大人数で担当するため、すり合わせやミスの確認に時間がかかる」との回答も。 【横並びの職位】 最近では「主幹」など中間管理職に近い立場を作る学校もあるが、基本的には校長・教頭のほかは一律で一般教員。新人とベテランが同じ位置づけになるため、新任教師の負担が重いといわれる。 アンケートには、「できる人に問題を抱えた生徒や多くの仕事が割り振られる傾向がある」「部活の顧問は上から決められており、希望が叶うことはない。そのうえ、運動部部員の保護者がかける期待は大きい」との声もあり、優秀な教師ほど激務になる現状が垣間見られる。 【プライベートがない】 長い労働時間に加え、保護者や生徒対応でさらにプライベートが削られる傾向がある。アンケートには、こんな声も。 「日本の文化として年賀状を書かせるために住所を教えるなど、教員の個人情報を伝えなければいけない」「生徒や保護者から、何かあればいつでもどこでも連絡が来て対応が必須」 これでは気が休まる暇がない。 【相談できる相手がいない】 文部科学省が2012年に発表したデータでは、「仕事や職業生活におけるストレスを相談できる相手がいる」とした教師は45.9%。一般企業の89%に比べ、極端に少ない。 また、相談できる相手として上司・同僚を挙げた人は14.1%。アンケートでは、「相談しても、仕事も保護者からのクレームも減るわけではない」との回答も見られ、孤立無援の姿が浮かび上がる。 イラスト/鈴木七

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