統計分析調査から見える死亡リスク
画像はリリースよりある個人の死亡リスクは、その人の誕生日前後に増加する。にわかには信じがたい説ですが、海外で行われた研究では、その傾向がすでに確認されています。しかし、日本でも同様の傾向にあるかは、これまで不明でした。そこで、大阪大学大学院国際公共政策研究科 松林哲也准教授とアメリカ・シラキュース大学リサーチアシスタントプロフェッサー上田路子らは、統計分析による研究で、日本における死亡リスクの傾向を調査しました。
今回の調査は、1974年から2014年にかけての人口動態調査データ(当該期間中に自殺や事故を原因としたすべての人を含む)を分析したもの。統計分析の結果、誕生日に自殺で亡くなる人々の数は、それ以外の日に比べ50%ほど多いことがわかったのです。さらに、バイクや乗用車による交通事故死、溺死や転落死などの数も、20%から40%ほど誕生日に上昇するという結果が出ています。
日本の高い自殺率と自殺予防対策への道
では、自殺者はなぜ誕生日を選ぶのでしょうか。これまでに、誕生日前後の死亡リスクに関しては「延期」と「誕生日ブルー」(birthday blues) の2つの仮説が立てられてきました。「延期」は、自分にとって意味のある記念日(誕生日など)を迎えるまでは生き続けようとする人が多い場合、誕生日に死亡する人の数は少なくなるというもの。一方、「誕生日ブルー」は期待していたような形で記念日を祝うことができなかった場合に、孤独感などの心的ストレスで誕生日に死亡する人の数は多くなるというものです。欧米における近年の研究では「誕生日ブルー」の仮説を支持する結果となり、今回の調査により日本でも同様の傾向があることが明らかになりました。
以前より日本での自殺者数の多さは懸念されており、深刻な社会問題となっていました。内閣府の「自殺対策白書 国際的に見た自殺の状況と外国人の自殺の状況」によると、日本の死亡者に占める自殺率はロシアに次いで高い割合を示しています。また「平成27年中における自殺の内訳」では、自殺者の男女別の割合は、男性が69.4%となり、年齢別では44〜49歳が16.9%と最も多くなっています。自殺の原因や動機は「健康問題」が最も多く、「経済・生活問題」「家庭問題」と続いています。
今回の研究結果は、今後の自殺予防対策に役立てることができるのではないでしょうか。「健康問題」や「経済・生活問題」は簡単に改善できるものではないかと思います。しかし誕生日に自殺による死亡リスクが高まることが明らかになった今、医療関係者や家族や友人など周囲の人間は、問題を抱えている人に対し誕生日には特に気を使い、サポートしていく必要があるかもしれません。(樹本睦美)
|
|
関連リンク
- QLife 患者相談事例-149「病気を苦に自死した妻。担当医の配慮のない対応が背景にあるのではと考えています」
- QLife 子どもたちを自殺から守るには?「幻聴体験」と自殺の関係性
- 大阪大学 研究情報