対人恐怖症が自然に治る確率は3割程度、待ち望まれる有効な治療方法の確立
画像はリリースより人から注目されるのが怖い。初対面の人に会ったり、話をしたりするのが怖い。人前で食事をするのが怖い…。人と交流する場面で著しい不安や恐怖を感じる「社交不安症(対人恐怖症)」は、精神疾患の中でも3番目に患者数が多い疾患です。以前は英語名「Social Anxiety Disorder」を直訳した「社会不安障害」という名前で呼ばれていましたが、2008年からは「社交不安障害」、2014年以降は、「社交不安症」という名称に変更されました。
社交不安症は、性格の問題と捉えて通院しない人も多いのですが、自然に症状が良くなるケースは3割程度。多くの人々が有効な改善方法を見出せないまま苦しんでいるのが実情です。一方、通院している患者さんであっても、抗うつ剤の服用を中心とするこれまでの標準治療では7割以上の患者さんが症状の改善が認められず、新しい治療法の確立が望まれていました。そんな社交不安症に対して、千葉大学と宮崎大学の共同研究グループが「認知行動療法」の有効性を臨床試験で証明しました。
世界初、認知行動療法の有効性が明らかに
この臨床試験は、抗うつ剤を投与しても症状の改善が認められない社交不安症患者さんを対象に行われました。認知行動療法とは、恐怖心を引き起こす対人場面をビデオやロールプレイングなどで再現し、その際に感じる不安や恐怖について話し合いながら症状の改善を目指していく療法です。この認知行動療法を16週間にわたって実施し、社交不安尺度をモニタリングしました。
すると、抗うつ剤による標準治療のみを受けた患者さんは、16週間で1.53ポイントしか不安尺度が軽減しなかったのに対して、認知行動療法を受けた患者さんは43.0ポイントも不安尺度が軽減されたのです。
今回の研究結果によって、抗うつ薬で改善しない社交不安症患者に対して、通常治療に認知行動療法を併用することの有効性が世界で初めて明らかになりました。これを受け、厚生労働省は研究グループとともに「社交不安障害(社交不安症)の認知行動療法マニュアル」を作成。2016年より、このマニュアルに則った治療には医療保険が適用されるようになりました。これによって、認知行動療法の普及や実践する人材の育成が進んでいくことが期待されています。
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社会生活に支障をきたす社交不安症は、患者さんのQOL(生活の質)はもちろんのこと、国の経済にも影響します。「もしかしたら対人恐怖症かも…」と感じている人は、一度専門医に相談してみてはいかがでしょうか。(QLife編集部)
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