大好きな同人活動でなぜ悩んでしまうのか? 1,000人の同人女の相談に乗ったエキスパートに聞いてみた

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2016年06月24日 21:11  おたぽる

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おたぽる

うた子氏の同人誌『うたピースちゃんの紙ask』。「二次創作の同人誌でお金を取ることの是非」の経緯を掲載。

「二次創作(オリジナルでなく、既存の漫画やアニメのパロディ作品)の同人誌でお金を取ることについてどう思うか」「友達の鍵アカで、自分の悪口を言われているようだ」「神と思っていた作家のTwitterを見たら人間性にドン引き」「仕事が忙しく同人活動との両立が難しい」「砂かけ(※前好きだったジャンルをディスること)する人をどう思うか」……そんな同人女の相談、意見1,000件(以上)に、かれこれ2年半答え続ける人がいる。同人作家のうた子氏は、ask(匿名で質問ができるサイト)で寄せられた悩み相談に答えたところ、明晰な回答がツイートで広まり、それが新たな相談を呼び……と1日2回答のハイペースで同人女の悩みに答え続けてきた。同人女は何に悩んでいるのか、話を聞いた。




■Twitterを見るとなぜ「神冷め」するのか



――寄せられる悩みで、多いものは何ですか?



うた子氏(以下、うた子) 一番多いのは「許可」を求める悩みですね。「同人サークルさんへの差し入れは紅茶でいいですか?」という相談を以前受けましたが、末尾が「やめたほうがいいでしょうか?」「こんなこと書いていいでしょうか?」「こんな風に思う私は心が狭いのでしょうか」といった、許可を求めるものは多いですね。



――背中を押して欲しいというのはあるのかもしれませんね。印象に残っている相談はありますか?



うた子 記憶に残っているのは、同人誌にもまとめた「二次創作の同人誌でお金を取ることの是非について」ですね。また、「壁配置になりたい」や「自分より売れている人を見るのが辛い」などもありましたね。



――同人における対人間のトラブル(同人友達ができない、同人友達と仲たがいしている)もよく相談が寄せられていますが、同人女の友達作りのコツなどあるでしょうか。



うた子 上手くいく場合ももちろんあるのですが、同カップリングということ以外に共通点がないと、付き合いが長続きしづらいのかな? と思います。ですので、カップリング以外の自分との共通点にも視点を向ければ、長く付き合える良い友達を見つけやすいのかなと。



――「ファンだった同人作家の人となりをTwitterで見て失望した」といった相談があり、身に覚えがありました。Twitterで日常語りや萌え語りを見ているうちにイメージと違うと勝手に失望していくといいますか。Twitterは神冷めツールになってしまっている側面はありますよね。



うた子 見る側は「作者=作品」なんですよね。素敵な作品を作る人は素敵な人に違いないと思ってしまう。一方で作っている側はイメージ商売の芸能人ではないですから、自分が見られているという意識がなく、普通の日常つぶやきをして、見る側にしてみたら「なんか違う……」となってしまうのではないでしょうか。



――「中の人」の人となりに失望し、その人の書いた同人誌を楽しめなくなった、という相談もありましたね。



うた子 結局、「同人誌が読みたい」か「同人作家の人となりが知りたい」のどちらが強いかということですよね。私は「同人誌が読みたい」ので、同じカップリングの人のTwitterは「薄目で見る」を心がけています。



――「同人誌を読みたい」し「同人作家の人となりを知りたい」が両立しづらいなら、自分はどちらを優先させるのか、という話になりますよね。



うた子 先ほど「許可を求める」相談が一番多いと話しましたが、皆さん周りに気を使いすぎ、優しすぎるんだと思います。「二次創作のエッチなイラストをアップしたいが、Twitterは鍵アカウントにしたほうがいいか」という相談が過去にありましたが、こちらも、多くの人に見てもらいたいなら鍵アカにしない。逆に、怒られたり非難されたりしたくないのなら鍵アカにすればいいですよね。「自分がどうしたいか」というのが一番大切だと思います。



――あれもこれも全部は手に入れられませんから、自分が楽しむために何を優先し、何を切り捨てるかになりますが、それができない、したくないという人は少なくないのかもしれませんね。




■匿名だからSNSでもリアルでも出せない自分が出る



――たいていの同人女は穏便だと思いますが、一部に、自分の嗜好にあわないカップリングをこき下ろすような、過激派同人女はその過激さゆえに目立ちがちです。なぜこういう過激派が出てきてしまうのでしょうか。



うた子 カップリングは宗教戦争ですからね……。特に二次創作の場合、カップリングの正解は自分の中にしかなく、自分の思う信念を口に出したいというのがあるのではないでしょうか。そして今はSNSがありますから、強硬派の信念に同調する人も出てきます。そんな人が複数集まれば強くなった気にはなりますよね。その雰囲気が嫌な人は離れていくでしょうし。



――同士を見つけられやすいのがネットの同人活動のいいところでもあり、怖いところですね。うた子さんには1日でどのくらいの相談が来るのでしょうか?



うた子 だいたい1日10〜20の質問が来ますね。



――askでは、投稿者は匿名で質問ができるので、過去のうた子さんが受けた相談を見ても、実名や対面ではできないだろうなという物言いをする人も見かけます。うた子さんはよく堪えないなと思うのですが。



うた子 そういう物言いも、人間の本心なのでまた興味深いです。でも、「こんにちは」と言ってくれ、私に礼儀正しく接してくれる人を優先してお返事してしまいますね。全ての質問には答えられないので……。



――うた子さん自身が、この相談の回答を通じて得たものはありますか?



うた子 人間の、本当の心を知りたいという気持ちが強いんだと思います。facebookやインスタグラムではいい暮らしをしているアピールがあり、一方逆にTwitterは自分を下げて書く傾向があります。どちらにも100%本当はないのかなと。



 SNSではなく、身近な人なら本当のことを言えるのかといえば、逆に身近な人にこそ、特にマイナスの感情なら、そんな感情を自分が持っていることを知られたくないと隠してしまうのではないでしょうか。



――相談にも「2年前、友達と作った合同誌のお金をまだ受け取っていなくてモヤモヤ」というものがありましたが、お金周りの悩みは特に身近な人には言いづらいですよね。セコイと思われたくないですし。



うた子 匿名だからこそ教えてくれるんだと思います。「世の中にはいろいろな人がいる」というのは、頭ではわかっていたのですが、相談に答えることでもっと知ることができました。私自身が思いもよらないことで怒ったり、喜んだり、悲しむ人がいることを知りたいからであり、相談は自分のためにしているんです。



うた子氏相談まとめページ
http://utap.hateblo.jp/



(文/石徹白未亜[http://itoshiromia.com/])


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  • 良くも悪くも同人活動。やりたければ続ければ良いし、嫌になれば辞めればいい。どっちにしろ誰も困らない。
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