認知症患者さんとその家族を対象としたICTツール活用の臨床研究がスタート

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2016年06月30日 12:00  QLife(キューライフ)

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QLife(キューライフ)

東大病院、エーザイ、ココカラファインが共同で

画像はリリースより

 厚生労働省の発表によると、日本における認知症の発症者数は現状で462万人と推定され、2030年までにはその1.5倍に増加すると想定されています。認知症は、社会的な背景や家族との関係などさまざまな要素が複雑に関係して発症することから、患者さん一人ひとりに対応することが重要。診療を行う医師にとっては、患者さん本人やそのご家族の日常を可能な限り正確に把握することが大切です。

 一方、認知症患者さんやその家族には、介護上の問題点について、専門家の意見をリアルタイムで聞きたい、というニーズがあります。また、認知症の症状変化は患者ごとに異なるため、マニュアル的な対応では限界があるほか、外来の受診には一定の間隔が空くため、患者やその家族が病状や服薬に関する質問をタイムリーにできないなどの課題があります。

 これらのニーズに応え、課題を解決するため、東京大学医学部附属病院神経内科の辻省次教授と岩田淳講師は、エーザイ株式会社と株式会社ココカラファインと共同で、認知症・軽度認知障害の患者とその家族に向けたICTコミュニケーションツール「わすれなびと」の初期臨床研究を開始しました。「わすれなびと」は、株式会社インターネットイニシアティブが提供する医療情報向けクラウドサービスを活用しています。

タブレット端末で検査結果を確認、服薬状況の共有も

 「わすれなびと」では、臨床研究に参加登録した患者さんとその家族にタブレット端末が貸与されます。患者さんとその家族は、東大病院で実施された画像診断や認知機能検査、血液検査などの結果を、次回の外来受診を待たずにタブレット端末で閲覧できる仕組みです。過去のデータとの比較も可能で、主治医や薬剤師にメッセージを送って外来時間外でもコミュニケーションをとりながら、介護の現場での問題をスムーズに解決できるのが特長です。

 また、希望に応じてココカラファイングループの薬剤師による服薬支援を受けることが可能。服薬状況は「わすれなびと」を介して医師と共有されます。タブレット端末には、一定の頻度で症状などに関する質問が表示され、回答することで日常の様子を記録できるほか、次回の外来診療で問診に加え、診療の質的向上に役立てることができます。有効性については、臨床研究の終了後に参加者の意見を収集して評価を行います。

 このような機能により、患者やその家族、医療従事者や介護施設のスタッフが患者の状態を正確に把握し、関係者間のコミュニケーションを広げることで、治療や介護の課題を早期に解決することが期待されます。今後は検証結果を受け、ICTコミュニケーションツールを通じて患者さん一人ひとりに最適の治療とケアを提供する「個別化医療」の実現が待ち望まれます。(林 渉和子)

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