クローン病患者さんの半数が知らない長期寛解の治療法、その課題とは

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2016年07月07日 18:00  QLife(キューライフ)

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患者さんの6割以上が20代以下でクローン病を発症

 クローン病は、口から肛門までのすべての消化管に、非連続性の炎症が起こる原因不明の難病です。10代後半から20代の若年層に多く、2000年と比較すると国内患者数は2倍に増え、現在40,000人以上と推定されています。アッヴィ合同会社は、クローン病患者さん103人を対象とした「クローン病患者さんの実態と意識調査」を実施。患者さんの6割以上が20代以下でクローン病を発症しており、約4割が仕事や学校をやめているという実態を7月4日に報告しました。同日、「若者の間で急増するクローン病の課題と最新治療による長期寛解維持」と題したメディアセミナーを開催。北里大学 北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター長の日比紀文先生の講演とNPO法人IBDネットワーク理事長の萩原英司さんが、クローン病患者さんが抱える課題と生物学的製剤への期待に関して話されました。

早期寛解導入と長期寛解維持がもたらす、患者QOLの向上

北里大学 北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター長の日比紀文先生

 クローン病は若年での発症が多いため、受験、就職、社会生活、結婚、妊娠、出産、育児といった場面で影響が考えられます。また、慢性の炎症性疾患のためQOLが著しく低下し、社会的差別や患者さんの就労への悪影響が考えられます。治療も長期にわたり、根本的な治療法が現状はないため、一生治療を続けなければならないという問題点があります。

 クローン病の治療は、2002年の生物学的製剤の登場で大きく変わりました。それまでは、炎症を抑える治療が主体でしたが、生物学的製剤では免疫を抑制することで寛解導入し維持することができるようになったのです。また、クローン病は進行性疾患のため、早期から持続的な治療を行うことで予後の改善が期待されます。そのため、症状の悪化により治療法を強化するステップアップ療法ではなく、早期から生物学的製剤を使用するトップダウン療法が注目されています。

 しかし、早期の寛解導入と長期の寛解維持を可能にした生物学的製剤にも問題点はあります。その1つが、1次無効です。約3分の2から4分の3の症例には有効ですが、それ以外の人には効果がありません。また長期に使用するなかで効果の減弱や消失が起こる2次無効も生じます。2次無効に関しては、薬の増量や期間短縮、多剤との併用や切り替えなどが考えられています。生物学的製剤の1つアダリムマブ(商品名:ヒミュラ)の臨床試験では、40mg隔週投与で効果が減弱した患者さんに倍の80mg隔週投与をしたところ、8週で75%の患者さんに改善がみられています。

 「免疫療法の発達で寛解導入も寛解維持も以前より容易になり、患者さんも通常の日常生活が可能になりました。しかしまだ問題点も多いため、患者さん個々の状況に則したきめ細やかな治療が求められます。それには、内科医が薬を処方して治療するだけでは不十分であり、チーム医療が必要です」と日比先生は言います。

クローン病患者さんの願い、長期寛解できれば、仕事、勉強、旅行がしたい

NPO法人IBDネットワーク理事長の萩原英司さん

 しかし、「クローン病患者さんの実態と意識調査」では、クローン病患者さんの半数以上が長期寛解の治療法を知らず、全体の約9割が長期寛解の治療法があれば試してみてみたいと回答しています。また同調査では、長期寛解ができたら、仕事や学業を充実させたり、旅行に出かけたいと答えています。

 NPO法人IBDネットワークの理事長である萩原さんは、クローン病患者さんに対して次のようなメッセージを送りました。

 「専門医に診てもらい、最新、最適な治療を受けてほしい。医学は日進月歩です。多くの病気が医学の進歩とともに完治してきています。クローン病で苦しんでいるのは、あなた1人ではありません。自分の病気と治療に積極的に向き合い、仕事に学校に、人生に堂々と生きていきましょう」

 よりよい治療法が確立できても、患者さん自身がそのことを知らず、治療を受けられていないとすれば、解決しなければならない課題です。すべての患者さんが新しい治療法を正しく知り、治療に取り組める環境の仕組みづくりが期待されます。(QLife編集部)

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  • 狭窄してる所切ってイムラン、ペンタサ、パリエットだけで7年間寛解期ですがね�Ԥ��Ԥ��ʿ���������ʥ�祭��
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