目指せ3%減量!肥満症ガイドラインから考える無理のない肥満対策と合併症予防

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2016年07月11日 18:00  QLife(キューライフ)

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診療ガイドラインには日々の生活にも役立つ情報も

日本肥満症予防協会副理事長 宮崎滋先生

 今年4月、日本肥満学会が「肥満症診療ガイドライン2016」を発表しました。診療ガイドラインとは、医療従事者と患者が医療現場で適切な診療と意思決定を行うことを助ける目的で作成された文書のことです。主にお医者さんなど医療従事者向けに書かれたもので、一般生活者にはちょっと難しいのも事実ですが、実は私たちにも役立つ情報も載っています。今回は、日本肥満症予防協会が7月5日に開催したメディアセミナーから、肥満症診療ガイドライン2016の一部を紹介します。

 そもそも「肥満症」とはどんな状態を指すのでしょうか。実はいわゆる「肥満」や「メタボリックシンドローム」とは少し異なる状態を指します。簡単にまとめると以下の通りです。

◆肥満とは
世界保健機構(WHO)による判定基準は、BMI30以上で肥満。日本ではBMI25以上で肥満とされる。35以上で「高度肥満」。

◆肥満症とは
肥満や高度肥満と診断されたもののうち、以下のいずれかの条件を満たす場合。
(1)肥満に起因または関連する「健康障害」があるか、健康障害の合併が予測される場合で減量を要する。
(2)ウエスト周囲長によるスクリーニング(男性で85cm以上、女性で90cm以上)で内臓脂肪蓄積が疑われ、腹部CT検査によって確定診断された「内臓脂肪型肥満」。
※ここでの「健康障害」とは、11の肥満関連疾患(耐糖能障害、脂質異常症、 高血圧、高尿酸血症・痛風、冠動脈疾患、脳梗塞、脂肪肝、月経異常及ひ妊娠合併症、睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群、整形外科的疾患、肥満関連腎臓病)のうち1つ以上がある場合を指します。

◆メタボリックシンドロームとは
ご存じメタボ。内臓脂肪型肥満に、高血糖・高血圧・脂質異常症のうち2つ以上を合併した状態。メタボ対策は、動脈硬化など循環器疾患の発症予防を目的とする側面が強い。

 さらに簡単にまとめれば、「肥満=BMI25以上」「肥満症=肥満+肥満による病気やそのリスクが高い状態、または内臓脂肪型の肥満」、「メタボ=内蔵型肥満+高血糖・高血圧・脂質異常症のうち2つ以上」ということです。なんとなく違いが見えてきませんか。

肥満症では3%以上、高度肥満症では5〜10%の減量からスタート

 それでは、肥満症に当たる人はどのような治療を行うことになるのでしょうか。現在、日本には肥満症のお薬はありません。まずは、食事療法や運動療法で減量を行うことになります。しかし、その減量目標は意外や意外、3〜6か月でわずか3%以上、高度肥満症に人でも目標は5〜10%。みなさんが考えるよりはずっと低い値なのではないでしょうか。

 身長170cm体重85kg(BMI:29.41)の人を例に考えると、たった2.55kgの減量からスタートということです。これならなんとかなりそうです。減量の手法は行動療法と呼ばれ、食事療法として「25kcal/kg×標準体重/日以下」を目標に、必要に応じて運動療法を導入します。肥満症で健康障害が2つ以上ある人と高度肥満の人は、体の状態に悪影響を与えないよう、健康障害に対する薬物療法を行いつつ減量します。

 「減量により内臓脂肪を減らすと、合併している疾患が複数一斉に改善します」と語るのは、肥満症診療ガイドライン2016の作成委員長を務めた結核予防会理事・総合健診推進センター長の宮崎滋先生。厚生労働科学研究の結果を紹介し、「血圧やLDLコレステロール、血糖値などの値は、体重の減少に合わせてきれいに下がります」と、減量の有効性を示しました。

 今回のセミナーを開催した日本肥満症予防協会のウェブサイトには、肥満症にまつわる統計や最新のニュースが掲載されています。また、ガイドラインを発行した日本肥満学会のウェブサイトには、認定肥満症専門病院や肥満症専門医のリストも掲載されています。たかが肥満と侮ることなかれ。一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。(QLife編集部)

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