アラサー彼女に別れの慰謝料「65万円」…婚約もしてないのに払う必要ある?

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2016年08月09日 10:12  弁護士ドットコム

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彼女に別れを切り出し、慰謝料として65万円を支払ったーー。そんな男性の投稿がネット上の提示版で話題を呼んだ。


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男性は、2年間付き合った30歳の女性に別れを切り出した。これまで女性が2人の関係のために費やした時間を時給に換算し、その他かかった費用も合わせ、65万円という額を算出し、「慰謝料のつもり」で渡そうとしたという。女性はお金を受け取らなかったそうだ。


今回のケースでは、男性自らの意思によるものだが、一般的に、結婚や婚約もしていないカップルが別れる場合に、相手に対して慰謝料を支払う義務はあるのだろうか。澤藤亮介弁護士に聞いた。


●慰謝料支払い義務は発生しないのが原則


男女が交際をした後に別れた場合、原則として、その一方に慰謝料支払義務は発生しません。


慰謝料は、民法上の不法行為(709条、710条)が成立した結果生じるものですが、男女が性交渉を含む交際をしたあとに別れただけでは、不法行為の要件である「加害行為」や「損害」が存するとまでは認められず、不法行為は成立しないからです。


また、当然のことですが、男性だからという理由のみで慰謝料が発生することもありません。


ただし、以下のようなケースでは、不法行為が成立する可能性があるため、慰謝料支払義務が生じることがあります。


●既婚者であるにもかかわらず独身と偽って交際した場合


たとえば、男性に実際には妻子がいるにもかかわらず、独身であると偽って女性と肉体関係を含む交際をした場合です。


判例上は、不法行為の成立を認めて慰謝料の支払いを命ずるものもあれば、女性側の年齢や社会経験などを踏まえた上で、不法行為は成立せず、慰謝料請求を棄却したものもあります。


●妊娠中絶があった場合


交際期間中に女性が妊娠し、その後、中絶するに至った場合、その経緯によっては男性側に慰謝料支払義務が生じることがあります。


通常、女性を妊娠させたこと自体については、交際中のカップルであれば、避妊しなかったことについては双方に責任があると考えられるため、男性に不法行為の成立が認められることはまずないでしょう。


ただし、その後、中絶するか否かの判断に際し、たとえば、男性が女性の意思を無視して中絶することを強要したり、女性と話す機会すら設けず、無責任に女性にその判断を委ねたりした場合、これらの行為につき不法行為が成立すると判断した裁判例があります。


●内縁関係が成立している場合


婚約や結婚をしていない場合であっても、いわゆる内縁関係が成立していたと求められる場合は、関係を解消する正当な理由がない場合、解消を希望する側に慰謝料を支払う義務が発生することになります。


内縁関係は、男女が婚姻の意思をもって共同生活を営み、社会的には夫婦として認められる実体を有しているにもかかわらず、婚姻届がなされていないために法律上の夫婦とは認められない関係をいいます。


判例上、内縁関係の成立には、(1)夫婦共同生活と認められるような関係を成立させようとする合意、(2)その合意に基づく共同生活が必要であるとされています。


そして、内縁関係については、判例上、可能な限り、法律上の婚姻関係と同様の保護が与えられるべきと解されています。その関係を解消する際、いわゆる離婚事由(民法770条)と同程度の事由が存しない場合、内縁関係の不当破棄とみなされ、慰謝料を支払う義務が発生することになります。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
澤藤 亮介(さわふじ・りょうすけ)弁護士
東京弁護士会所属。不倫、離婚問題などを中心に取り扱う。iPad、iPhoneなどのデバイス好きが高じ、事務所内の事件資料や書籍の全面データ化等、ITをフル活用して業務の効率化を図っている。日経BP社『iPadで行こう!』などにも寄稿。
事務所名:新宿キーウェスト法律事務所
事務所URL:http://www.keywest-law.com


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