意思表示カードの認知率は68.0%と高く
2010年7月の改正臓器移植法全面施行から6年。同法の施行により、本人の意思が不明な場合は、家族の承諾で臓器提供が可能となったほか、15歳未満の脳死臓器提供もできるようになるなど、臓器提供を巡る環境の改善が進められています。この間、脳死で臓器を提供した方は306人。そのうち約74%が家族の承諾によるものでした。
日本臓器移植ネットワークでは、10〜60代の男女3,000人を対象に「臓器提供の意思表示に関する意識調査」を実施。その結果、臓器提供意思表示カードの認知率は68.0%と高い数字だったにもかかわらず、所持率は約2割、記入率は約1割と、実際に意思を示している人は少ないことが判明しました。
意思表示カード以外では、裏面に意思表示欄がある運転免許証で意思表示をしている人は18.9%、同様の保険証で意思表示をしている人もほぼ同じ18.3%という結果に。また、同ネットワークが開設している臓器提供登録サイトによる意思登録の認知率は9.9%で、実際に同サイトで意思を登録している人は1.9%という低い数字でした。
約4割が「意思表示をしてみたい」と回答
意思表示カードや運転免許証などでの意思表示率は、いずれも1割台という結果でしたが、「意思表示をしている、あるいはしてみたいと考えている」と答えた人は約4割と、臓器提供に関心が低いわけではないようです。「臓器提供についてどのように考えていますか」という質問には、「脳死後でも心臓が停止した死後でも提供してもよい(63.4%)」、「心臓が停止した死後のみ提供してもよい(27.2%)」と肯定的に捉える人がいる一方、9.4%が「提供したくない」と答えています。
また、残りの6割の人は「意思表示をしたいと思わない」、「わからない」と回答。その理由で最も多かったのが、「臓器提供意思表示に対して抵抗がある(38.6%)」。次いで「自分の意思がわからない(37.4%)」となっています。なかには、「家族が反対しそう(23.0%)」という意見もあり、臓器提供は自分だけの問題ではないことがわかります。
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しかし、「臓器提供について、家族と一度も話したことがない」と答えた人は73.7%にものぼっており、家族で話し合いの場をもつ難しさもうかがえます。また、「臓器移植医療に関する情報を十分得ていますか」との質問に、「あまりそう思わない」、「思わない」と答えた人は合わせて約8割と、情報不足を感じている模様。臓器提供は、私たちが生きてゆく上でいつか直面する可能性のある問題です。意思を表示したい人はしっかりとカードなどに記入したり、事前に家族の意見を聞いておいたりするなど、“その日”が来ても、焦らないようにしておきたいですね。(菊地 香織)
関連リンク
- QLife 集中連載・移植医療 〜臓器提供の実際はどうなっているか〜 第1回「正しく伝えられていない日本の移植医療」
- QLife 患者相談事例-131「限りなく脳死に近いと言われた息子。治療中断を医師に相談したところ、反対され…」
- 日本臓器移植ネットワーク プレスリリース