注射剤への不安にも配慮した新しい治療オプションは2型糖尿病の治療強化に影響する?

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2016年09月06日 18:10  QLife(キューライフ)

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2型糖尿病の治療オプションと最新研究結果に関するセミナーを開催

獨協医科大学病院 内分泌代謝内科主任教授 麻生好正先生

 糖尿病患者さんとその予備軍は、日本人の6人に1人と推定されています。そのため糖尿病患者さんの生活スタイルも多岐にわたり、患者さんの望む治療スタイルや環境づくりが必要とされます。

 そうした中、2015年9月に日本イーライリリー株式会社が発売したGLP-1受容体作動薬「デュラグルチド」(商品名:トルリシティ皮下注0.75mgアテオス)が、2016年9月1日に長期処方が解禁になりました。同社は、前日8月31日に「新しい治療オプションの登場による2型糖尿病治療強化への影響」と題したプレスセミナーを開催。年間約4,000人の糖尿病患者さんの診療実績を誇る獨協医科大学病院 内分泌代謝内科主任教授の麻生好正先生を招き講演が行われました。また、2016年の日本糖尿病学会で発表された「糖尿病治療における注射に対する抵抗の現状」に関する研究説明もありました。

2型糖尿病、注射への患者さんの抵抗感と現状

 2型糖尿病患者さんの目指す血糖コントロールの目標は、血糖正常化を目指すならHbA1cは6.0%未満、合併症予防のための目標は7.0%未満、治療強化が困難な際の目標は8.0%未満です。適切な食事療法や運動療法を基本として、必要に合わせて薬物治療も行いますが、経口血糖降下薬のみで服用している患者さんの約40%がHbA1c7.0%以上で、3〜4剤を併用している症例でもHbA1cの平均値は、7.0%を越えます。そのため、飲み薬では血糖値が下がらない2型糖尿病患者さんは、注射剤による治療が必要になりますが、注射への不安やためらいにより、治療が遅れているのが現状です。

 そうした中、デュラグルチドを皮下注する注射器アテオスは、週1回の投与に加え、これまでの使い捨て注射器であった針の装着や薬剤の混和、空打ちが不要、まさに「アテ」て「オス」だけの簡単操作が可能です。注射を怖がる患者さんにとって、不安を取り除く効果がありそうです。

 インスリンやGLP-1受容体作動薬といった注射薬による治療を受けたことがない日本人の2型糖尿病患者さん182人を対象とした行われた糖尿病治療薬(注射製剤)に関する患者調査が行われました。その結果、44.1%の患者さんが投与頻度を重視し、次いで投与方法が26.3%でした。また、「投与の度に注射が必要な糖尿病の治療薬を使用したいと思いますか?」という質問に対し、使用してみたいと答えた人は1.7%に過ぎず、デュラグルチドの薬剤属性を提示した後にデュラグルチドを使用してみたいと答えた人は42.9%という結果になりました。

 「これからの2型糖尿病治療で望まれるのは、低血糖が起こりにくく、体重が増加しない、血糖低下効果が十分にある治療で、GLP-1受容体作動薬は、こうした条件を満たす可能性のある治療薬の1つです。一方で注射に対するハードルが高く、これまでは治療強化の遅れがありました。しかし、注射剤の薬剤選択で患者さんがどのような薬剤属性を重視するかがわかったことで、注射剤の早期導入もしやすくなりました」と麻生好正先生はいいます。

 注射も含めた糖尿病治療薬を適切なタイミングで選択できるようになり、糖尿病患者さんの個別化治療の促進や予後の改善が期待されます。(QLife編集部)

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