喘息などの発症メカニズムを解明
画像はリリースより喘息や好酸球性副鼻腔炎など治療が難しいとされる重症アレルギー疾患の発症の鍵となるタンパク質を発見し、発症メカニズムを解明したと、千葉大学大学院医学研究院の中山俊憲教授の研究グループが発表しました。
そもそも、アレルギー疾患は、「CD69分子」を発現した病原性免疫細胞が血管から外へ出て、肺などの炎症組織に到達することで発症し、さまざまな症状を引き起こします。今回発見されたのは、この免疫細胞が血管から外へ出るのを手伝うタンパク質で、CD69に特異的に結合する「Myl9/12」というリガンド分子です。
このタンパク質は、炎症に伴って血小板から放出され、血管内部に付着して「ネット様構造(Myl9 nets)」を作ります。今回の研究では、免疫細胞がこのネットを足場に血管外の炎症組織に移動することで、アレルギー疾患が引き起こされるという発症メカニズムを解明。Myl9 netsが“プラットフォーム”の役割を果たしていると考えられることから、「CD69-Myl9システム」と命名しました。
新規治療法の実用化に向け、開発が進行中
また、Myl9 netsは、アレルギー疾患の発症メカニズムに関わるだけではないこともわかりました。手術をしても再発しやすい好酸球性副鼻腔炎において、患者のポリープの中に多く確認されたのです。このことから、慢性炎症疾患の慢性化や、難治性の根本要因になっている可能性も示唆されました。
さらに、CD69とMyl9/12分子の相互作用を阻害する抗体を作り、喘息マウスに投与したところ、喘息が起こらないことが判明。これは、分子の相互作用を阻害した結果、本来なら血管外へ移動する免疫細胞が移動できなくなったため、アレルギー疾患が起こらなくなったと考えられます。この結果は、これらの抗体が、人での難治性呼吸器疾患の画期的治療薬になる見込みを示しています。
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現在、千葉大と企業との共同開発研究により、人への投与ができる「ヒト型抗体」は既にでき上がっており、実用化に向けた開発が着実に進んでいます。ぜん息などの難治性呼吸器疾患に苦しむ患者さんに、効果的な治療法が届く日が待ち望まれます。(菊地 香織)
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