インスリン注射の投与タイミングの柔軟性が糖尿病治療にもたらす意味とは

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2016年10月18日 18:00  QLife(キューライフ)

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持効型溶解インスリンアナログ注射液の柔軟性をもたせた用法・用量の変更承認

 糖尿病治療では、食事療法と運動療法を基本とし、必要に応じて薬物療法も行われます。その中でも基礎インスリン治療を行っている糖尿病患者さんの2人に1人は、投与時刻を毎日一定にする必要があるのに困難な状況にあり、安全性や有効性に対して影響がありました。そうした中9月28日に、ノボ ノルディスク ファーマ株式会社の持効型溶解インスリンアナログ注射液トレシーバ注(一般名:インスリン デグルデク)が、「注射時刻は原則として毎日一定とするが、必要な場合は注射時刻を変更できる」という用法・用量の変更が承認されました。

 これを受け、ノボ社は「持効型インスリンアナログトレシーバ注の新しい臨床的エビデンス」と題したプレスセミナーを開催。東京大学大学院 医学系研究科糖尿病・代謝内科教授の門脇孝先生と京都大学大学院 医学研究科糖尿病・内分泌・栄養内科学講師の原島伸一先生を招き講演が行われました。

求められる、日常生活の変化に適合するインスリン治療

京都大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌・栄養内科学講師 原島伸一先生

 中国、フランス、日本、ドイツ、スペイン、トルコ、英国、米国で糖尿病患者さんを診察する医師と糖尿病患者さんを対象としたインスリン療法に対するGAPP調査によると、日本人糖尿病患者さんの44%がインスリン注射をスキップしたり、指示通りに注射していないと報告されています。医師の報告によると、毎日同時刻に基礎インスリン注射ができている患者さんの割合はわずか18.8%です。

 同調査では「患者が注射し忘れたときにカバーできるインスリン療法があるといい」と考える専門医が85%、非専門医が90%と、日常生活の変化に適合できるインスリン治療を望んでいる人が医師、患者ともに80%以上に上ります。「基礎インスリンは1日1〜2回決まった時刻に注射することが推奨されており、アドヒアランスの高い治療は、血糖コントロールを改善し合併症の進展を抑制します。しかし毎日同時刻に注射することは、患者さんや医師にとって困難であり、日常生活の変化に適合するインスリン治療が求められています」と原島先生はいいます。

 ノボ社による調査でも、指示された時間にいつも注射ができていると回答した患者さんは半数にも及ばず、医師にもほとんどが相談していないといいます。その理由は「忙しい」「忘れる」「眠ってしまう」など、誰にでも起こりうるやむを得ない事情であることも明らかになりました。

安全性・有効性を損なわずに注射タイミングを変更可能な基礎インスリンアナログ製剤

東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科教授 門脇孝先生

 インスリン デグルデクの注射時刻を変更した投与法による有効性と安全性を検討した臨床試験では、対照群に対して低血糖の発現に有意差は認められず、HbA1cの推移でも有意差がなく有効性が確認されています。これを元に日本の添付文書では、投与を忘れた場合、気づいた時点で直ちに投与できるが次の投与まで8時間以上が必要。その後は通常の時刻に戻すように記されました。さらに、インスリン デグルデクの時刻を固定した投与群とフレキシブル投与群を比較した臨床試験が実施され、有効性と安全性が認められました。これにより、用法・用量に関して改訂が行われ、「注射時刻は毎日一定とする」が、「注射時刻は原則として毎日一定とするが、必要な場合は注射時刻を変更できる」とされました。

 「基礎インスリンの適正使用は、毎日一定の時刻に投与することですが、良好な血糖コントロール達成のためには、やむを得ない事情により打ち忘れた場合や投与時刻に注射できない患者さんの不安を和らげ、治療継続をサポートする必要があります。インスリン デグルデクは、こうした患者さんのために安全性や有効性を損なわずに注射タイミングを変更することのできる基礎インスリンアナログ製剤であり、患者中心医療の実現のために期待されます」と門脇先生はいいます。

 糖尿病患者さんの生活は、さまざまな労働環境や生活環境により変化しています。今回の基礎インスリン治療薬に投与タイミングの柔軟性がもたらされたことは、患者さんの治療意欲や利便性の向上の一翼を担うのではないかと期待されます。(QLife編集部)

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