可愛くて格好いい少女忍者が活躍中! シリアスな展開にも逃げずに挑む『信長の忍び』石山桂一PDインタビュー!!

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2016年10月25日 20:11  おたぽる

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おたぽる

(C)重野なおき/白泉社・信長の忍び製作委員会

 西暦1555年、戦国の世で「乱世を終わらせる!」というでっかい夢をいだいた青年・織田信長。彼を慕う、とある少女は「私、信長様の忍びになります!!」と笑顔で言った――笑わせてくれつつ、意外としっかり戦国を勉強でき、その上キャラクターたちも可愛いい人気コミック『信長の忍び』(作:重野なおき/白泉社)。



 10月から放送が始まったTVアニメ(TOKYO MXほか)も、4コママンガである原作を彷彿とさせる、早過ぎない程度のテンポの良さと会話劇、そして予想以上に格好いいOPやアクションシーンで話題となっている。



 だが、原作ファンとしてはここで気になるポイントが一つ。可愛くて笑えて勉強になるだけではなく、戦国武将たちが迎える過酷な物語や運命を、逃げずに描いたことで原作コミックは、歴史・マンガファン両方のファンから支持を獲得したのだが、TVアニメでは果たしてどうなるのか。プロデューサーを務める石山桂一氏に、そこのところを直撃した!




■(小見出し)“相思相愛”で始まった、『信長の忍び』TVアニメ化
―― まず原作コミック『信長の忍び』がアニメ化に至るまでの経緯から教えてください。



石山桂一(以下「石山」)『神様はじめました』(作:鈴木ジュリエッタ)という、『信長の忍び』と同じ白泉社さんの作品をアニメ化した際、白泉社のライツ事業の方から『信長の忍び』はどうか、というご相談をいただいたんです。『神様はじめました』(TVアニメ第2期シリーズが2015年1月〜3月に放送)が終わるあたりでしたが、今度は大地(丙太郎)監督から「アニメ化したいマンガが一つあるんだよ」と。それが『信長の忍び』だったんです。



「かぶった!」と思い、読んでみたら面白いし、大地監督が手掛けたら絶対受けるアニメになるなと思ったんです。テンポがいいし、重野さんの絵柄が、大地監督が絵コンテなどでキャラを描くときの絵柄と似ているんです。これは相性が良さそうだなと思いましたね。



―― 相思相愛だったんですね。



石山 そうなんです。別々なところからきたお話だったにもかかわらず、全部繋がっていくという奇跡的な作品でした。



―― ちなみに脚本家さんのクレジットがないんですが、これはいつもの……。



石山 大地監督の作品は脚本家や構成の方を置かずに、監督、あと弊社には文芸部という部署がありますので、文芸部の人間と僕、もう一人の担当プロデューサー、計4人で話をしています。



―― 原作を読みながら話し合って、セリフをホワイトボードに書き込みながら進められるんですよね。



石山 そうです。この話数は原作のここからここまでと決めて、セリフを読み上げるんですよ。読み上げながら時間を計り、そこから残すところ、スリムにすべきシーンを決めていく。『信長の忍び』の場合は史実がストーリーの柱になっていますから、史実の部分は削れない。ギャグ部分を泣く泣く削っていき、尺に落とし込んでいくという形です。




■各スタッフ、原画マンもノリノリで
―― 山中(純子/キャラクターデザイン)さんが描く千鳥たちは可愛らしくていいですね。



石山 原作の絵柄を生かしつつ、可愛く描いていただきました。大地監督からの提案でもあったし、自分はもともと『神様はじめました』のチームでいきたいと思っていたんです。山中さんは『名探偵コナン』(日本テレビ系)や『とっとこハム太郎』(テレビ東京系ほか)も描いていた方なので、ディフォルメキャラが上手いのも知っていましたし。



あと、今回は線を太めにと相談しました。絵柄がシンプル目ですから、普通の線だとキャラクターのインパクトが薄まってしまうと考えたんです。アウトラインなどを太めに、強弱を出して特徴的にしていただきました。当初はアップの絵は墨絵っぽい感じでもいいんじゃない? と提案もしたのですが、それはさすがに途中でボツになりましたが(笑)。



―― 背景もおもしろいですし、線の太いキャラクターとのバランスもいい感じですね。



石山 僕は美術監督の湖山(美奈子)さんとは初めてでしたが、基本は2分半程度なので、本作では美術を湖山さん1人で描かれているんですよ、今のご時世では珍しく。だからこそああいった絵本っぽい特徴的な美術を、高いレベルで安定して用意してもらっているし、その美術がキャラとうまくマッチしたな、と思っています。



―― ショートアニメは、腕のあるクリエーターさんたちの個人技が、そのまま画面に出るのがいいですよね。



石山 そうですね。実はこの作品のコンセプトとして、国内の制作体制の強化、みたいなことも考えていたんです。動画や仕上げを海外に依頼することも多いですが、海外はどうしても時間短縮が優先で人海戦術の流れ作業になってしまうので、原画さんの意図を理解しないで作業を進めることも多い。でも動画さんなら動画さんで、中身を理解した上で物を作ってほしいという基本的なところを、本当は徹底していきたい。それを30分アニメでやるのは難しいんですけど、ショートアニメだったらできるだろうと、『信長の忍び』では作業は全て国内、グロスで制作を依頼した話数でも、自社の話数も全部国内で、可能なら一人で責任もって作ってくださいと、お願いしています。



―― 0、1話はそれが上手くいっているというか、他社さんの作品ですが、やはり少数精鋭で制作されている『てーきゅう』シリーズ(TOKYO MX)などと、ちょっと近いノリを感じました。



石山  やはり原画さんにも、“これは自分の作品”と意識してもらえるのか、ノリノリで描いてくれます。そういうアニメーターさんもある程度自由に作る裁量がある作品を、楽しみながらやってほしいですから。



■音楽にも力を入れて重厚感があるものに!
―― 『信長の忍び』は『ヤングアニマル』で08年から連載開始、さらに重野先生はあちこちで連載を手掛けてましたが、意外にも今回が初アニメ化です。重野先生はアニメ制作に、どんなモチベーションで接しているんでしょうか?



石山 アニメ化をすごく喜んでらっしゃっていました。また、顔合わせの時にシナリオや作品の方向性をこちらから聞いたのですが、重野さんからの注文は「千鳥の殺陣をカッコよく」、あとは史実を元としているので、構成上、そこは残してもらえれば、というぐらいで、あとは基本自由に作ってくださいと言っていただいて。



―― 重野先生のツイッターなどを見ると非常にノリノリですよね。



石山 そうなんですよ。重野さんへ白箱(見本映像)をお送りすると、いつも率直で、いい言葉を送ってくれるんです。完成を楽しみにしてくれているんだなと伝わってきますから、こちらもうれしいです。



―― そんな重野先生は社会科の教員免許状をお持ちと聞きました。歴史にも詳しい重野先生からアドバイスや資料の提供もあったんですか?



石山 原作である『信長の忍び』に関する資料ももちろんですが、重野先生が『信長の忍び』を描くために揃えられた資料をお借りしたり、こちらでも(同じものを)極力集めたりして、スタッフに講習していますね。



―― 『信長の忍び』は歴史や各勢力の流れがわかりやすいですよね。



石山 すごく丁寧ですよね、歴史の教科書では触れていない、新しい説などにもしっかり言及されていて。今川家も浅井家も、本願寺や北畠家など、織田信長を題材にした小説でも飛ばされがちな部分まで描かれていて。歴史好きにはたまらない原作だと思います。



―― TVアニメも、その原作を丁寧にアニメ化されています。



石山 下手に変更すると、史実の流れを追っていくのが難しくなる、というのもあるんですが、作品のテンポに関しては大地監督にお任せになっています。短い尺の中でどれくらいの内容が入るのか。大地監督は絵コンテの段階で、セリフ回しもSEも音楽もだいたい決めちゃうんで、コンテもVコンテでいただいているほどで、大地監督にしか出来ないんじゃないかというテンポのバランスですよね。



 実は0話(TV未放送。動画配信サイトで配信)も、このテンポを試してみよう、という思惑もあって作成したんです。本来はもっと長くてもよかったんですけど、TVと同じ尺で作ってみたらどうなるのか。1話目の制作に入る前の段階から、0話制作でテンポの基準を大地監督が持つことができたのが、大きかったかもしれません。



―― ファンにとってはお得感のある動画でしたが、ただのファンサービスではなかったんですね。



石山 あと、0話は音楽も結構派手でしたが、あれもテストだったんです。0話のお披露目は「Anime Japan2016」(3月25〜27日)からでしたが、イベントは隣近所のブースからも音がガンガン聞こえてきますから、普通の音楽を普通に流しても誰も見向きもしないかもしれない。加えてショートアニメですが、「大河ドラマみたいにしたい!」という大地監督の希望もあったので、しっかりとオーケストラを呼んで楽曲2曲を収録しました。正直この2曲だけに、1クール分ぐらいの音楽制作費全てを突っ込んでしまったほどです(笑)。



■千鳥はこだわり抜いて水瀬さんに
―― 水瀬いのりさんの千鳥が可愛いですが、水瀬さんのような若手からベテランまで、キャスティングも豪華ですね。



石山 キャスティングに関しては、主要キャラたちは水瀬さんも含め、オーディションで決めさせていただきました。高木渉さんは『真田丸』を拝見して、あのキャラにはこの人しかいないだろうと、オファーを出させていただいたりもしましたが(笑)。重野さんからはお一人だけ、木下秀吉役は山口勝平さんで、とご要望をいただいたんです。



―― あの味はやはり勝平さんしかいないだろうと。



石山 それが、以前から勝平さんがTwitterなどで重野さんに結構アピールしていらっしゃったんですよ(笑)。それを知らなかったんですが、僕らも僕らで秀吉役は勝平さんだなってイメージを持っていたんです。そうしたら、顔合わせの時に実は一人だけどうしても、と打ち明けられたので、驚きました(笑)。



―― そこでも相思相愛だったんですね(笑)。



石山 結構運命的な感じでした。勝平さんは宣伝隊長でもありますし、現場の雰囲気も勝平さんとたかはし智秋さん(帰蝶役)の2人が、ムードメーカーとして盛り上げてくれています。雰囲気はいいですね、こんなに豪華キャストなのに抜き録りもなく、皆さんで頑張ってくれています。



―― キャラクター数はかなり多いですが。



石山 どうしても兼ね役は出てくると思いますが、有名な武将は新しい声優さんにお願いしたいですから、今後もどんどん増える予定です(笑)。



―― ボケもあり、忍びとして活躍する部分あり、しかも可愛くなければいけない。注目はやはり千鳥かなと思います。



石山 千鳥役はこだわって選ばせていただきました。オーディションの後にも一度水瀬さんに来ていただいて、大地監督がイメージする千鳥にどこまで近づけるか、試してもらったりもしました。あと水瀬さんはすごくて、「Anime Japan」用に一度収録して、その後TVアニメの収録が始まるまでに、かなり期間が空いたんですが、一度演じた千鳥から全然ブレてなかった。これはすごいなと思いましたね。信長役の羽多野(渉)さんも本当にいい人だし、先輩に囲まれながら頑張ってくれていて、本当にこのチーム全員が凄くいい感じになっています。



■歴史好き、歴史マンガ好き、両方の層から
―― NHKの大河ドラマ『真田丸』が人気ですし、今秋は『信長の忍び』を含め、織田信長が登場するTVアニメが3本もあります。この“プチ戦国ブーム”を、どう受け止めてらっしゃいますか?



石山 作品によって制作準備期間は全然違いますから、放送タイミングが重なったのは本当にたまたまです。ただ、僕らはショートアニメの中でも、大河ドラマ、しっかりとした本格的なドラマを作りたいというのがありますから、『真田丸』がヒットしているのはうれしいし、おこがましいかもしれませんが、意識する部分もあります。



放送時期が被った他アニメ作品に関しては、同じ織田信長といっても、キャラや物語展開、作風、舞台も全然違いますから。意識するというよりも、戦国時代や織田信長を一緒に盛り上げていくことができたらいいなと思っています。



―― 『真田丸』の面白さの一つに、有名な史実をキャラクターにうまいこと絡ませて、新鮮なドラマを生んでいることがありますよね。これは『信長の忍び』とも似ているかも、と思ったんですが。



石山 そうですね。たしかに共通点かもしれません。なんと言うか……(両作とも)歴史が好きで、史実や武将に詳しい層と、歴史小説やマンガが単純に好きという層、両方の層から支持されているんですよね。金谷俊一郎さん(歴史コメンテーター、歴史作家、予備校教師)が『信長の忍び』を推していて、原作コミックで解説も書いていたり、西尾維新さんが『信長の忍び』を短編小説化されていますし(原作コミック8巻に収録)。そういう方たちが読んでも「すごいなこれは」というのがあるんでしょうね。



―― 「小説やマンガではそう語られているけど、そんなわけないだろう。間違っている」と、普段は突っ込みを入れる歴史好きも、『信長の忍び』には好意的な意見が多い印象があります。



石山 重野先生が、「この人はわかってる」と認められているんでしょうね。実際、歴史好きと『信長の忍び』ファンが結構ついていただいていて、大地監督の元にもかなり「期待しています」とか「面白かったです」といった、忍びの者からの連絡が来ているようです(笑)。



■第7話までお付き合いください!
―― 0話、1話を拝見して、「これは面白い、今後盛り上がるに違いない」と思い、急遽インタビューをお願いしましたが、かなりの手応えを感じていられるんですね。



石山 TVではTOKYO MX、テレビ愛知でしか放送されていませんが、ネット上の反応はすごく好意的で。「Anime Japan」以降、9月の「京まふ 京都国際マンガ・アニメフェア」(9月17、18日)までは露出を控えていたんですが、あのイベントで番宣を一気に公開して。その後第1話オンエアーの反響を見て、本当に安心しました。



―― 先ほど話題に上がった第7話目など、これからシリアス方面でもいくつも山場があります。そこでの盛り上がりも楽しみですね。



石山 アニメから入ったいただいた方は、「ほんわかギャグアニメかな」と思われているかもしれませんが、キャラクターが死んでしまうこともある物語です。OPの映像が千鳥の派手な殺陣を見せるものになったのも、原作のそういった重い展開から逃げないぞ、殺る時は殺りますよと、しっかり伝えておきたいと思ったという面もあります。



―― それでは最後に、歴史も好きだし『信長の忍び』も好きという方と、歴史に興味はなかったけどこれは面白いなと食いつき始めたアニメファン、それぞれに一言メッセージをいただけますか?



石山 有名な武将からマイナーな武将まで個性豊かなキャラを――太田牛一(後世の貴重な資料となった『信長公記』の著者)が登場する歴史マンガはなかなかないと思いますから。多種多様、個性豊かなキャラたちを丁寧に描いているので、ぜひ注目してほしいです。



あと大地監督もTwitterでつぶやかれていましたが、第7話まで観ていただくと、『信長の忍び』でやりたかったこと、表現したかったことが一通りご覧になれるんです。最低でもそこまで観ていただきたい。



原作からのファンという方には、重野さんにかなり満足していただけていますから。原作者が面白いと言っているわけですから、ぜひ信頼して観ていただければと思います。



■TVアニメ『信長の忍び』
・公式サイト:http://nobunaga-no-shinobi.com/
・公式Twitter:‎@shinobinobunaga
・放送情報
 TOKYO MX 毎週火曜日21時55分〜
 テレビ愛知 毎週土曜日深夜27時20分〜



・U-NEXT、GYAO!、楽天SHOWTIME、ひかりTV、ビデオマーケット、ニコニコチャンネル、TSUTAYA TVで毎週配信中!



(C)重野なおき/白泉社・信長の忍び製作委員会


このニュースに関するつぶやき

  • 今期観ているTVアニメの一推しは「信長の忍び」TVでの放送枠はわずか5分、しかしそれは原作の持ち味を最大限に活かすため。「濃い!」作品。良いぞ!
    • イイネ!1
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