この20年で飛躍的に進化した治療法
国立国際医療研究センターエイズ治療・研究開発センター センター長 岡 慎一 先生ヤンセンファーマ株式会社は11月29日、都内で「HIV感染症の慢性疾患としての新たな課題」と題したメディアセミナーを開催。国立国際医療研究センターエイズ治療・研究開発センター(ACC)センター長の岡慎一先生が講演しました。
HIV(human immunodeficiency virus)に感染し、免疫不全が生じた状態を指すAIDS(エイズ)。2015年末時点のHIV感染者は1万7,909件、AIDS患者数は8,086件と報告されています(厚生労働省「平成27年エイズ発生動向」)。
治療はこの20年で飛躍的に進歩しています。「1986年から1996年までは免疫力が低下したときに感染する“日和見感染”の診断と治療に重点が置かれていましたが、1996年以降はHIV治療に重点が置かれています」と岡先生。その後、多数の薬剤を併用するため、薬が効かなくなる「薬剤耐性ウイルス」の出現が大きな問題となりましたが、近年では1日1回1錠で済む治療法も登場しています。「25歳でHIVと診断された場合の平均余命は、1996年以前は約7年でしたが、現在は約40年に延長しており、健康な人とほどんど変わりません」(岡先生)。
次世代にHIVを残さないために、予防投与の普及を
HIV感染者の長期治療による高齢化を背景に、HAND(HIV感染による認知症)が増加している、と岡先生。「物忘れによる薬の飲み忘れや、集中力の低下による交通事故など、療養生活に支障を来します」と警鐘を鳴らします。2010年の報告では米国のHIV感染者の半数、2016年7月集計の国内データでは国内のHIV感染者の4人に1人がHANDと診断されているとのこと。
また、米国では、コンドーム使用が現実的には限界があることなどから、HIVに感染しないための予防投与の手段である「PrEP(Pre-Exposure Prophylaxis)」に力を入れており、岡先生は「次世代にHIVを残さないため、日本でもPrEPの実現が必要です」と強調しました。
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「診断さえつけば、治療により普通の生活ができるようになっています。しかし、次の世代にHIVを残さないための取り組みでは、世界の後塵を拝しています」(岡先生)。12月1日は世界エイズデー。HIV根絶のためにも、まずは理解を深めることから始めてみてはいかがでしょうか。(QLife編集部)
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