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アレンジの時代から洗練の時代へ ジャパニーズフードの今とこれから

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2016年12月09日 15:05  mixiニュース

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写真出典:写真AC<br>山口県のローカルフード「バリそば」
出典:写真AC
山口県のローカルフード「バリそば」
カレーやラーメン、オムライス……。我が国では、外来料理にアレンジを加えた日本独自の食べ物が広く浸透しています。伝統的な和食も「日本食」ですが、こうしたカタカナ料理もまた、立派な「日本食」と言えます。

そんな広い意味での日本食を「ジャパニーズフード」と位置づけ、本稿ではその流行と未来の可能性について考察します。お話を伺ったのは、食に関する執筆・編集を多数手がける、フードアクティビストの松浦達也さんです。

寿司やそば……伝統的な和食も実は外来モノ!?

―――日本の食べ物って海外料理のアレンジが多いですよね。それって、想像以上に多くの食文化が日本に渡来してきたってことでしょうか?

松浦氏 極論すれば海藻と刺身、干物以外の日本食は、ほぼ外来なのではないかと思えるほどです(笑)。実際、寿司、そば、うどんも奈良時代ごろ大陸経由で伝来し、日本で独自に発展した食文化。1000年単位で見れば、伝統的な和食すらカレーやラーメンと同じ「ジャパニーズフード」と称して差しつかえないと思います。

―――なっ……長い! その間、育んで来たアレンジ文化って、要は外来モノをなじませるための工夫だったわけですよね。でも、いつの間にか、その工夫が新しいグルメを開発するための手段に変わっている気がします。

松浦氏 飲食店や企業があれこれ工夫するようになったのは、50〜60年近く前からですね。外食が戦前の水準を取り戻し、日常化していったのは1970年代あたりから。本格的なイタリアンやフレンチ、エスニック料理など、海外の食文化をそのまま楽しむようになったのがバブル期以降です。さらに「企業と地域の協業」や「料理同士の掛け合わせでメニューができるのでは」と"新たな食"の開発が加速したのは「B-1グランプリ」に象徴されるご当地グルメブーム以降ではないでしょうか。

―――あのころは同じ自治体で、いくつもご当地メニューが生まれたりしましたよね。

松浦氏 それまで個々の飲食店レベルで行われていたものが、自治体のスケールになって全国発信され、可視化されるようになったんです。ただ、最近は一段落した感もありますね。

―――なぜですか?

松浦氏 急ごしらえのメニューでは人気商品に勝てないことに多くの自治体が気づいたようで。もともと地元で親しまれていた郷土料理や調理法を発掘し、きちんと伝えていこう、という流れに回帰しています。

―――あれこれ試行錯誤した結果、原点に戻ったということでしょうか。でも、探して見つかるものなんですかね?

松浦氏 ローカルフードって地元の人にとっては普通すぎて、その個性が自覚されていない面もあるんです。例えば、北海道の帯広には「中華ちらし」といって、とろみのない野菜炒め風の具材を温かいご飯に乗せた料理があります。酢飯でもないのに「ちらし」とは観光客には不思議に思えますが、これが帯広では日常的に親しまれている。他にも山口県のあんかけかた焼きそば「バリそば」など、まだ知られていないご当地メニューはいくらでもあります。ウニを板状に成型して塩漬けにした小樽の「棒うに」など、今や地元でも知る人が減っているものも少なくありません。急ごしらえでメニュー開発するよりも、地域に根ざした郷土食を掘り起こしたほうが説得力もある。なにしろ、一度は地域で浸透した実績があるわけですから。

科学や規制から誕生!? 未来のジャパニーズフード

―――では最近は、新たにアレンジ料理を作ろうとする流れは落ち着いてきていると。

松浦氏 ご当地グルメにかぎらず、急ごしらえの強引な新メニュー開発は減っていますね。例えばラーメンなども「つけ麺×魚粉」のブームあたりで強い味が飽きられたのか、近頃は一周してオーソドックスなラーメンをていねいに作るお店が人気を集めています。ロゼ色になるよう温度管理したチャーシューと、シンプルな印象を与えながらしっかり出汁をとって最後まで飲み干せるスープ。個性より洗練へと向かっている気がします。

―――奇抜なアイデアやアレンジといったアプローチは、行き着くところまで行ってしまったのかもしれませんね。

松浦氏 「思いつき」というレベルでは出尽くした印象はありますね。ただその一方で、分子調理系のレストランなど、違うアプローチから新たな料理を開発、発信する動きもあります。

―――分子調理……ってなんでしょうか?

松浦氏 食材の性質を科学的に捉えて、その性質を分子レベルで解釈した調理を指します。

―――ずいぶんむずかしい料理法ですね……。

松浦氏 まあ、簡単な例で言うと、卵は卵黄と卵白で熱で固まるときの温度が異なります。その違いを調理手法に活かしたのが「ゆで卵」と「温泉玉子」、というようなイメージですね。

―――なるほど。

松浦氏 分子調理はスペインの「エル・ブリ」というレストランをきっかけに世界中で注目されるようになり、その流れを汲んだ店や調理法が国内でも浸透してきています。調理法や素材を要素分解し、違う見映えになるよう再構築するシェフも多いですね。例えば、卵や鶏肉といった「親子丼」の材料を使いながら、レシピの組み立てをガラリと変えてフレンチのような一皿に仕立てたりするような手法もそのひとつです。

―――ただ、分子調理法は世界で起こっているブームですよね。そこからジャパニーズフードといえるものは生まれのでしょうか……?

松浦氏 一見、ジャパニーズフード色は薄いようにも思えますが、日本の食材や調理法の要素を取り入れた皿も少なくありません。また和食や日本料理のアプローチを取る海外のシェフもいます。様々な国の食文化が取り入れられた料理を「フュージョン」と言ったりもしますが、今後は国内外のシェフが日本料理の手法や食材を要素分解し、再解釈する「ネオジャパニーズフュージョン」とでも言うべきジャンルが進化するかもしれません。

―――時代や状況によって、思わぬ角度から新しいアレンジや流行が生まれる可能性があると。

松浦氏 そうですね。例えば、規制によって新しいアイデアが生まれるケースもあります。最近、焼肉店などで卵黄をすき焼きの割下で割ったタレが流行っています。2011年に起きた食中毒事件の影響で生食用牛肉の加工、提供方法を定めた国の基準が厳格化されました。結果、一時期ユッケが食べられなくなりましたが、似た味わいを求める客に、醤油ベースの甘辛い卵黄ダレでローストしたロゼ色の肉を提供する店が続々と登場。今ではこのタレを採用していない店を探すほうが難しいと思えるほど爆発的な人気となっています。

―――規制品の代わりですか? 狭いすき間を突破するケースもあるんですね。

松浦氏 規制されれば、正面から乗り越えるか抜け道を探すかしかありませんから(笑)、いつの時代もそうだったように、自然と新しいものは生まれていくはずです。その他は、次の時代のエコ的な食材として注目されている昆虫食。世界No.1のレストランと言われる「Noma」でも蟻を使った名物料理があるし、国内でも昆虫食フェアを開催している居酒屋が話題になったりもしている。今後、昆虫食がジャパニーズフードの主流になることは考えにくいかもしれませんが、一部のマニアは注目しています。素材、調理、提供の仕方まで含め、まだ誰も知らない「ネオジャパニーズフード」の可能性は未知数なのです。

●識者プロフィール
松浦 達也氏 (まつうら・たつや)
フードアクティビスト、ライター、編集者。食専門誌から一般誌、新聞、書籍、Webなど多方面の媒体で、「調理の仕組みと科学」「食文化」「食から見た地方論」など幅広く執筆、編集を行う。テレビ、ラジオでの食トレンド・ニュース解説のほか、地場産品のブランディングや飲食店のメニュー開発などのコンサルティングも。著書として『新しい卵ドリル おうちの卵料理が見違える!』(マガジンハウス)が発売されたばかり。

●文・構成/後藤亮平(BLOCKBUSTER)

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このニュースに関するつぶやき

  • せめてヌーベル・ジャポネとか、かっこつけろや。
    • イイネ!1
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  • イタリアにはトマトが無かったし、フレンチは元々イタリアのメディチ家だし、半島に唐辛子持ち込んだのは、加藤清正だと言われてる。どの国も大して変わらんよ。
    • イイネ!105
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