ホーム > mixiニュース > 経済 > ペット業界「すし詰め」規制へ

ペット業界の“すし詰め商法”に環境省が規制へ 飼育ケージをめぐる攻防

463

2017年01月11日 11:32  dot.

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

dot.

 繁殖や販売に使われる犬や猫を飼育するケージにはどの程度の大きさが必要か。繁殖業者やペットショップが持つ飼育・展示施設について、環境省が具体的な数値規制の検討に乗り出した。悪質業者の排除が主な目的だが、業界側は警戒感を強めている。

 中部地方のある繁殖業者の施設を覗くと、雌の小型犬がほとんど身動きが取れない大きさのケージに押し込められていた。ざっと幅30センチ、奥行き50センチ、高さ40センチといったところ。足元は金網になっていて、糞が山積みだ。金網の下のトレーには尿がたまっている。同じサイズのケージが輸送用コンテナの中に3段重ねでずらりと並び、約200匹もの雌犬が飼われていた。

 こうした飼い方は、日本のペット業界では珍しくない。ケージを大きくすればコストがかかり、そのぶんのスペースも必要だ。ビジネスの観点からすれば、当然の措置かもしれない。

 だが、環境省がようやく重い腰を上げ、“すし詰め商法”にダメ出しをしようとしている。身動きがままならないほど小さなケージで飼育したり、狭い施設のなかに多数を詰め込んだりするのは虐待的だと問題視。業者が飼育や展示をする際の施設の大きさを具体的な数値で示し、規制する方針を固めた。すでに有識者らへの聞き取り調査を始め、今年度中にも獣医学の専門家らによる検討会を立ち上げたいという。

 米、英、独などでは、犬や猫を飼育するケージの必要な広さを具体的な数値で規定する。独では、犬の保護に関する規則で、「一辺は少なくとも犬の体長の2倍の長さに相当し、どの一辺も2メートルより短くてはいけない」などとしている。犬を主に屋内で飼育する場合は、窓が最低でも室内面積の8分の1なければいけない、などの規定もある。

 日本には数値規制がないが、業界団体による独自調査の資料を見ると、2016年時点で国内の繁殖業者の7割以上がケージで飼育している。ケージに入れずに「平飼い」している業者は3割にとどまる。資料では、これらのケージのおよそ9割について、ドイツ基準を下回る「英国基準」をクリアするのにも、「大型のものに更新が必要」と指摘している。

 環境相の諮問機関である中央環境審議会の動物愛護部会は、12年に動物愛護法を改正するにあたり、「現状より細かい規制の導入が必要」とする報告書を提出していた。同省は、今夏にも見直し議論が始まる次の法改正が行われる前に、飼養施設規制の導入に道筋をつける方針だ。

 これに対し、ペット業界は警戒感を強めている。

 業界の試算だと、英国並みの規制が導入された場合、繁殖業者らが大型のケージを導入するのに総額17億円以上の設備投資が必要になるという。経営環境が悪化し、子犬や子猫の生産能力が衰えることを懸念する関係者が少なくない。

 16年2月にはペット関連の業界団体を横断的に組織した新団体「犬猫適正飼養推進協議会」(会長=石山恒・ペットフード協会会長)が設立された。関係者は「ロビー活動のための新組織だ」と明かす。業界をあげて規制導入に対抗する狙いがあるとされる。

 独自に入手した、16年6月に同協議会が作成した資料によれば、ペットフード協会、全国ペット協会など10団体と業界関連企業6社で構成。各団体・企業で計約3千万円を拠出して運営資金にしている。

 海外の犬猫に関する法規制を翻訳したり、国内のペット店や繁殖業者の実態調査をしたりし、独自の「適正飼養指針」を作るのが目的とされる。資料には「環境大臣への説明」などの文言もあり、早ければ今冬にもロビー活動を始める計画のようだ。

 業界側がこうした活動に力を入れるのは、過去の“成功体験”があるためだ。12年の動愛法改正の際には、幼い子犬や子猫を8週齢(生後56〜62日)までは生まれた環境から引き離さないための「8週齢規制」の導入が検討された。この際、業界側は「自主規制していて、45日齢まで引き離していない」などと主張し、導入に抵抗した。その結果、米英仏独などで実施されている8週齢規制よりも低水準の「45日齢規制」を経過措置として(16年9月からは「49日」)改正法に盛り込むことに成功したのだ。

 今回、協議会が作成している資料には、欧州で「実験およびそのほかの科学的目的」に使われる犬のために導入されている飼養施設規制などが紹介されている。そして、それらよりも狭い「業界基準」の策定をめざすとも受け取れるチャート図が示されている。動愛法の週齢規制の時と同様、飼養施設規制を業界寄りの内容に着地させたい意図が透けて見える。

 先の16年6月作成の資料を見ると、今回の協議会には共立製薬、アイペット損害保険、インターズー、日本アニマル倶楽部、ゾエティス・ジャパン、アニコム損害保険の6社が「賛助会員」として名を連ねているのも特徴的だ。6社はいずれも、犬猫の飼い主と直接的な接点を持つ企業で、社会的な影響力が大きい。

 この6社に1.協議会に関わることになった経緯や理由2.賛助会員になった経緯や理由、賛助金額3.策定しようとしている業界基準への賛否などを尋ねる質問書を送り、期限までに4社から回答を得た。

 対面取材に応じたペット保険最大手のアニコム損保は、欧州の制度を数値的に下回る業界基準の策定を検討していることについて「そういう説明や話はあったが、まだ確定していないと聞いている。業界基準が動物を大切にするということと大きくかけ離れるのであれば、(協議会から)脱退することも検討する」(瀧澤茂雄・経営企画部長)としている。

 協議会作成の各種資料に目を通した日本動物福祉協会の調査員、町屋奈(ない)獣医師はこう指摘する。

「業界として、犬や猫が健全に繁殖や生活ができるような環境をつくっていくべきなのに、自分たち業界側の利益をいかに守るかを考えているように受け止められる。残念だ」

 協議会の活動目的などについて石山会長に取材を申し込んだが、事務局から「明確な話ができる段階ではない。申し入れはお断りする」との回答があった。

週刊朝日 2017年1月20日号

あなたにおすすめ

このニュースに関するつぶやき

  • 改善しよう、これ以上かわいそうな猫ちゃんや犬ちゃんが出ないように
    • イイネ!2
    • コメント 0件
  • 日本もいい加減にブリーダーやペット販売に関しては法的規制をかけたらどうだい?
    • イイネ!392
    • コメント 3件

つぶやき一覧へ(242件)

ニュース設定